4話④
朝晴が自室に戻って行った後、一乃は何度も練習してみた。
引っ張り出してきてもらった力は、量もそんなになく扱い。
太陽を見ながら、自分の力を感じられるなんて思いもしなかった。
何回目だろう。
紙を1枚取り出して、力を込めてみる。
小さな風が、目の前に生まれ、持っている紙が揺れる。
少しだけ熱くなると、パッと紙から鳥が生まれた。
どちらかと言うと、折り紙の鶴のようだ。
カクカクしている。
「……」
「お疲れ様」
「難しいですね」
「何かを生み出すのは大変だからね」
「……」
「そういえば、あの人は上手だったな」
「?」
「報告書で読んだよ。奈取さんが来たんだってね」
「奈取さん」
「うん、『おわー』の」
「お知り合いでしたか?」
「あの人は前、「星の宮」にいたからね」
「よく、術で動物を作っては逃げてたなぁって思い出した」
「……」
「もう終わりにしようか。あまりやっていても疲れるだけだし」
「……」
一乃が東側の空を見る。
「え?」
ズンッと空気が揺れた。
一乃が反応する。
「壊れる……」
急いで立ち上がり、2階へ駆け上る。
東へと走り、行き止まりの廊下の窓から外を見た。
何か見える。
「あれは……」
凪は青い眼で遠くを見た。
見たことがある。
約1年前、一宮家に現れ、全てを破壊した妖がいた。
自分は「星の宮」にいたが、2階からあの光景をずっと見ていた。
崩れていく家、橙色に染まっていく建物。
遠くからでも聞こえる叫び声や怒号。
災害と言った方が似つかわしい。
あれは、”最悪”だった。
似ている。
空気が、重みが、圧が……
今、「星の宮」の結界の外にいる。
「っ……」
一乃が少し揺れた。
妖が結界を叩く。
あの一宮が作った結界が、揺れる。
押されているのはこっちだ。
「……」
「一宮、行こう。結界が破られるかもしれない」
「一宮?」
一乃は何も言わず、手をきつく握りしめている。
似ている。
あの時と一緒。
不完全ではある。
でも、
あれは、
あの日、先生を奪った、あの――
「一宮」
一乃がやっと凪を見た。
眼が、青色が、きらきらとした青が、濁っていく。
「大丈夫、ここで、待ってて」
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