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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第3章
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2話②


 すっかり日が落ち、廊下の行灯に明かりがともる。

 人の往来も少なくなり、「星の宮」は静かな時間を過ごしていた。


 三宮の部屋で一乃が申し訳なさそうに言う。

「ごめんなさい。嫌でしたか?」

 その言葉に凪が首を振った。

「ううん、久しぶりにみんなに会えてよかったよ。椎名様には……後で謝ろう……」


 凪の眼を、じーーーーーと見る一乃。

「やめて……恥ずかしいよ」

 どんどん色が緑色から橙色に変わっていく。

 その様子を見て一乃が言った。


「思っていたのですが……凪さんの眼は、感情の変化で変わっているのでしょうか?」

「……そうだね、そうらしい。自分の眼を見ることが出来ないからね。よく分からないんだけど。……今は何色?」

「橙色です」

「橙か……」


 うーんと悩む凪。


「……それはいいとして、一宮、夜にしか力が使えないと言ったけど、他に条件はある?」

「よく分かりません……水があると力は使いやすいです」

「使いやすい? そっか……」

「あと……夏の祭りの時に、「星の宮」の外に行きました。その時、力が上手く使えなくて……」

「使えなかったの?」

「使えなかった……ではなくて。使えはするのですが、思ったよりも使いにくかったです」


 もしかしたら……と続ける一乃。

「「星の宮(ここ)」にいるほうが、いいのでしょうか?」

 

 少しだけ考えた凪が頷く。


「……その通りだと思う。ここは一宮様の結界の中だからね。なにかしら影響はあると思うよ」

「……」


 一乃が無造作に置いてある本の山に目を移した。

 1つの本が目に留まる。


 この字は……



 先生だ……




 凪が一乃に近づいてきた。

「ああ、それは昔、一宮様にもらったんだよ。これで勉強してほしいって」


 一乃が本を見る。

 

 久しぶりに見る、あの人の字。

 書き癖そのままで書かれている。



 そういえば、文字を教えてくれたのは先生だった。

「……」



 凪が一乃の様子に気がついた。


(そうか……この子にとっては一宮様が唯一の肉親だったのか)



「一宮。これ、見ていて」

 凪が取り出したのは花の形に切られた和紙。

 手のひらに置いて、眼を閉じた。

 和紙が、少しずつ端から光っていく。


 完全に光ったところで凪が眼を開け、フッと優しく息をかけた。

 

 すると、光る和紙から無数の小さな黄色い花が出てくる。


「……綺麗」

「一宮もやってみよう。そんなに難しくないから」

「……」

 手のひらに、花の形をした和紙をもらう。

「集中して、花を想像するんだ。小さな……」

 

 一乃が眼を閉じた。

 集中する。

 先生も言っていた、力の流れに集中して想像すると。


 和紙が光る。


 外側から光り、中心までゆっくりと光が流れていく。


 全体に光が行き渡たり一乃が眼を開ける。


 手の平から光が溢れた。

 ハラハラと白い花が目の前に降る。

 牡丹雪みたいだ。

 目の前が花で真っ白になった。


 気がつくと凪が大量の花で埋まる。



「ご、ごめんなさい」

「あはは、いいんだ。これはこれで面白い。まだ……力の加減が分からないのかも知れないね」

「……」

「大丈夫だよ。慣れもあるだろうし、朝晴も昔、加減が分からなくて、部屋の照明、壊して回ってた時があったよ」

「朝晴さんが?」

「うん。今はもうないだろうけどね」



 凪が紙に大きな丸を描いた。

 中心にもうひとつ小さな丸を描く。


「一宮、これで修行しよう。この真ん中の丸に力を集中するんだ。んー、どうしようか。火だと危ないから……やっぱり光にしよう。こっちの外側の丸から出ないように紙を光らせてごらん」

 凪が紙を一乃に渡した。

「集中力がいるかも知れないけど。諦めずにやってみよう」

「……諦めずに……分かりました」





お読みいただきありがとうございました。

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