表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第3章
53/88

5話 凪里①


 結界が歪んでいるのが見える。


 凪は屋根を滑り降りて庭に躍り出た。


 鬼のような形。

 鬼のような圧力。

 

 本当にあの一宮家の時と似ている。

 なぜ? ここに。


 それよりも、誰が?


 もう一度、妖が結界を叩く。

 空気が揺れるような感覚がする。


「凪!」

 後ろから朝晴がやって来た。


 上を見上げ、ありえない物を見たという顔をしている。

「朝晴」


「……だ」

 朝晴が呟いた。



「夜月だ……」



「? 夜月? 妹の? ……そんなまさか」


「真似て生み出したのか? すごすぎるだろ」

「妹の感心はいいから、どうにかするよ」



「妹のものなら、「月の杜」のものってことだ」

「……そうなるな」

「なにか得策はないの?」

「……全然、思いつかない」

「……」


 朝晴が凪の顔を見る。

「……凪、お前、眼が黒いぞ?」

「黒?」

「初めて見た」

「?」


「いつも橙色か、青色だから」

「そうなの?」

「橙色は焦っている時、青色は冷静な時」

「……」


「じゃあ、今は?」



「さぁ?」

 凪が少しニヤッと笑った。

 前髪の間から、黒い眼が覗く。



「朝晴、俺がやる」

「は?」

「少しだけ、動きを止められる?」

「ああ」



 朝晴が、懐から術符を取り出した。

 フッと息を吹きかける。

 何百枚もの紙が、一斉に吹き飛んだ。

 

 紙が妖の足元に絡みつき、地面を這う。

 おびただしい量だ。


 朝晴が両手を地面に付ける。

 途端、妖の足元にある紙が、生き物かのように動き出した。

 妖の足に纏わりつく。


 その光景を見た凪が、唖然とする。

「あの量を操るの?」

「造作もないぜ」

「恐ろしい……」

「どうにかしてくれ、凪」


「ああ、うん」


 凪が両手を顔の前まで持ってくる。

 滑らかに、印を結んでいく。


「どうするんだ?」

 朝晴が地面に手を付けながら聞く。

「うーーん……封印したら、まずいよね」

「やめたほうがいいな」

「だよね、じゃあ……」


 凪が印を結び終わった。

 風が巻き上がる。


 被っていた布も、眼を隠していた前髪も風で舞い上がった。


 黒い眼が妖を見る。

 妖も凪を見た。

 手を伸ばす。

 結界が邪魔をして入ることが出来ない。


 もう一度、結界に向かって腕を振り上げた。




「やめろ」




 凪が右手を妖に向かって突き出した。

 猛烈な風と共に、力が放たれる。


 それは、妖を貫いた。


 ぽっかりと胸に穴が開く。


 うめき声を出し、妖の体から黒い泡が出てきた。

 泡がどんどんと空気に消えていく。

 姿勢を崩し、背後からゆっくり倒れていく。


 地面にぶつかるところで、妖の身体は完全にいなくなった。





 ―――

 

「凪」

「うん?」

 凪が振り返った。

 布がなくても、眼が隠れていなくても気にしていない。

「大丈夫か?」

「……うーん、疲れた」

「……あれは」

「後で調べてみようか」

「ああ……それはいいとして」

「?」

「眼、緑色になったな」

「え」


 言った途端、あわあわと前髪を直し、布を被ってしまった。橙色の眼になる。

「……せっかく見えてたのに」

「見ないで……」

「もったいない」





お読みいただきありがとうございました。

少しでも気になった方は、いいね、ブックマークして頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ