5話③
話し終わって廊下に出てきた。
そよそよと優しい風が廊下に入ってくる。
明蘭は前に立っている弟に声をかけた。
「ねぇ、晴蘭」
「なあに?」
「扇、持ってる?」
「持ってるよ、ちゃんと」
「あのね、ずっと、やりたかったことがあって」
「?」
明蘭が手を引っ張った。
「え?」
2人が廊下を駆けていく。
その様子を扉の陰から見ていた朝晴と環奈。
「青春だな~」
「いいですね~」
扉にへばりついて廊下を見ている2人を見る龍臣と一乃。
「なにやってんだ」
「……龍臣さん、”せいしゅん”ってなんですか」
「は?」
「知ってますか?」
「あーー、ああ……」
言葉に詰まり、頭をかく龍臣。
「今の俺らみたいなものじゃないか?」
「??」
謎すぎる発言に困惑の表情の一乃。
そんな一乃にもっと困る龍臣。
扉にいた2人が、今度は龍臣と一乃を見ている。
「青春だな~」
「そうですね~」
ーーー
手を引っ張って連れてこられたのは、祭りで散々お世話になった大広間。
今日は誰もいない。
窓際に吊るしてある風鈴が揺れ、優しく鳴っている。
明蘭がやっと振り返った。
「やろう!」
子どもの頃のように明るい笑顔で明蘭が言った。
何をだ?
と思っているうちに、明蘭が懐から扇を出す。
自分の扇だ。
昔、交換した、大事な扇。
2人で1つなのだ。
双子だからではない。
彼女だから。
「明蘭……こんな時に聞くのもあれだけど、秋都さんとの話どうなったの?」
「保留よ、保留!」
あっけらかんとして言う明蘭。
悩みはどこかに吹き飛んだのか。
「保留って……いいの?」
「いいのいいの!」
彼女が言うのだから大丈夫なのだろう。……両親はなんというのか。
「早く早く!」
明蘭が舞台に登れと急かす。
晴蘭が右足で地面を2回叩いた。
叩いた地面から扇が出てくる。
「待ってよ」
晴蘭が舞台に登った。
2人で舞うのは何年ぶりだろう。
姉が四宮家の頭領に決まってからは諦めていた。
こんな日が来るなんて。
いいのだろうか。自分が舞っても。
音楽はない。
でも体は覚えている。
明蘭が足で拍子を打った。
それに合わせ、扇を広げる。
明蘭も扇を広げた。
風が吹く。
踊る2人の間に優しく抜けて行った。
第2章 終わり
最後まで、お読みいただきありがとうございました!
第2章これにて完結です。
次回から第3章に移ります。新しい仲間が1人増える予定です。
7月13日から第3章を更新していきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。




