1話④
風が大きく大広間を抜ける。
環奈が庭の方を見て言った。
「正午を回ったのでしょうか。もう飛んできませんね」
矢が飛んでくる方向には必ず、朝顔が咲いていた。正午になれば矢は飛んでこない。
朝顔は一般には朝に花を咲かせ、夕方には花を閉じるといわれている。
勘づかせないための細工なのか。
先ほど、龍臣が朝顔に触れると灰のように崩れ落ちた。
そして「星の宮」に対抗する「月の杜」が使う、文様が入った紙が出現したのだ。
龍臣の持っている紙切れを全員が覗いて見てみる。
明蘭が口を開いた。
「これが、前に言っていた「月の杜」っていう人たちが使っていた文様なんでしょ? その人たちが犯人っていうこと?」
「そうなるが……四宮は知っていたか? 過去に会ったことがあるとか?」
「いいえ、あなたたちの”動物襲撃事件”の報告書で初めて知ったし、面識もないわ」
「なぜ四宮様を狙うのでしょうか? 踊ってほしくない人?」
環奈の疑問に朝晴が話し始める。
「そもそも、祭りっていうのは神や仏などを祀る儀式のことだ。「星の宮」にとっての祭りは、この土地の力を強くするために行うんだ」
「土地を強くするため? 土地神様みたいなものですか?」
「まぁ、そうだな、四宮家は代々、「星の宮」の祭事の時には舞を踊ってきた。それなりの力があるって訳だ。明蘭ちゃんの舞には」
「力が付くと、具体的にどんないいことがあるんです?」
「妖は現れない、術者は術を上手く使えるようになる、「星の宮」の住人の力が向上する……などなど」
「なるほど……四宮様はすごいのですね」
「「星の宮」に力が付いてほしくない、と言ったら、やっぱり「月の杜」だよな」
「彼らと言ったら、五宮様、あの奈取という男と知り合いでしたね」
環奈の言葉に朝晴は頭をかく。
「ああ」
「あいつが「星の宮」にいた時に知り合ったのか?」
今度は龍臣が聞いた。
「いいや、妹だ――妹が「月の杜」にいる」
「ええーーー!!??」
その場にいた全員が驚いた。
気にせず、朝晴は続ける。
「反抗期で家を飛び出したんだ」
「やばくないか?」
「やばいよ☆」
親指を立てながら朝晴が言った。
すると――
「ごめんくださいー」




