51:職業・ヒーロー
翌日の二葉製薬本社、昼休みの時間に社内食堂で善継は一人で蕎麦をすすっていた。先日の事件の報告を終えて一息ついていた所だ。
彼の前にラーメンをドンと置く人影が一つ。真理だ。
「善継、会社に来ていたんだ」
「ああ。報告にな」
「そうか。……なあ善継、あの二人はどうなったんだ?」
あの二人、春人とアマニダの事だ。
「堤春人は病院に収容された。おそらく一生寝たきり、精霊と人体の関係について研究資料として監禁される」
「……えげつないね。奴隷の獣人は?」
「彼女は政府に連れてかれた。一応生活できるよう教育される。けどなぁ」
箸を置いて天井を見上げる。蛍光灯の並ぶ明るい天井。これは異世界には存在しない光景だ。そう、アマニダにとっても。
「勇者の庇護下から外れた異世界人が、こっちに適応するのは困難だろう。まあ女性はある程度生きていけてるって話は聞いた事がある」
「男性より女性の方が適応しているのか?」
「いや、水商売で食い繋いでいるらしい。勇者が手元に置きたくなるような人々だ。見た目だけは芸能人を超えるから客には困らない。中には金持ちの旦那を引っ掛けたって噂もある」
「成る程ね。確かに学が無いと仕事にもありつけない。そんな中唯一の武器である美貌で食っていくか。ある意味異世界人の方も被害者なんだよな」
「……そうだな」
勇者と違い異世界人は故郷に帰る手段が無い。アマニダのように奴隷として拒否権の無い者や、力付くで拐われた者もいるだろう。
帰りたいと思っても帰れない。地球から異世界に行くには勇者召還しか手段が無いからだ。
「なあ真理。俺は間違っていたか?」
「間違い?」
「ああ。俺は堤を殺すべきだったんだろうか」
「……難しいな」
真理はスープを一口飲む。
「非人道的と言う者もいれば、ざまぁみろと思う者もいる。どっちにしろ、あたしは少しだけ感謝している」
「感謝?」
「そうだ。おかげで由紀が手を汚さずにすんだ」
そう、本来なら勇者である由紀の仕事だ。だが今回は彼女は手を出していない。どんな理由であれ、人を傷つけ命を奪う。それを罪と言うのは自然だ。姉である真理が感謝をするのも納得がいく。
「……俺は自分を正義の味方だと思っていない。魔物だって勇者がいなけりゃ地球には来なかった。異世界の自然、そこで人間と自然な生存競争をしていただけになる」
「そうだな。っと善継、電話だ」
善継のスマホが鳴っている。画面には本部と映されている。どうやら魔物が出たようだ。
「はい……了解。すぐに対処します」
電話を切りため息を溢す。
「魔物か?」
「ああ。おそらくシュラークの残党だろう。速攻で駆除しよう」
「待った」
立ち上がろうとした善継を真理が止める。
「あのさ。前回と連続ででかい事件だったから善継も出てたけど、あんたの本来の仕事は違うだろ。会社としても魔法少女が活躍した方がウケるんだからさ」
「……そうだった。俺は前線から基本的には離れるんだったな。司令官だし」
「なら言う事は?」
そう言いながら彼女は笑う。そして周りの社員達も善継に期待の視線を送る。
彼が言う言葉は一つ。自分がやるんじゃない。背中を押すのだ。
「魔法少女戦隊オルタナティブ、出動せよ!」
「了解!」
ここまで読んでいただき、実にありがとうございます。
本作は私にとって初めてのブクマ四桁到達と非常に嬉しい結果となりました。
本来ならここで完結し公募へと考えておりましたが、ここまで約十一万字を一章とし継続する事にしました。
その結果、実は後半を本来のプロットから一部変更し投稿しておりました。
数日、今後のプロット調整により投稿をお休みしますが来週には再開の予定です。
これからも善継と一緒にイカレタ世界をお楽しみください。
皆様これからもよろしくお願いいたします。
村田のりひで




