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29:アマニダ

 アマニダの様子がおかしい。笑いながらテーブルに座っているのだが、何処か憑き物が落ちたように見える。その笑みも取り繕ったものとは違う温かなものだ。


「ホント困っちゃうよね~。あいつ下半身で考えるような奴だからさ。毎晩毎晩喜んでる演技するこっちの身にもなってってカンジ。でたらめに腰振ってりゃいいってもんじゃないの、いつになったらわかるのやら」


 そう呆れたような言い方に違和感を感じた。どう捉えても春人に対して良い感情を抱いていないような口振りだ。流石に善継も困惑している。


「なあ…………お嬢ちゃん、あんた勇者の奴隷なんだろ? 随分と嫌っているように聞こえるけど」


「ん? 別に嫌ってはいないよ。そりゃあ不満はあるけど、故郷を取り戻してくれたのは事実だし」


「そうか……」


 先程の話は嘘ではないようだ。だがそれと同時に複雑な気持ちにもなる。

 獣人の土地を取り戻すのは善行だろう。ただそこにあった国と人々は? 滅ぼしたのは穏やかじゃない。どんな理由であれ、多くの命を奪った可能性のある春人を善人だと思えない。


「由紀、奴隷ってあんなもんなのか?」


「私が召還された国でもいたけど、少なかったから直接見た事は無いんだよね。でも首輪で従わせてるはずだから、反逆はできないはず」


「うん、そうだね。確かに私はご主人様を攻撃できない」


 テーブルから飛び降り由紀の方に歩み寄る。


「でもね、文句や悪口を()()()()()()()()。今回だって『誘え』だけだ。強制させろとは命令されてないもん」


「なんだか言葉遊びのようですね。トンチと言うか……」


 玄徳の言う通りだ。聞かれてなかったから答えない、命令されてないからやらない。

 だからこそはっきりさせたかった。彼女の立ち位置を。


「でだ。お嬢ちゃん、あんたは俺達の敵か?」


「ご主人様次第ね。ああでも、禁止されてない事は私の気分でいくらでも話すよ」


 さあどうする? そんな表情で笑っていた。ならばと真理は我先に質問する。


「質問しよう。あんたは堤春人をどう思っている? こっちに連れて来られて不満は無いのか?」


「無いと言ったら嘘になるかな。向こうに行く手段は勇者召還だけだし、もう故郷には帰れない。だけどさっきも言ったように、獣人の土地を取り戻してくれた恩もある。どっちにしろ奴隷だから断れないけど」


「俺も聞こう。昨日の魔人、何故殺した?」


 するとアマニダは呆れたようにため息をつく。


「あれね。本当困っちゃうよ。獣人から見ても魔人や魔王は敵なのにさ。で、理由はあのシノビの子の言ってた通り、八つ当たりだよ。お金持ちの令嬢にカッコつけられなかったからね」


「やはりか。ガキじゃないか」


 善継が肩を落とす。そのあまりにも身勝手な所行に呆れる程だ。

 玄徳もため息をつき真理はおもいっきり顔をしかめている。


「ったく、あたしは頭が痛いよ。どうして勇者はこうも頭のおかしい奴しかいないんだか」


「当たり前じゃん。頭のおかしい奴だから勇者として召還するんだから」


 時間が止まる。

 想像もしなかった一言に誰もが驚愕し唖然としていた。


「…………どういう事? 私も……召還された理由って」


「由紀もおかしいって事よ」


 笑うアマニダに真理は掴みかかろうとするが、玄徳が制止する。そして由紀を一瞥する。


「納得したよ。実は私は由紀が召還されてから調べてたんだ、他の勇者の事を。そして勇者にはいくつかのパターンに分かれ共通点があった」


「共通点?」


 玄徳が頷く。


「ああ。まずは由紀のように何か強く依存するものがある者。由紀の場合は家族だ。他には恋人、財産そういったものにね。だがそのタイプは一割程度だ。殆どは虐められていた者だったり、あとはブラック企業勤めとか……」


 善継も玄徳の言う事を察した。どんな人物が召還されるのか、その理由に。


「今の人生に不満を持つ者ってとこですか?」


「ええ。正直根拠は無かったが、彼女の口振りで確信した。勇者として召還される者は向こうが選んでいる、それも鬱憤の貯まっている者をだ。だがおそらく全員ではない。所謂まともな勇者も存在しているからね」


「正解。偉い人なだけあって頭良いね」


 善継の中でもパズルが組み合うような、歯車が噛み合うような感覚があった。何故勇者はあんなにも身勝手な者ばかりなのか。


「なるほど。妹さんみたいな勇者なら家族の所に帰してほしければ……って感じで言う事を聞かせる。だろ?」


「はい。確かに私を召還した王様はそう言ってました。まぁ、魔物の移動にくっついて勝手に帰ったんですけど」


「そんで他には……まぁ虐められてたり人生に嫌気がある奴なら力と財産、それと女を餌にコントロールするってとこか。こっちとやってる事は変わらないな」


 異世界人のやり方を非難する権利は地球にも無い。事実、勇者に仕事をさせる為に金、物、人間を餌にしているのが現状だからだ。


「理解が早くて嬉しいね。そういう単純な人間を狙って召還してるのよ。それにこっちの方が色々便利だからね。制御しきれなくなったり、餌が無くなれば追い出したり自分からチキューに帰るもの。勇者って実際の所使い捨ての武器だから。まあ中には召還した国と仲良くして永住しているのもいるけど、そんなの少数だろうね」


 そんな時どこからか音楽が聞こえた。


「っと。もう少しお話ししたいけど時間切れだ。ご主人様からお呼びだしだね」


 アマニダがスマホを取り出した。どうやら春人から電話が着ているらしい。


「じゃあね。あともう一人の魔法少女にもよろしく」


 そう言い残し立ち去った。残された四人には重苦しい空気がのしかかる。

 勇者として呼ばれる理由。それはあまりにもめちゃくちゃなものだった。そしてそれは由紀にも当てはまるものだ。

 少なからず由紀もショックを受けている。自分の家族に対する想いを利用されていた事に。

 

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