1話 四宮 ①
第2章の始まりです。
いつまでも続けばいいと思っていた。
いつも一緒で、喧嘩もあったが、やはり1番の理解者はあの子しかいない。
いつから、未来に不安を持つようになったのだろう。
いつから、今の幸せが続かないものだと分かってしまったのだろう。
孤独ではない。
なのに、寂しい。
やりたいことはさせてもらっている。
なのに、虚しい。
自分で出す答えが本当に正解なのか分からなくなっていった。
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季節は夏、太陽がギラギラと光り、今日は雲が1つもない。
庭には陽炎が見えるほどで、廊下に出ている人はまばらだった。
ここは「星の宮」。人に危害を加える妖を祓い、封印する者の集まりである。
椎名照星の率いるこの組織には5人の重役がいた。
重役の1人である少女、一宮一乃。
床にも付きそうな長い白髪に、白い薄手の着物を着ている。
一乃は、自室で書類整理の仕事をしていた。
机の迎えに座る赤い髪に赤い着物を着た人物。
重役の1人、五宮朝晴。
2人は机に置かれた書類を難しそうな顔で見ていた。
「朝晴さん、分かりましたか?」
「……いいや。全然……どの数字が間違ってるんだ? なんで合計の数字が合わないんだ?」
朝晴はそろばんを片手に何度も何度も計算し直す。
「急ぎではありませんので、いつでも大丈夫ですよ」
「一乃ちゃん……こんな間違いがある書類があと8個くらいあるわけよ」
「……はち……」
一乃がのんびり呟いた。
コンコン
扉が叩かれる音がする。
「いるか?」
男の声がした。
「はい」
部屋の主である一乃が答える。
扉が開かれ、男が入って来た。
黒い髪に黒い着物、重役の1人――二宮龍臣である。
龍臣は朝晴を見るとため息をついた。
「また、あなたがいるのか」
「仕事だよ。珍しくな」
「いつも仕事していてくれ」
「二宮はどうした? なにかヘマしたのか?」
「俺は提出物を出しに来ただけだ。一乃、これ」
「はい、ありがとうございます」
「んじゃあ、もう帰るのか」
「……」
「? どうした?」
「少しだけ」
と言いながら、朝晴の隣の椅子に腰掛けた。
「五宮は、なにをしているんだ?」
「おう、聞いてくれよ。先月の帳簿の数字がまるで合わないんだ」
「計算が違うんだろ?」
「ところがどっこい、何度やっても合わない。しかも、こんなのがあと8つある」
「……8」
「大丈夫です。ゆっくり、やりましょう」
一乃がのんびり言った。
「いやいや、最後に困るのはお前だぞ?」
龍臣が一乃に言う。
「……そう、ですね」
困ったように手をあごに当てた。
すると――
コンコン
珍しく扉を叩く音がした。
龍臣と朝晴は顔を見合わせる。
「はい」
一乃が返事をした。
「……ごめんくださいー」
扉が開き、現れたのは、バサバサな紺色の髪に紺色の着物を着た青年。
重役の1人、四宮の付人――四宮晴蘭だった。
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「あの……」
龍臣と朝晴に囲まれて椅子に座った晴蘭が口を開く。
「はい」
一乃はいつも通り、のんびりと答えた。
「俺のこと知ってる?」
「? ……ああ」
答えたのは龍臣。
「四宮明蘭の付人、晴蘭だろ?」
「大正解」
指をパチンと鳴らして晴蘭は龍臣を見た。
「これ言って頼みがあるんだ」
「「頼み?」」
龍臣と朝晴の声が重なる。
「前に動物襲来事件があったでしょ? まぁ本物の動物ではないけど……それをさ、見事解決したじゃん。だから、あなたたちなら助けてくれそうだなって」
「?」
以前「星の宮」で動物の形をした妖が警備員を襲い、敷地内にも現れた事件が起きた。
その事件を解決するよう、「星の宮」のまとめ役――椎名照星に龍臣と一乃が抜擢された。
「月の杜」という、「星の宮」に対抗する組織が絡んでいると分かり、犯人も特定出来たのだが、今だに「月の杜」の目的は分かっていない。
そんなの事件を、周りの人は"動物襲来事件"と呼んでいた。




