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24:ヒーローを超えろ

「ほう?」


 再び立ち上がった善継にスウェンも楽しそうに笑う。期待や楽しんでいるように頬を吊り上げた。

 剣から発せられる風も止まり、杖のように突いて善継の方を振り向く。


「メタルスパイダー、まだまだ私を楽しませてくれるのかな? そんなボロボロの貴様が」


「楽しませやしないよ。俺は自分達の国を守る、お前は侵略者。理由がどうであれ俺達は相入れない存在だ」


「…………そうだな。貴様ら人間のような下等生物と、我ら魔人が言葉を交わしているだけで光栄な事だ。ゴミ相手に遊び過ぎたかもしれんな」


 善継はため息をつく。


「結局そこか」


『セット!』


 メダルをギアに入れ表面を叩く。するとワイヤーで編まれた巨大な蜘蛛のぬいぐるみが飛び出す。


「何っ!?」


 飛び出した蜘蛛は前脚を拳のように振るい牽制。剣と打ち合いながら真理の方から離していく。


「真理、使いたくなかったが緊急時だ。……姉さんも許してくれるかな?」


「たぶんな」


 善継がふと微笑む。深呼吸をしギアを握る手に力が入る。


「……トランス」


『ドレスアップ!』


 そして蜘蛛は善継に飛び付くと彼を抱きしめる。ワイヤーがほどけ全身を包み圧縮。身体がちいさく縮んでいき……弾けた。


『魔法少女みうみう! 見参!』


 そこに立っていたのは銀色のくノ一装束の少女。パッと見は小学生くらいだ。

 彼女は目をゆっくりと開く。髪飾りのせいか頭に蜘蛛を乗っけたような幼い風貌の少女が魔人と対峙した。

 流石に彼も驚いていた。何せ成人男性がいきなり少女に変貌したのだ。誰だって驚く。


「む……娘? メタルスパイダー、何だその姿は!」


「俺にもよくわからん。ただ今の俺は……」


 声も少女そのもの。元々の低い声は消えているが善継自身は、その中身は変わらない。


「魔法少女みうみう。さっきまでとは違うぞ、覚悟しな!」


 叫び拳を構える。身体の奥底から力が沸き上がる。

 ギアの性能がこれ程の違いを出すのか。出すのだ。先程も善継は突破できなかった風の壁を真理は抜いた。単純な力は魔法少女の方が上なのである。

 駆け出したスピードも今までとは違う。自分が風になったようだ。


「なっ!!」


 急いで剣を振るうも切っ先は善継を掠めるだけ。こんな小さい敵を相手にした事が無いのか、それとも善継のスピードが想定を上回ったのかはわからない。

 善継は一気に懐に潜り拳を溝尾に叩き込む。


「せぃ!」


 鎧に阻まれたが衝撃は殺しきれていない。力がスウェンの身体を突飛ばした。


「ぐっ!?」


 大きく吹っ飛ばされるも持ちこたえる。その勢いで踵が床を抉り二本の線が引かれた。

 善継の拳、右手の蜘蛛型の手甲からワイヤーが伸び、銀色のグローブが編まれている。


「まだだ」


「潜らせるか!」


 小柄な体型だ。懐に入られれば長い剣も魔法も使えない。二人はそれをよく解っている。

 剣を振り風の刃を放つ。それを二重にした蜘蛛の巣型の盾で防ぎながら善継は走った。


「頑丈になってはいるが……見切った!」


 剣の間合いは把握している。善継のスピードと体型で見誤ったが、二度は彼に無い。

 盾ごと切り裂こうと剣に風を纏い一閃する。

 僅かな抵抗感。それでも切れ味の上昇した剣は盾を一撃で切り裂いた。


「……ちぃ」


 剣から伝う感触。それは金属を切った感触のみ。肉を、人体を切った感触はなかった。

 盾が崩れた先にも善継の姿は無い。


「何処……っ!」


 日の光を遮る影。上を向けば小さな少女がスウェンを飛び越える。


「ちょこまかと!」


「するさ。この身体ならな」


 ワイヤーを広げ背中から何かを編む。それは脚だ。八本の蜘蛛の脚が背中から生えている。先端は刃物のように鋭くなり、一斉にスウェンへと迫る。


「くらえ!」


「ぬぅ」


 脚は心臓へと一点に収束されていた。だからだろう、剣で一度に受け止められてしまった。

 お互い押し合いながら一進一退。睨みながら拮抗している。


「何故だ? 何故こんな小娘の身体にこんな力が?」


「悪いが身体能力は変わらないんだ。ついでに精霊の力で増幅している……んだよ!」


 刃の先端をほどくと同時に剣にワイヤーを絡めとる。そして爪先にナイフを作ると蹴り上げ指を軽く切った。

 ほんの小さな傷。しかしその小さな傷に手が緩み剣を奪った。


「しまっ……」


「ふっ!」


 脚を解きワイヤーを四方八方に広げる。そして拳を握り腕を引いた。

 すると散らばったワイヤーが一斉にスウェンを囲み、彼を一瞬で簀巻きにしてしまった。


「甘い!」


 それでも流石は魔人。瞳が緑色の光を放つと身体から突風を発生させワイヤーを強引に吹き飛ばした。


「……………っ。まだそんな力が」


「嘗めるな人間。いくら精霊の力を持とうと、所詮は勇者の紛い物。力の劣る貴様に負けはせん!」


「そうか。だが……」


 ギアの表面を叩く。


『チャージ!』


 心臓が跳ねる。精霊の力、魔力がダイレクトに血管を走るような感触だ。

 力が溢れる。今まで以上の力が。


「俺も負ける訳にはいかない。大切な仲間がくれた力を無駄にはしない」


「善継……」


「それに姉さんの顔に泥を塗る訳にもな。お前らみたいな特定外来生物はお断りなんだよ!」


「何を訳のわからん事を!」


 善継とスウェンが同時に駆け出す。善継の右手、蜘蛛型の手甲の先からワイヤーが噴出し、二本の長い牙が形成される。対するスウェンの拳にも風が収束される。


「はっ!」


「おぉぉぉ!」


 お互いが拳を振るった瞬間、一瞬スウェンの拳が止まる。


「!」


 細いワイヤーだ。極細の金属の糸が絡まり腕を止めていた。


『必殺撃滅!』


「終わりだ魔人、スウェン!」


 二本の牙を振り上げる。鎧の隙間を縫うように、肘から彼の腕を切り落とした。

 吹き出る青い血液。それを浴びながら続けて牙を脇腹に突き刺した。


「カハっ」


 鎧ごと貫く牙。引き抜くと同時に血を撒き散らしながらフラフラと後退り、魔人の騎士は倒れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ワクワクドキドキ(≧▽≦) [一言] この章をありがとう
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