4話 星①
椎名様から紹介された。
あの時、たぶん15〜16歳だった気がする。
今の五宮――朝晴はあの頃からキラキラしていた。
誰とでもすぐに仲良くなり、懐に入るのが上手い。
話し上手で気配り上手だった。
随分と遠くから来たらしいが、術の使い方が本当に天才的だった。
どこで習ったのだろう。
「凪〜」
いつ、俺、名乗ったかな?
「気になってたんだけどさ、前見えてるのか?」
え?
「前髪長いからさ」
見えてる……
「邪魔じゃないか? 暑くない?」
大丈夫、大丈夫だから
「おーい、逃げるなよー、気になるぞー」
―――
「星の宮」の庭は広く、建物全体を囲うような形をしている。
修行や鍛錬、瞑想など各々が自由に過ごすことができた。
今日は、太陽の出る過ごしやすい天気だ。
そのためか、多くの人が庭に出ていた。
一乃と凪が、一宮の仕事部屋近くの廊下で足を庭に出して座っている。
床には紙の束が置いてあった。
何かを書くのか、筆も置いてある。
「今は昼間だけどね、一宮に力がないわけじゃないから」
「みなさんはないとおっしゃいますけど……」
「うん、俺には"見える"よ。……と言ってもどうしようかな」
うーん、と悩んだ凪が一乃の手を握る。
「あ…………ごめん……触るよ?」
「はい」
凪の手から、暖かい力が流れてくる。
それは、腕を通って体の中心に流れた。
「……」
「……どう? 分かる?」
一乃の中にふわっと何かが生まれる。
暖かい。
それでいて、優しい。
「これは……」
「一宮の力だよ。半分、俺のもあるけど」
「……」
「ちょっと、引っ張り出してみた感じかな?」
「……すごい、凪さんは……なんでも出来るのですね」
「あはは、そんなことないよ」
凪が紙を1枚取り出した。
長方形の薄い紙。
真ん中に丸を描き、丸の中に星を描く。
「前に、これが基本的な紋様だって言ったね。これを使ってみよう」
「あら、何してるの?」
不意に声がした。
その方向を見ると、四宮の頭領、明蘭が立っていた。
「明蘭さん」
「2人で勉強会? えらいわね」
「はい、術の使い方を教えてもらっていました」
「そっか、これでみなさんやってるものね」
明蘭が1枚、紙を手に取る。
「四宮は……」
凪が明蘭を見上げながら言う。
「私は、術は使えないから」
「そうなのですか?」
えへへ、と笑う明蘭。
「ええ、昔からそうなの。……たぶんみなさんと違うのよね。祓うことは出来るけど、術を組むことは出来ないの」
明蘭の言葉に凪が説明する。
「……四宮の家は代々、神に仕える家だからね。祓い屋じゃない」
「そうね……だから、ちょっと羨ましいかな」
「たまに、みなさんが話すことが分からないから……少し寂しい」
「……」
一乃が明蘭を見た。
初めて知った。
人はそれぞれ違う。
当たり前だが、「星の宮」にいる人は、みな術使いだと思っていた。
明蘭がハッと気がついたように手を叩く。
「あ、私、待ち合わせしている人がいるんだった。じゃあ行くわね。がんばって」
「はい」
明蘭が明るく、手を振っていなくなった。
「……」
一乃が明蘭がいなくなった方を見る。
「四宮家は特別なんだ。俺らとは少し違う。力はあるけど……」
「……力ってなんなのでしょうね」
「……」
「……難しいな」
「ごめんなさい」
「謝ることじゃない。俺らだって普通に使ってる。だけど説明が難しい」
風が流れる。
凪の前髪が揺れる。
今の眼は、緑色だった。
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