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14:ダブルヒーロー

 善継の指先のワイヤーを振るいながら跳躍。蛍光灯の光を反射し星空のように輝きながら広がり、怪人の周囲を取り囲む。

 金属の糸がしばり上げるも、見た目通り刃物の塊は身を震わせ切断した。


「意外と切れ味はいいな。下手に触るの危険……なら!」


 徒手空拳がメインの彼からすればこのまま攻撃するのは危険だ。ワイヤーを手足に巻き付け装甲を作り出す。


「ヌン!」


 青山はステッキを振り回し水の弾丸を放つ。一つ一つが野球ボールのような水の塊が迫るも、怪人は刃を振り簡単に切り裂き弾く。

 だがその一瞬の隙に善継は急接近。鋼鉄のグローブで殴り付ける。

 周囲に響く金属音。拳が刃物の塊とぶつかる度に火花が散り衝撃が怪人の中へと伝う。


「この……」


「まだまだ!」


 抵抗し刀となった指で引っ掻くも、逆に長いリーチが裏目に出ている。懐に潜り込まれては上手く動けていない。


「どこを見ていますかな!」


 それ所か青山もステッキを叩き付け攻撃。善継の拳の後に追従するように二人は怒涛の連撃を打ち込む。

 まるで長年の相棒のようなコンビネーション。経験が可能にした即席とは思えない戦いだ。

 これでは完全にタコ殴り。人々の声援に応えるように二人の攻撃は速度を上げていく。ステッキの突きに合わせアッパー、更に殴打しよろけた所に回し蹴り。

 だが表面の刃先を軽く傷つけるだけで、その内側まで攻撃は到達していない。


「はっ!」


 善継の跳び蹴りが腹に直撃。大きく突き飛ばす。


「ふぅむ。素人ですかね、我々の動きに追い付いていない」


「だが見た目通りの防御力だ。当たっても手応えが無い」


 善継の言う通り怪人は息を荒げ焦っているようだが、すぐに立ち上がりピンピンしている。攻撃は通用していない。

 以前戦った魔人に比べると明らかに弱い。武術のぶの字も知らないような素人丸出しの動き。こちらの攻撃にろくに反応できていない。しかしその肉体のスペックは確かなもの。まともなダメージを与えられていなかった。


「素人でも魔人だ。俺達ヒーローよりも基本性能は上ってか。厄介だな」


「となれば……」


「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」


 雄叫びと共に両手を振るう。十本の指、そこの刀を一斉に投げつけてきた。

 迫りくる刃達。しかし二人は冷静だった。


「「甘い!」」


 蜘蛛の巣型の盾と水の盾を同時に生成。天井や床、人のいない方角へ刀を次々に弾く。


「攻撃力も弱い。魔人にもピンキリってとこか」


「奴らも生物ですからね、優劣はあるでしょう。今回は運良く劣った個体のようですな」


その言葉に怪人の肩が震える。


「劣ってる……だと?」


 声に怒気が混ざり全身の刃がカチカチと音を鳴らした。何かがおかしい。今まで狼狽えていた様子とは違い空気が一変した。

 逆転した笑顔の仮面、それはまるで怒りを表しているようだ。


「殺す! 俺を見下すようなやつは皆殺しにしてやる!」


 そう叫ぶとベルトのバルブを回した。


『Anger strike』


 ベルトからの声と同時にアンプルの中身が急速に減っていく。指先から刀が再生し殺意が伝搬し善継達の心臓に揺さぶりをかける。

 ギアに似ている。まるでヒーローの必殺技のようだった。


「っ! ダンディ、来るぞ」


「了解!」


 二人の手がギアのレバーに振れる。


「死ねぇ!!!」


 怪人は刀を床に突き立てる。刀身が揺れ、足元から無数の棘が床を突き破りながら生え、善継達目がけ走り出した。

 二人は避けようとしない。ただレバーを回した。


『『Finish!』』


 ギアが叫ぶ。全身に力が駆け巡り心が震える。

 善継の右手には直径一メートル程の蜘蛛の巣型のカッターが、青山の前には身の丈はある水の球が生成された。


「成敗!」


「くらえ!」


 青山はステッキをバットのように振り水球を打ち出す。そして善継も蜘蛛の巣型のカッターを投擲した。

 無数の棘と水、蜘蛛の巣が衝突する。一進一退、力と力がせめぎ合う。

 しかし二人がかりなのが功を奏したのだろう、棘をへし折りながらジリジリと押していく。


「もう一丁!」


 ダメ押しとばかりにもう一枚カッターを投げる。棘を吹き飛ばし、空いた道に薄い糸の刃が高速回転しながらつっこんだ。

 風を空を切り裂きながら迫る。悲鳴を上げる間も無い。反応できず防ぐ事もできなかった。

 直撃。刃物の塊である怪人の外皮を削りながら突き飛ばした。


「うぐああああああ!?」


 血を撒き散らしながら転がり、更に欠けた刃の破片は床に落ちると黒い塵となって消えてく。床に血痕が小さく点在し、少しづつ乾きドス黒く変色していった。


「やりましたか?」


「いや、浅い」


 命中はした、ダメージも与えている。しかし致命傷には遠い。

 怪人は腹部から血を垂らしながらも立ち上がる。肩で息をしながら感情の読めない仮面でこちらを睨んでいた。


「畜生、このままだと薬の……。覚えていろ!」


 手だけでなく足からも刀を伸ばしつま先立ち、そのまま身体を回転させ地面の中へと潜航していった。


「待て!」


 善継が追いかけるも怪人の方が速い。全身をドリルと化し、あっという間に潜ってしまった。残されたのは大きな穴だけだ。


「逃げられたか」


「ですが人的被害は皆無。魔人相手に健闘した方でしょう」


「そうだ……ん?」


 善継はあるものに気付く。それは床に残された血痕だ。


「血?」


 しゃがんで触れ臭いを確認する。僅かに感じる鉄臭さ、これは間違いなく血だ。


「どうして血が残ってるんだ?」

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