3話②
朝からいい天気だった。
雲1つない空とは、まさにこの事。
どこまでも青い澄んだ空が広がる。
太陽は容赦なく、光と熱を放っていた。
今日は年に一度の祭りの日。
「星の宮」はこの連日、大忙しだった。
祭事の準備、出店関係者の打合せ、遠方より来る来賓者の調整、とにかくやる事が目白押しだ。
廊下を歩く人の数も一段と多い。
行き交う足音を聞きながら、一乃は部屋で書類をまとめていた。
環奈もずっと忙しそうだ。
あまり一緒に過ごすことが出来ない。
机には環奈が置いていった、薄紫色の羽が特徴的な鳥の人形が置いてある。
緊急の時に使用する通信機器のような鳥。
一乃は右手の人差し指で鳥を撫でた。
すると――
コンコン
扉を叩く音がする。
「こんにちはー」
聞いたことのある声が聞こえてきた。
「はい」
一乃が答えると、扉が開かれる。
「やあ」
四宮の付人、晴蘭が顔を出した。
「今いい?」
「はい、どうぞ」
晴蘭が、ひょこひょこ部屋に入って来て、一乃の前の椅子に座る。
机に両肘を付いて、笑って言った。
「明蘭が忙しそうでさー。今から着替えるからって追い出されちゃった」
「そうでしたか」
ふふーん、と鼻歌を歌いながら晴蘭が一乃に話しかける。
「一乃ちゃん、好きなものとかある?」
「好きなもの?」
「そう、例えば……俺は昼寝とか?」
「お昼寝ですか」
「なんでもいい、食べ物でもいいよ。俺はおにぎりが好き」
「……」
下を向いて考え込んでしまった一乃を見て、晴蘭は慌てる。
「あ、ごめん、ごめん。無理に考えなくてもいいんだ。ちょっと気になっただけだからさ。……また分かったら教えてよ」
「……はい」
(……私の好きなものってなんだろう?)
一乃が考える。
「明蘭はね、かわいいものが好きなんだよ。子どもの時にもらったウサギのぬいぐるみまだ持っているんだ」
「明蘭さん、かわいらしいですね」
「あはは、そうだよね。あと……本読むことも好き。家に沢山、本があったんだよ」
晴蘭が嬉しそうに言う。
「でね、辛いものとか静電気が嫌いなの」
「せいでんき?」
「扉に触るとたまに、バチッ! ってならない? あれだよ。ちょっと痛いんだよね」
「今日もなにもないといいなー」
頬杖をつきながら晴蘭が言った。
そんな晴蘭を見て、一乃が言う。
「緊張しますか?」
「ううん。俺は大丈夫。きっと明の方が緊張しているだろうね」
―――
祭りがもうすぐで始まる。
一乃と晴蘭は共に大広間へ行くことにした。
あそこで、明蘭の舞が披露される。
廊下に出ようと扉を開けた時。
「おっと……」
五宮朝晴が顔を出した。
「あ、五宮さん。一乃ちゃんと祭りに行くけど一緒に行く?」
晴蘭が朝晴に聞いた。
「……あ、ああ」
珍しく歯切れの悪い返事をする。
その様子を見ていた一乃が朝晴の背中をさすった。
「一緒に行きましょう」
「……」
少しだけ考えていた朝晴がニカッと笑う。
「そうだな。せっかくの祭りだもんな」
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