5話 一宮 ①
白い壁紙の部屋にカーテンがいくつも天井から、ぶら下がっている。
カーテンは区切りになっており、中にベッドが置いてあった。
そのうちの一つに、誰かが寝ている。
ベッド脇の椅子に座る者は、寝ている人物を心配そうな様子で見つめていた。
寝息が聞こえる。
少し開いた胸元から見える包帯が痛々しい。
一宮一乃は目を閉じてベッドで寝ている。その様子を付人の環奈が視線を動かさず見ていた。
「いいか?」
カーテン外から声がする。
「はい」
環奈はカーテンを開けた。
そこに立っているのは、二宮龍臣と付人の桔梗。
物音を立てないように静かにカーテンの中に入ると、環奈が用意してくれた椅子に腰をかけた。
龍臣が寝ている一乃をチラリと見る。
「変わりはないか?」
龍臣が環奈に聞いた。
「はい」
環奈が小さい声で返事をした。
「二宮様、ありがとうございます。一乃様が助力してくれたと、みなさまに言っていただいて」
「……誰も信じてはくれなかったがな」
先日の雨の日、龍臣と一乃は龍と遭遇した。一乃は龍臣を庇い負傷。傷を負いながらも、龍を撃退したのは一乃だった。
周りの人間は、龍臣が龍を祓ったのだと疑わない。龍臣が「一宮がやった」と言っても、心優しい龍臣が一宮を持ち上げている、と流されてしまった。
「……」
「……聞いていいか? 一宮のこと」
「はい……」
「一宮は……力がないんじゃないのか?」
「力はあります」
「それもかなり強い」
「そうです」
「なぜ? ……隠しているのか?」
「隠してはいません。ただ……私も詳しくは知らないのですが……一乃様も詳しくは分からないと思います」
「どういうことだ?」
「条件があるようです。力が使えるようになるための……例えば、日が落ちているとか」
「日が落ちている……ということは、夜ということか」
昨日の龍と対峙した時、確かに一乃は「夜が来る」と言った。夜になったから力が使えるようになったということか。
「はい、でも夜になるだけではダメなようです。あと……水が近くにあったほうがいい、とか。……本人もまだ分かっていない条件もあると思います」
「……だから、詳しく”分からない”のか」
「はい……」
「この「星の宮」で誰が知っている? 一宮に力があると」
「私と、椎名様……そのぐらいかも知れません」
椎名照星は一乃の力を知っていたのか。それも当たり前か。一乃を重役の1人にしたのは彼だ。それに、前から一乃のことを気にかけていた。
今回の龍事件の報告をどう聞いたのだろう。
「分かった……」
龍臣が立ち上がる。
「また何かあったら教えてくれ」
カーテンから出ようとしたところを環奈が止める。懐から小さな鳥の人形を2つ取り出した。
「これを……もし何かあれば、これでお知らせします」
この間、部屋に入ってきた五宮の伝書鳥と同じか。遠くにいても鳥の人形同士を介して会話ができる。
「ああ、環奈、お前も休めよ」
龍臣は桔梗と一緒に出ていった。
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