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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第3章
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2話 一宮①


 母に気持ち悪いと言われた。


 あの眼が、他人が自分を見る眼が怖い。


 思えば物心ついた時から、他の子とは違うことを気にしていた。

 鏡を見るのが怖い。

 水面を見るのが怖い。

 

 色の変わる自分の眼が怖かった。





 ―――


 一乃と凪は、三宮の部屋を出た。

 久しぶりに部屋から出た凪は、おっかなびっくり周りを見ている。

 通りすがりも、不思議な顔をして2人を見た。


 凪は少しの音がしただけでも、驚いて一乃の後ろに隠れてしまう。

「大丈夫ですよ」

 どちらが年上なのか分からない。


 2人は他の重役が待つ一宮の仕事部屋までやって来た。

 一乃が部屋の扉を叩いて開ける。

 部屋には3人の重役が待っていた。

 いつもの男2人の他に、四宮明蘭(しのみやめいらん)もいる。



 急に3人に会うことなった、凪はびくびくと一乃の後ろに隠れる。

 朝晴が心配そうに言った。

「凪……自分より小さい人間の後ろに隠れるのは無理があるんじゃないか? いい大人だろ?」

 

 次に明蘭が不思議そうに言う。

「どうして頭から布を被ってるの? 流行りの着こなし? 前髪も切らずに重めだし……」


 最後に龍臣が呆れて言った。

「仕事以外、部屋から出ないのは何故なんだ? そっちの方が困るだろう?」


 みんなから、やいのやいの言われ、爆発しそうになる凪。

「ああ、あああああ」

 一乃が凪に言った。

「大丈夫です。龍臣さんは優しいですし、明蘭さんは気配り上手な方です。朝晴さんは……いつもあんな感じです」

 一乃の何とも言えない、持ち上げに黙ってしまう3人。


「……」


 凪がひとまず落ち着いて、扉側の長椅子に座る。

 反対の窓側の長椅子に、龍臣、明蘭、朝晴が座った。

 一乃は自身の仕事机に寄りかかっている。


 傍から見たら、事情聴取を受けているみたいだ。


「で? どうして部屋から出ないんだ?」

 まず初めに龍臣が聞いた。

「……あの、特に理由は……」

「困らないのか? 三宮で働いている人間はあなたに話がある時はどうするんだ?」

「……部屋に来てもらってる……」

「それでいいのか」

「……え……ダメなの?」



 次に明蘭が凪に聞いた。

「ねぇ、それは流行り?」

「え? えっと……」

「頭の布よ。って……服の一部なの? くっついてるわ」

 明蘭は凪にお構いなしに、前に背中に行ったり来たり。

「へぇー! かわいいのね」

「……か、かわいい?」

「ええ、被りたい時に被れるなんて便利だし。帽子を持っていると被らない時は手で持つことになるでしょ?」

「……」

「いいわね」

 明蘭のべた褒めに、どう反応していいか分からない凪。



 最後に朝晴が聞いた。

「……お前が部屋から出るなんて。一体どうしたんだ?」

 凪が一乃をチラッと見る。

「成り行きで……」

「何日ぶりに出たんだ?」

「…………覚えてない」

「あー……そうか……どうだ? 久しぶりの日光は?」

「眩しいよ……眩しすぎる……」



 この部屋に入ってきてから、よく窓の外を見ている凪。

 龍臣がその視線に気が付いた。

「何かいるのか?」

「……あ、いや……」


「何か飛んでいますね」

 一乃が言う。

「??」

 一乃が凪を見る。

「見えますよね」

「え……うん……」

 一乃に再度言われ、凪がうなづいた。

 押しに弱い性格らしい。


「な、何が見えるんだ?」

「なにかは分かりません。黒いモヤにしか見えなくて……」

 龍臣の言葉に申し訳なさそうに一乃が答える。


 凪が窓の外を見ながら言った。

「あ、鳥の形をした式神だと思う。……かなり強い。誰のものだろう……。ずっと周りを飛んでいるんだ」


 凪が言いながら考える。


(二宮、四宮、朝晴は見えないけど一宮には見えるのか……。やっぱり昼間は力がない訳じゃないんだな)



 凪の考えを他所に龍臣が一乃に聞く。

「一乃、あの式神が敷地内に入ってきた、もしくはここで生まれた時、なにか感じなかったのか?」

「……いいえ」

「式神くらいの小さいものじゃ感じられないのかな? 俺らは感じられないし、見ることも出来ていない」

「周りを飛んでるって、誰か見ているってこと?」

 明蘭が心配そうに言う。


 朝晴が凪に言った。

「凪、もっとなにか見えないか?」

「え……そうだな……」

 凪が眼を細める。


「ん? あれ俺らの……。ってあれ? ええ!?」


 凪の1人寸劇に龍臣が言う。

「おい! 俺らは見えないんだから状況説明しろ!」


「来る! 来るよ!! こっちに来る!」

「は!?」


 続いて明蘭が叫んだ。

「み、見えるわ! 黒いものがこっちに来る!」

 窓の外を見た朝晴も気づく。

「ちょちょちょ! 大きすぎないか!」


「こっちに突っ込んでくるぞ!」


 黒い鳥が部屋目掛けて急降下する。

 部屋に入る直前、一乃がなにかに気が付いた。



「あ」



 黒い鳥は窓から部屋に突入して来た。

 風が巻き上がる。

 4人は咄嗟に、その場にしゃがみ込んだ。

 かなりの風圧だ。


 本棚に仕舞っていた本が揺れる。

 

 机に置いてあった書類が何枚か舞った。

 ハラハラと頭上から落ちてくる。


 次第に静かになり、4人が顔を出す。


 一乃はこんな中、1人で立っていた。

 左手を差し出している。

 手の上には小さな紫色の鳥が止まっていた。


「あれ……」

 朝晴と凪が鳥を見て気がついた。


 一乃が4人の方を向いた。

「……様子を見ていただけだそうです」


「は?」

 状況が読めない龍臣と明蘭は不思議そうな顔をする。

 

 2人とは打って変わって、朝晴と凪が肩を寄せ合っている。

「……え? ……怒られる?」

「仕事しなさすぎ?」

「こんな演出する人だったか?」

「……相当お怒りなのかな?」



 龍臣がたまらずに言った。

「なんなんだ? 分かるなら教えてくれ」

 2人の代わりに一乃が答える。

「これは照星さんの伝書鳥です」

「椎名様の??」


 一乃が指の上でパタパタする鳥を見る。

 それを見た凪が縮こまった。

「心配していたから、見に来た――と言っています」

「心配?」

 4人が凪を見た。


「見ないで〜〜〜」

 凪はたまらず、布で顔を隠した。





お読みいただきありがとうございました。

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