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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第2章
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2話②

 3人で話していると、不意に声が聞こた。

「ああ、ここにいたのか」

 目を開けば、二宮龍臣が廊下から現れた。

 ずんずんと歩いて来て、一乃の前で止まる。


 龍臣は晴蘭よりも背が高い。

 一乃と2人並ぶと、もっと一層、身長差が際立った。

(……いいわね)

 仕事の話をする2人を真面目な顔で見る。


「後で、椎名様に出しておくから……って、四宮はどうした?」

「気にしないで。いつもの事だから」

 晴蘭が呆れた顔で答える。

 明蘭はいつまでも真面目な顔をしている。



「ほら、こちらにいましたよ」



 龍臣がやって来た廊下とは反対の廊下から今度は環奈がやって来た。


 環奈の後ろに付いてきた男性も大広間に顔を出す。


 その人物に、明蘭が反応した。

「あ、秋都さん!? またどうして……」

「あの……明蘭さん。先日は、本当に、本当にごめんね」


 手を頭の後ろに置いて、首を傾ける秋都。

 もう片方の手には丸い物を持っている。

 陶器で出来ており、綺麗な花や鳥等の装飾が描かれていた。

 蓋が付いているため、何かの入れ物だろうか。



「それ……」

 明蘭が秋都の持っている丸い陶器に視線を落とした。

「これ……先日のお詫びで持ってきたんだ」

「なに? これ」

「使用人と買い物途中で見つけたんだ。『願いの泉』って言われて、なんでも願いが叶う。らしいんだけど……」

「願いの泉? 初めて聞いたな」


「ちょっと……怪しいね」

 晴蘭が明蘭に言った。

「そうね……」

「まぁ使ってみてよ。僕もどうなるかよく分からないけど」

「秋都さん、これ開けてみた?」

「え……ううん、一緒に開けようと思って」

「……」


 とても怪しいが、秋都が嘘をついているようには見えない。

 優しい秋都のことだ。

 本当にお詫びの気持ちで持ってきたのだろう。


 でも、願いが叶う?


 その時、


「は……」

「?」

 秋都が小さく息を吸った。

 たまらずに目を閉じている。


「え……」


「はっくしょーーーん!!!」


 豪快にくしゃみをした。

 体が上下に揺れ、反動で丸い陶器の蓋が取れる。


「ええ! 蓋が!」


 陶器の中から、煙が出てきた。

 かなり勢いがあり、大広間中に一気に広がる。

「なにこれ!」

「お、おい!」

 目の前が真っ白になってしまった。



 龍臣が白い煙を、両手で払う。

 一向に晴れる気配がない。


 気配を感じた。

 大広間にいるのは、一宮の2人と四宮の2人、そして許嫁の男。

 そのうちの誰だ?



 しかし――



 龍臣は目を疑った。


 そこにいたのは父だ。


「父上? どうしてこちらに……!」

 言いかけたところで、もう1人に気がついた。

 


 母だ。



 綺麗な髪を後ろで縛っている。

「は、母上……?」

 母は死んだはずだ。


 なのに、生前の母がいる。


 あの時と変わらない、仕草、笑顔。


「なぜ――?」


 母が龍臣に気がついた。

 ふわりと笑い、こちらを手招きする。


「……っ!」


 父もこちらに気がついた。呆れた顔で、こっちに来い、と言っている。

 不信感を抱きながら、龍臣は2人に近づいた。


「龍臣、見てみろ」

 父が言った。心なしか今よりも若く感じる。

 龍臣が手元を見てみた。


「これは……桔梗ですか?」

「そうよ。お母さんの一番好きな花。夏に咲くの。龍臣は知ってた?」

「い、いいえ……」

 昔と変わらない母だ。


「そうだ」

 と言って母が手を叩いた。


「龍臣、絵描いてよ!」

「はい!?」

「お母さんと花と……お父さんと一緒に! ね?」

「えっと……」

 

 言いかけたところで、視界が暗転した。

「!」

 体が一回転したように感じる。

 


 そうだ。

 あの時、絵を描いたんだ。

 母が亡くなる前の3人の思い出。

 あの絵はどこにしまったのだろう。

 継母に気を使って、どこか見えないところにでもしまってしまったのか。


 龍臣は目を開けた。


 そこは、


 先ほどまでいた大広間だった。




お読みいただきありがとうございました。

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