月明かりの約束
夜風が頬を撫で、冷たさが心の奥まで染み込んでくるようだった。
公園のベンチを離れ、ゆっくりと歩き出す。
足音がアスファルトに響き、まるで僕の心臓の鼓動と重なるように、一定のリズムを刻む。
満月が空に浮かび、街灯の光と交錯しながら、僕の影を長く伸ばしていた。
家までの道のりは、いつもならただの帰り道なのに、
今日はやけに遠く感じる。
君のウェディングドレスの姿が、頭から離れない。
あの笑顔。あの輝き。君は確かに幸せそうだった。
僕が何年も心の奥に閉じ込めてきた「君」は、もう別の誰かのものになっていた。
家に着くと、僕は何気なくスマホを取り出し、SNSを開いた。
君の投稿はまだそこにある。
コメント欄には、友達や知人からの祝福の言葉が溢れている。
「おめでとう!」「素敵なカップル!」「幸せになってね!」
――どの言葉も、君の新しい人生を祝福するものばかりだ。
僕はスクロールを止め、画面をじっと見つめた。
指が「いいね」ボタンの上で一瞬止まる。でも、押すことはできなかった。
代わりに、僕は昔の写真フォルダを開いた。
そこには、君と過ごしたあの頃の記憶が、色褪せずに残っている。
公園で撮ったツーショット。君がアイスを食べて笑っている写真。
僕がふざけて撮った、君の寝顔。
どれもが、まるで昨日のことのように鮮明で、胸を締め付ける。
「なんで、こうなっちゃったんだろうな…」
声に出して呟いてみるけど、答えなんてどこにもない。
ただ、時間が過ぎ、僕らは変わってしまった。それだけだ。




