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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第2章
20/88

1話②

 一乃、龍臣、朝晴、晴蘭、そして一乃の付人である環奈を加えた5人が大広間へやって来た。

 奥の舞台の上で、舞の練習をしているのか、四宮明蘭は扇を持ちながら、優雅に回っている。

 舞の師範が、手拍子をとっていた。

「祭りが近いからね」

 晴蘭が言った。



 毎年、夏に開催される祭り。

 この日だけは、「星の宮」に外部からも人が往来し、出店や屋台も立ち並ぶ。

 神様を祭る行事に欠かせないのが、舞の奉納であった。

 四宮家が代々、受け継いでおり、頭領が舞うことになっている。



 そんな、四宮明蘭だが、どことなく集中力が切れているようにも見えた。

 長い裾を踏んでしまいよろけてしまう。


 「はぁ……」

 と、明蘭はため息をついた。

 今日はここで練習が終了なのか、師範も大広間から出て行った。


 明蘭が廊下から近づいてくる5人に気づく。


「晴蘭? どうしたの」

「あ、明蘭。前、話していた――」

 話している途中で、晴蘭が持っている短刀を振り抜いた。


「!」


 矢が床に落ちる。


「ほらね~」

 と、晴蘭はやれやれしながら言った。

 龍臣がすばやく動く。

 矢が飛んできた方角を目掛け一目散に飛んだ。


 辺りには誰もいない。

 逃げたのか?

 それにしてはあまりにも早すぎる。

 


 龍臣は5人のもとへ戻ってきた。

 朝晴が龍臣に聞く。

「どうだったんだ?」

「誰もいない。気配すらなかった」

 今度は晴蘭が言った。

「そう、誰もいないのに矢が飛んでくるんだよ? 不思議だよね」

「一乃、なにか感じなかったか?」

 龍臣が一乃に聞いた。

「いいえ、なにも」



 晴蘭が明蘭を肘でつく。

「な! なによ!」

 明蘭が慌てながら晴蘭に言った。

「明蘭、挨拶、挨拶」

「あ、挨拶!? 晴蘭は?」

「俺はした」

「ええ?」

 話している2人の顔は瓜二つ。紺色の着物がよく似合う2人だ。

 明蘭がこちらをチラチラ見る。

「あの……明蘭です。四宮明蘭。こっちは弟の晴蘭」

「ああ……」


 明蘭の様子に戸惑う龍臣。



 四宮はこんな人物だったか?

 仕事で一緒になったことはなかったが、椎名様の下に集まった時には、堂々と発言していたと記憶している。

 


「さっきの矢のこともそうだが……何があったんだ?」

「分からないわ。最近、急に矢が飛んでくるようになって……その方向に走ってみても誰もいないし」

「いつから飛んでくるようになったんだ?」

「……そうね……夏祭りの舞の練習をしたころからよ」

「舞の……」

「もう10回以上飛んできてるよね」

「10回も?」



「あ――」



 晴蘭が反応した。

 明蘭を小さく押す。

 明蘭が後ろによろめいた。


 明蘭の目の前を矢が飛んでいく。

 隣の壁に矢が突き刺さった。

「――」

 晴蘭が体を押さなければ、刺さっていたのは明蘭だった。

「あ……ありがとう」


「うん~」

 なにも気にしていないように晴蘭が答える。


「大丈夫か?」

 4人も近づいてきた。

 壁に矢が刺さっている。



 全員で飛んできた方向を見る。

 方角は庭。

 誰もいない。

 風が通り過ぎていく。



「今、誰もいなかったですよね?」

 環奈が言った。

「まー、もうちょっとで正午だし」

 と、晴蘭が言う。

「正午?」

「午後になれば飛んでこないんだ。いつもね」


「午後になったら……」

 環奈がパッとひらめいたように指を立てた。

「実はあの朝顔から飛んで来てたりして!」



 今の発言に、周りにいた全員が大真面目な顔で環奈を見る。

 自分を見る全員の目に驚いた環奈は汗を流しながら焦る。

「え? え? 私まずいこと言いました?」

 

 龍臣が草履も履かず、庭に降りた。

 のっしのっしと庭を突き進んで行く。

 花壇に植えられた朝顔。刺さっている支柱に茎がまとわりつき、紫や赤紫の花が咲いている。

 龍臣がそっと優しく触った。

 

 途端――朝顔が、ぼろっと崩れ落ちた。

 地面に落ち、黒い灰のようにボロボロになる。

 龍臣が手元を見た。

 自身の手にあったのは、紙。


 見覚えのある文様をした紙切れがあった。



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