2話 二宮 ①
「それで? ――急に鏡が現れた、と」
「そうです」
薄暗い部屋の奥に格式高い椅子に座って話をしているのは、妖を退治、封じる者たちの集団「星の宮」の頭である、椎名照星。
目の前で、報告しているのは一宮の頭領 一宮一乃と付人の環奈、そして、
二宮の頭領 二宮龍臣と付人の桔梗。
「話を聞いているだけでは、あまり納得出来るものではないが……目撃した者が多くいる。信じるしかないのだろう」
照星は、腕を組みながら4人に言った。
「良かったですねぇ、鏡ちゃんと帰って来て」
照星の横に座って、議事録を書いている秘書がふわふわ笑って言った。
「帰って来たのはいいが、犯人が特定されていない。外の人間なのか、組織の人間なのか、どんな目的で鏡を隠したのか」
「一乃さんは何か気づいたことありますか? 1番、鏡の近くにいらっしゃったんですよね? その……ネズミが出て来たときとか」
「……」
秘書の問いに沈黙で返す。
「まぁ分かりませんよね、みなさんも一緒にいて、見ていたのに、誰も、なにも、情報も得られなかったんですから」
照星が小さくため息をつく。
秘書の言葉に龍臣も少し反応した。
確かに、なにも無かったはずの空間に突然、亀裂が入った。光が溢れ、中からは大量のネズミが出現。ふと、棚に目を向けると鏡が現れてた。
自分はなにも分からなかった。なにも感じなかった。
不可解なことが目の前で起きたと言うのに。
二宮とあろう者が……。
膝に置いた拳をギュッと握った。
「いい」
照星が優しく言う。
「また、なにか分かったら報告してほしい」
4人が部屋を出ようとする。
照星が一乃に言った。
「一乃、小さなことでもいい。なにか気付いたら教えてくれ」
「はい」
小さく答えた一乃は部屋を出た。