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46:混沌を招く者

 嬉しそうにパソコンを弄る人影が一つ。売り子は柔和な子供のような笑みを浮かべている。

 彼女が見ているのは魔物と化した石橋が討伐される瞬間。あのオフィス街の様子だ。


「うんうん。中身のせいか負けてしまいましたが、傀儡化後の性能は充分ですね。理性も崩壊し、肉体のコントロールを負の感情が持っているのもグッドです」


 拍手しながら塵となって消えていく石橋を見送る。そんな不気味な様子をドゥドゥは背後から苦々しく見ていた。

 彼からしても気分の良い光景ではなかった。勇者ドラッグの副作用、魔物となる最悪の未来だ。

 それでも『こんな底辺の人間と同じにはならない』と自尊心が彼の冷静さを保たせていた。


「いいのか? ベルトは残っているし、ヒーローの連中に回収されるぞ」


「かまいません。ベルトはギアを少し改造しただけの玩具ですから、調べても問題ありませんよ。それよりも」


 売り子はマウスを手に画面を切り替える。メールボックスなのだろう、大量のメールが届いていた。日本語だけじゃない、英語のメールもちらほらと見えている。


「ニポンだけじゃなく各国から注文来ています。力を欲するのは人間の共通欲求のようですね」


「そりゃそうさ。自分が他者より高次の存在になりたい。特に石橋みたいな底辺は、そのちっぽけなプライドを満たしたいだろうからな。自分の力で変えられないから、貰い物の力に縋るんだ」


 ふと売り子は軽蔑するように目を細める。どの口が言う、同じ穴の狢だと言いたげだ。


「……ではドゥドゥさんも、その底辺に劣らぬ力を見せてくださいね。候補者のデータも欲しいので」


「まあ待て。こっちも再生数を稼げるよう相手を見繕わなきゃ。俺がネッチューバーの天下を取る第一歩のな」


「期待してますよ」


 ドゥドゥはフッと格好つけるように笑い部屋から出ていく。売り子はそれを笑顔で見送り、姿が見えなくなると顔の皮を剥がすように無表情となる。

 子供が興味を失うのと似ている。ついさっきまで楽しんでいた玩具を捨て見向きもしなくなったように。


「お願いしますよ。しっかりデータを取っていただけないと、()()()()()()に満足のいく製品を提供できませんから」


 パソコンに触れ画面を変える。そこには数人の男女の写真が並べられていた。


「ベータ版のテストプレイ……みたいですねぇ。ただ、結果はバランス調整ではなくナーフも無い、アップデートのみ。装備品は高品質でないと。大金叩いて勇者の血を集めたのですから」


 その写真の中に少女が写っている。ブレザーを着たショートカットの少女、黒井由紀の写真だった。

これにて二章完結となります。

総合計20.6万字。二章は9.6万字になりました。

今後もイベントを起こしつつ物語を進めたいと思います。


これからもよろしくお願いいたします。

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