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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第3章
43/88

1話③


 嫌だな。


 人前に出るのは昔から嫌いだ。


 人といるのも嫌だ。

 見ないでほしい。


 前髪を長くすれば、眼を見られない。

 生き抜く安心材料だった。


「はぁ……」

 早く行かないと、椎名様がきっと探しに来る。

 次の講義で、みんなの前に立って術を披露しなくちゃいけない。

 ついに順番が回って来てしまった。

 自分にとっては拷問のようだ。

 

 ずっと庭の隅っこでしゃがみこんでいた。

 遠くで、足早に移動する人の音が聞こえる。

 講義に行く人かな?


「?」

 近くを歩く音も聞こえてくる。

 

 自分には気が付きませんように……


 2人いるのか話し声も聞こえてきた。

「今日の講義で発表する奴は誰だ?」

「……あー、凪里だろ?」

「凪里? 三宮にいる?」

「たぶんな」

「……あいつよく分からない奴だよな。暗いし、いつも下向いてるし」

「まぁ、それは言えてるなぁ」


 こんな丁度よく自分の噂話を聞くとは思わなかった。

 奇跡すぎる。


 大正解だと思う。

 自分は暗いし、下を向いている。


 今もだ。


「そんな事はないさ」

 突然、明るい陽気な声が聞こえた。

 聞こえる足音も1つ増える。


「え……」

「あ」

 2人組が驚いた声を上げた。



「あの子は天才だよ。間違いなくね」



「ほら、行った。行った。講義に遅れたら、照星に怒られるよ?」


 2つの足音がパタパタと遠くへ走っていく。


 辺りが静かになった。

 誰が来たんだろう……


 気になって、植木の間から覗いて見てみた。


「お、ここにいた」

 急に目の前から男性の顔が出てくる。

「わ!」

 驚いて尻もちを付いてしまった。


「ごめん、ごめん。驚かせるつもりじゃなかったんだ」

 白髪にメガネをかけた男性がこちらに回って来た。


「はい」

 と言って、手を差し伸べてくれる。

 手を掴んで引っ張ってもらった。


「凪里も行きな。照星は怒ると怖いよ」

「……知ってます」

「あはは、だよね」





お読みいただきありがとうございました。

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