第八章~音楽性~
案の定蘭が部活動に入部した途端、大音先輩が冷やかした。
「ひゅーひゅー!あついね~青春だね~」
蘭の顔が何故か赤い。しかし、自分もあのキスを思い出すと少しからだが熱を持つ気がした。
それはともかく、蘭の担当は作詞のみならず作曲も担当することになった。
つまり、音楽の性質は蘭に委ねられることとなった。
クラスに戻ればクラスに戻ったで
「おい!おまえの部活の美形の女誰だよ?」
「もしかしてデキちゃってんの!?ハハハハハ!」
バカも休み休み言って欲しい。
「おい。オレも入って良いか?」
いきなり声をかけてきたのは同じクラスの大のトラブルメーカーこと広瀬だ。
僕はなんて運のない人なんだろうと思ったが、よく考えたら
広瀬はカナリ歌が好きでカラオケに一緒に言ったときにカナリの腕前を披露してくれた覚えがある。それを期待しつつ
「いいよ、先輩がOKだしたらね?」
と言ったが、広瀬の顔はデレデレしていて蘭目当てかと想うと呆れた。
放課後、広瀬を引っ張って、先輩の前に付き出した。
「コイツが、いや、広瀬がボーカルやりたいというのですが。。。」
自然と空気が冷たくなる。先輩の目も冷たくなる。
「出来るの?」
「出来ます」
即答の広瀬。
「プロ並み?」
「アマチュアです」
「じゃあダメ」
何だこの会話。
「プロ志向じゃないとダメなんだよ」
「ではやってみましょう。今からプロ目指してやります。」
「ならわかった。許可しよう」
大音先輩の単純な思考回路には時々参る・・・
そんなこんなしていると
「できた!できましたぁ!!」
蘭の声が響く。どうやら詞と曲が完成したらしい
が
先輩は見て顔をしかめる。
「おい、ここのファルセット、男に出せる物なのか?」
「でも、これくらいのファルセットにしないと切なさが伝わらないので」
「いくら悲哀の歌でもここまではさすがになぁ」
正人先輩が続く
大音先輩がさらに
「そもそも構成も変だ。」
「これは私のオリジナルです。それにBメロが二回続く作品は多いですよ!」
素人の僕は口出しできず立ちっぱなし。堪えきれず
「あの! 蘭に歌ってもらったらどうでしょうか?」
「おっ。ガキンチョいいこというな!彼女のためなら笑」
「彼女じゃない!」
「彼氏じゃないですぅ」
「彼女なの!?!?!?!?」
広瀬のバカみたいな叫び声が響き渡る。まさにKYである。
「全て見直して練習もしたいので時間をください」
蘭はそうお願いした。先輩達は猶予期間は二日間とのこと。
つまり、三日後に蘭がステージ(といっても屋上なのだが)で歌うと言うことだ。楽しみ半分 不安半分と言うところだろうか
複雑な心境だった。しかし、広瀬が茶化してくるからそれはそれでまた1つの中和剤にはなったのだが。
毎夜毎夜眠れぬ夜が続いた。蘭は大丈夫だろうか?切り捨てられたりはしないだろうか?不安で不安で何もかもを切り刻みたくなった。
そんな不安も、三日後になれば晴れていた。
屋上で堂々と喉という器官を震わせ奏でられる美しい旋律に圧倒される先輩達。
蘭はどうしてこんなにも歌が上手いのだろうか?不思議だった。
いや、逆にこんなに歌が上手いのに作詞の道に走ったことがオカシイ。
何かあるに違いない。そう確信しながらも、心から正式入部を喜び拍手をした。
まだまだ続きますのでお待ちください
楽しみにしていてくださいっ!




