10:何を考えている?
善継は少しだけホッとした。どうやら正体はバレていないらしい。しかし彼女の勘の鋭さには驚いた。
「なんで彼女が俺の親族だと?」
「そうですね。まずは顔……ですね。写真は拝見させていただきましたが、直接お会いし似ていると確信しました」
「成る程」
確かに魔法少女となった善継は亡くなった姉と瓜二つだ。
「それに戦闘スタイルも似ています。おそらく同系列のメダルを使っているのでしょう。となれば……貴方が直接指導したと考えます。それらを考えれば血縁者の可能性は高い、違いますか?」
流石に本人とは思っていないようだ。いくら魔法の存在が認知されたとはいえ、性別が変わるなんてのは聞いた事が無い。ならば彼女が親族だと考えるのは妥当だろう。
「一つ聞きたい。どうして彼女に会いたい?」
そう、それが一番の謎だ。単純にファンの可能性もある。実際値では声援をちょくちょく見かける。メタルスパイダーよりも人気はある。
だが何となくだが違う、そう感じていた。
「それは勿論、世界で初めて勇者を倒したヒーローですから。是非ともお話を伺いたくて。そう、どうやって勝ったのかと」
明美の要求はわかる。そもそも彼女以外からも会社の方に質問が来ているくらい。ヒーローが勇者に勝つのはそれ程大事なのだ。
だが既に答えは作ってある。
「会社が公表しているだろ。うちの勇者との戦闘で消耗しきった隙をって」
「それはどうでしょうか」
不意に今まで黙っていた青山が口を開く。重々しく威圧感のある声だ。
「青山」
「失礼いたしました」
「いえ、貴方の方からお願い」
「かしこまりました」
深々とお辞儀をし善継の方を振り向く。凄まじい威圧感。思わず身構えてしまいそうな程だ。大柄な体格もあってか、その雰囲気を一層際立たせている。
「確かに二葉製薬様の発表は納得している方も多いでしょう。実際、魔法を使い過ぎで消耗した所を狙う作戦は昔立案された事があります。しかし二人がかりで全滅。いくら弱い魔法しか使えなくとも、ヒーローの必殺技と同等の威力はありますから。消耗しきっていようと、ヒーローが一対一で勝てるとは思えません」
「古いぞ。七年前だったか? 俺もその戦いは聞いた事がある。だけどな、あの時代よりギアもアップデートを重ねヒーローの力は強くなってる。だいたい、初期はオークも二人がかりで討伐していたが、今では単独討伐が一人前の証明と言われている状況だ。それにうちの魔法少女は最新式のヒーローだ。適正が限られる分強い」
世間には魔法少女は最新式とだけ公表している。今までのヒーローより適正が厳しくより強力なギアだと。
「現に魔人の討伐にも成功している。性能は過去のヒーローよりも圧倒的に上なのは明白」
「ふむ……」
「言っておくが、みうみうは俺より強いぞ」
言ってて妙な感覚だった。自分の事なせいか、自画自賛しているようだ。
流石に善継の反論に青山も口を閉ざす。
「青山、言い負かされちゃったわね」
「面目ない。いやはやおっしゃる通りで、私の知っているヒーローとはもう古いのでしょうな」
自嘲するような笑いだが、どこか胡散臭い雰囲気がある。まだ何か裏があるような、全て納得していないような目だ。
「帰りましょう。青山」
「はっ。では八ツ木様、みうみう様から何かあればこちらにご連絡を」
そう言い一枚の名刺を手渡してきた。善継は受け取るも連絡をする気は無い。
「一応伝えはする。それと推薦もしない。悪いが金持ちの道楽に付き合うつもりは無い。俺達ヒーローは遊びじゃないし、命懸けの仕事なんだ。軽い気持ちで入りたいなんて言うもんじゃないぞ」
明美の目付きが変わる。鋭く爬虫類のような敵意の目だ。
「一つだけ誤解を解かせてください。私は伊達や酔狂、道楽で魔法少女戦隊に入りたいと言っている訳ではありません。私は本気でヒーローとなりたいのです。そして魔物や勇者から…………」
本当に同一人物なのか、そう疑いたくなるような雰囲気の変貌。命懸けのスリルを楽しむような態度ではない。おそらく彼女は本気だ。
「失礼します」
そう言い残し車に乗ると、エンジン音を響かせながら走り出す。一人残された善継はその後ろ姿を見送りながら名刺をジャケットの内ポケットに入れた。一つだけ既視感を感じながら。
「何だったんだ? ……ってかあの男、どっかで見た事あるような気がするんだけどな」
そうぼやきながら善継は店へと戻るのだった。




