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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第1章
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2話②

 二宮龍臣は「星の宮」の廊下を進んでいく。後ろには付人の桔梗の姿。

 以前に頼まれた任務の他に、また新たな任務を言い渡されたのだ。

 しかも、また一宮と協力しろという。

 小さな苛立ちを募らせながら、また一宮のいる部屋の前までやって来た。


「一宮いるか?」

 扉を軽く叩いた。

「はい」

 いつも通りの、のんびりした声が返って来た。

 扉を開ける、またいつも通り、紙が目の前を舞った。


 いつもと違うのは――

「よっ」

 重役が1人、

「久しぶりだな」


 五宮朝晴(ごのみやあさはる)がニカッと笑って手を振った。

 赤色の髪に、赤色の着物を着て、耳には白い花の耳飾りを付けて、さも当然のように椅子に座っている。

「なぜ、あなたが?」

 まぁまぁ、と朝晴が椅子に座れと手で促す。

 促されるままに龍臣は隣の椅子に腰を下ろした。

「両極端な2人が手を組んで任務に励んでるって聞いたもんだからよ。見に来たんだ」

「そんな見せ物じゃない」

 まぁまぁ、と朝晴が手をヒラヒラ振った。


「んで? 進んでるのか?」

「なにも」

「そうか、手がかりがあまりない状況だしな」



 朝晴が一乃に目をやる。

「どうなんだ? 2人で仲良くやってるのか?」

「任務だぞ? 別に和気あいあいやる必要はないだろう」

「お堅いねぇ」

 朝晴が目をキラキラさせながら楽しそうに言う。

「任務も人生の1つだぜ? 楽しくいかねぇとな」

「それは、あなただけだ……」



「朝晴さん、ありましたよ」

 一乃が机から紙を1枚取り出した。

「先月の納品書です」

「おう、ありがとな。直して、また提出するわ」

「はい」

「早めに出すようにするさ。任務があって忙しいもんな?」

 龍臣と一乃を交互に見た。

 龍臣は、ため息をつく。



「一乃ちゃんも大変だろ? 二宮の世話があるもんな」

「おい、誰が世話を焼かれる側なんだ」

「いいえ、私はなにもしていません」

 2人の冷めた答えに、朝晴はふーっと息を吐いた。



 そんな朝晴を横目に、龍臣が一乃に話し出す。

「一宮、新しい任務のことだ」

「はい」

 その言葉に、朝晴が敏感に反応する。

「え? なんだよ、なんだよ。新しい任務? 初耳だぜ?」

「あなた担当ではない。一宮、概要は知っているか?」

「はい。先日の宝物庫の鏡失踪事件の犯人の居場所が分かった可能性がある、と聞きました」



 一乃の言葉に続いて、部屋の奥からお茶を持ってきた付人の環奈が続ける。

「最後に出てきたネズミです。私たちが退室した後、調査班が調べていたら、例の真っ黒なネズミ1匹がひょっこり現れました。ネズミはまた外に逃げようとしましたが、調査班が捕まえようと後を追いかけたそうです」


 環奈の言葉に朝晴が反応する。

「ん? 報告だと部屋から出たら消えたんじゃないのか?」

「その1匹だけは消えなかったそうです。それで、調査班は捕まえようとしました。でも、逃げ足が速くて、必死に追いかけたそうです。この「星の宮」の敷地内を出て、走って走って、ある場所で立ち止まりました」

「ある場所?」

「はい、もう廃墟となっているお寺です。少し距離はありますが、歩いて行ける距離ですね」



「そのネズミはどうなったんだ?」

「そのお寺に入って、ちょこんと立っていて、追ってきた調査員をじっと見ていたらしいです。まるで連れてきてやったと言わんばかりに」

「……なんだか罠っぽく聞こえるな」



 龍臣がすぐ後ろに立っている桔梗に話しかけた。

「桔梗、その追いかけた調査員は誰なんだ?」

「先日の宝物庫事件で少し話された長身の男性です」

「あの者か……」

「これから出発するのであれば、調査班の者を何人か連れていきますか?」

「そうだな、詳しく話を聞きたい。一宮」

「はい」

「行くぞ」

「分かりました」

 龍臣の言葉に一乃が素直に応じる。

 朝晴が嬉しそうに手を叩いた。

「おうおう、気をつけて行って来い! また、報告待ってるぜ」

「あなたに、報告の義務はない」

「冷たいな~、二宮~」

お読みいただきありがとうございました。

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