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24:新しけりゃ良いってもんじゃない

『魔法少女ユッキー! レディーゴー!』


『魔法少女アミ! 出陣!』


 猫耳のベレー帽、花の日本甲冑。炎と氷の刀、薄紫の薙刀。二人の魔法少女が立ちはだかり、その間に真理が割り込む。

 華やかな衣装に身を包む三人の乙女。しかし彼女達から感じるのは敵意と闘志だ。ヒーローとしての信念が三人を前に進める。

 その中心にいる真理は二人に目配せをし、怪人に銃口を向けた。真っ直ぐと向けられた鉄の穴と怪人の視線が交差する。


「さぁてと、これで三対一。今すぐ勇者ドラッグを捨てて投降すれば刑期も短くなるぞ、オッサン」


「馬鹿にするな。俺は強い。俺は……強いいんだぁぁぁぁぁぁ!」


 由紀の一撃が効いてなかった事に気を大きくしたのだろう。指先だけでなく腕全体から氷柱を生やし身体を回転させる。独楽のように回り、遠心力を利用し氷柱を一斉に発射した。

 視界を覆う氷の刺。普通なら身の危険を感じ逃げ出すだろう。しかし真理は一歩も動かない、動く必要が無い。


「くだらないモノマネね」


 氷よりも冷たい声。由紀が刀を振るうと炎の壁が三人の前に広がる。氷柱は触れた瞬間に蒸発。真理達には届かなかった。

 炎の壁は消え、先頭に立つ由紀が冷たく目を細める。


「本当最悪。私の力も貰い物だけどさ、その海賊コピーとか見てて嫌になるなぁ」


 彼女からすれば自分の偽物を見ているような気分だ。自分の血を使い作られた薬で暴れる。責任は感じずとも嫌悪感はある。

 善継としても頼もしいが相手が悪い。人間が敵なのだ。


「やる気があるのは頼もしいが、やりすぎるなよ。ほら、あんたは早く逃げる」


 芹沢を立たせ逃げるよう促す。焦りでおぼつかない足で逃げる彼女を横目に、善継もゆっくりと後退る。今の善継に戦う力は無い。


「アディクショナーは人間だ。ユッキーは防御に回れ。マリリンはアンプルの破壊、アミはサポートだ。ベルトも新しい。性能も高くなっているだろうからきをつけろよ」


「わかった」


「了解です」


 返事と共に由紀と真理は散開。明美は薙刀を床に付き立てる。


「まずは足止め!」


 木の根が床を壊し蛇のように蠢く。いや、一本の鞭だ。

 しかし男は両手に氷の爪を伸ばし腕を交差させ薙ぎ払う。軽々と切り裂かれる根、飛び散る木片、それでも明美の顔に余裕の色は失せていない。


「隙ありってな」


 大振りには隙が生まれる。真理の両手に握られた拳銃ががら空きの胴体を捉えた。

 黒い粘液の弾丸が氷のコートに直撃しひびを入れる。一歩よろけ後退った。だが。


「なーんだそりゃ。攻撃のつもりかぁ? なぁ!」


「!」


 防御もかなぐり捨て突っ込んでくる。迎撃するように何度も発砲するも全く通用しない。ああ、何かで見た事があるな。そうだ、スーパーヴィランに立ち向かい銃を向けるも無力な警察だ。

 そんな事が頭を過るも、棒立ちなんてしてられない。翼を広げ後ろに跳ぶと、由紀が間に割り込む。


「っ……」


 振り下ろされた爪を受け止める。体格差は歴然。重くのし掛かるも由紀は耐える。


「調子に、乗るなぁ!」


 力任せに押し退け、バランスを崩した所に右足に炎をまとわせた蹴りが鳩尾に直撃する。

 氷の外皮に熱が伝い溶けていくのを感じる。足が数ミリ沈み突き飛ばす。溶けた水が蒸気となって散り、転がりながら離れた……が。

 爪を突き立て踏ん張る。十本の爪跡を残し、逆さまになった笑顔の仮面が不気味に見つめている。


「アミ、動きを止めろ! 単純な力技は通用しない」


「了解です!」


『チャージ!』


 善継の指示に明美はギアを叩く。そして薙刀を頭上で回転させ、勢いよく床に刺す。小さな亀裂が広がり膨れ、人間よりも一回り大きな花を咲かせた。


『必殺天誅!』


「固まりなさい!」


 引き抜いた薙刀を突き付けると、花はそれを照準にし琥珀色の粘液、大量の蜜を吐き出した。


「!」


『Anger strike』


 対抗するようにバルブを回し、コートを広げ肥えた腹を見せつける。真横に腹は裂け、巨大なくちとなると冷気を一気に吹き出す。

 蜜と冷気。二つがぶつかり合うと蜜が氷に包まれていく。

 更に蜜を伝い花に、そして茎へと凍り付き花は氷像へと変貌してしまった。


「うっそ……」


 流石に押し負けるとは思っていなかったのだろう。明美も唖然としてしまう。

 今までアディクショナーとは対等以上の力関係だった。だが今はどうだろう。善継の予想通り性能が段違いだ。


「ユッキー! 隙を晒すな!」


「っ! はい!」


 呆然としている時間は無い。由紀が炎の刀を両手で握り凪払う。炎は丸く球体になり、猫の頭の形に変形。真っ赤な牙を並べ大口開けて怪人の頭に噛み付く。

 次の瞬間には爆発し、熱風が周囲を満たした。


「痛くない痛くない痛くない。あの女の言う通りだ。新型のベルトは最強だぁ」


 角は溶けているもののすぐに再生。溶けた外皮は足元に水溜まりを作るも、再び氷へと変化していく。


「なぁ由紀。今の加減した?」


「うん。死なない程度には」


「けど効いていませんよね。もっと威力上げられません?」


「殺さないさじ加減が難しいんだから。相手が強ければ強い程……ね」


 想定外の事態に三人の頬に冷や汗が伝う。強い、もっと力を出さなければ。しかし命を奪ってはいけない。そんな制約に追い詰められていく。

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