3話 桔梗①
久しぶりにあの人の話を。
自分は村同士が起こした戦の孤児だった。
家族もいなければ、身寄りもいない。
両親は……
兄弟は……
あてもなくぶらぶらと歩いていたら、どこかで倒れてしまったらしい。
目を開けると、大層立派な家で横たわっていた。
「母上! 目を覚ましました!」
横から声がする。
部屋から飛び出していってしまった。
天井を眺めていると、女性の声が聞こえてきた。
「……大丈夫?」
綺麗な人だ。
後ろに男の子がしがみついている。
自分の体をよく見たら、体中に包帯が巻いてあった。
女性は優しい声で言った。
「無理しないで、名前は分かる? どこの方かしら?」
名前……確かに名前はあった気がする。
自分はどこから来たのだろう。
悩んだ結果、首を横に振ることしか出来なかった。
「そっか……ゆっくり休んでね」
そう言うと、女性は後ろの男の子にも言った。
「龍臣、この子のこと看ててあげてね」
「はい」
女性は部屋から出て行った。
龍臣と呼ばれた男の子が近寄ってくる。
「ここにいれば、もう、大丈夫だぞ」
龍臣が頭を撫でてくれた。
―――
一宮の仕事部屋に珍しい人物が訪れた。
机の迎えに座る凪が困惑の声を出す。
「えーーーとぉ……」
凪の目の前に座る人物は淡々と言った。
「桔梗です」
「あ、名前は知っているんだけど……」
凪が一乃をチラッと見た。
なにも気にしていなさそう。
桔梗が話を続ける。
「折入ってお話があります」
「???」
桔梗が大真面目な顔で凪を見た。
「私になにか憑いていませんか?」
「はい?」
桔梗らしからぬ質問に、横から環奈も声を出した。
「どういうことですか?」
「最近、どうにも肩が凝るんです。整体をしても治らず……。龍臣様にはご心配をおかけしたくありません。自分で解決しようと思いまして」
凪が申し訳なさそうに言う。
紫色の眼が揺れている。
「……俺、霊感はないけど……」
「三宮様はよく"見える"と伺っております」
凪が桔梗の肩に眼を凝らす。
「……いやあ……ごめん、何も見えないよ」
「そうでしたか……」
一旦、肩を落とす桔梗。
が、すぐに立ち直り、話し始める。
「では、一緒に来て頂けませんか?」
「え? どこに?」
「実は、肩凝りが始まった契機がございまして」
「?」
環奈と凪が顔を見合わせた。
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