1話③
「これは……」
全員で龍臣が持ってきた紙切れを見る。
「なにこれ? 符? 朝顔に化けてたってこと?」
晴蘭がマジマジと見て言った。
「そういうことになるな」
龍臣が明蘭に向き直る。
「四宮、今日、晴蘭がやって来て、助けてほしいと言われたぞ。詳しく教えてくれないか?」
紙切れを訝しげに見ていた明蘭は1つため息をつくと話し始めた。
「分かったわ……」
肩にかかる髪を手で後ろに流す。1つ1つの仕草が美しい。
「今、困っているのは……許嫁のことよ」
「え?」「?」
多くの人に疑問が浮かぶ中、壁に寄りかかっていた晴蘭があっけらかんとして言った。
「あーやっぱり、それかー」
「許嫁? 四宮は、その……婚姻を結ぶのか?」
四宮明蘭はまだ二十歳くらいだろう。
別に結婚を急ぐような歳でもない。
それに、許嫁がいたことを初めて知った。
「そうよ。私が『はい』と言ってしまえば、全部がとんとん拍子に進んでめでたく成婚するわ」
「なんで困っているんだ?」
「嫌なのよ」
「いや? 結婚が?」
「許嫁が!!」
いつになく大きい声を上げる明蘭。
一同はその勢いに驚く。
「幼馴染とはいえ、なんか! なんか嫌なのよ! どうして親の決めたことを守らなきゃいけないわけ? 私には私の運命の人がいるのに! あの人はなよなよしてるのよ! それでいて女の子を守れると思う!? なにが『お化けが怖い』なのよ! こっちはそれを相手してるっていうのに!」
一気に話した明蘭は、一呼吸して続ける。
「両親は、今になって『早く結婚しろ!』『今しないと婚期を逃すぞ』とか言って、急かしてきて! か弱い男は興味ないわ! 私にはきっといつか白馬の王子様が来てくれんだから! それまで絶対、結婚なんかするもんですか!」
一同は唖然とし、誰も答えられない。
静かな中、明蘭が肩で息をする音が聞こえる。
龍臣が朝晴に小さい声で聞いた。
「白馬は……白い馬だよな? 五宮、”おうじさま”って知ってるか?」
「い、いや?」
「”さま”が付いているから偉い人なのでは?」
環奈もヒソヒソ話しに加わった。
「明蘭、どうどう……」
晴蘭が、明蘭に近づいて落ち着かせようとする。
どんな言葉をかけていいのか分からず、龍臣は悩んだ末の言葉をかける。
「……困った問題だな」
「本当よ」




