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23:魔の人

 剣を握り構える魔人、スウェン。彼の立ち振舞いには隙が全く見られなかった。

 オークは武器をただ握るだけ。子供のチャンバラのようなもの。しかし目の前に立つ紫色の魔人は違う。


(流石は知性のある魔物。武術に通じているか)


 どう攻めるか悩ましい。あと二歩進めば剣の範囲、今の距離でさえ先程の衝撃波、おそらく風魔法の射程距離だ。

 どちらが先に動くか。お互いが腹の探り合いをしている。


「慎重なのか、それとも臆病者なのかなメタルスパイダー。来ないのなら……!」


 スウェンが踏み出す。速く凄まじい跳躍力。生身の人間には出せない身体能力だ。

 それでも善継には反応できる速度。ヒーローとして鍛えた彼には速くとも動きは見えている。


「っ!」


 後ろに跳びながら指を動かす。一瞬遅れ、善継が立っていた場所、そして彼の人差し指の間に張られたワイヤーが跳ねる。

 ワイヤートラップだ。金属の糸が下からスウェンに迫る。


 魔人は強い。しかし体格が人間と同等か一回り大柄程度である為、耐久力はそれ程ではない。他の人型魔物より知能が高く武術や魔法の技術も高い。

 プライドが高く地球に逃げてこないので交戦データも少ない。しかし逃げるのは悪手だ。こいつは地球侵攻の先発隊。捕らえ情報を引き出す必要がある。

 生け捕りにするのは殺す事よりも難しい。だがやるしかなかった。


「甘い!」


 ワイヤーが触れるよりも先に緑色の剣で凪ぎ払う。軽々と切り裂かれるワイヤーが風に飛んでいった。

 驚いている時間は無い。そのまま真上から振り下ろされる剣をワイヤーで編んだマフラーで受け止める。


「ぐっ。このっ!」


 重い一撃だ。どうにか防いだものの、ほんの少し刃を引けば切り裂かれてしまうだろう。

 受け止めた一瞬に蹴る。黒い鎧にダメージは阻まれてしまったが、善継の蹴りに一歩後退る。


「そこっ!」


 その隙を逃しはしない。右手にワイヤーを絡ませ拳を装甲で覆う。文字通り鉄拳となった拳を顔面に叩き込んだ。

 鼻が潰れる鈍い感触が伝わる。


(どうだ?)


 拳は顔面に直撃している。並の人間なら卒倒しているだろう。

 しかしスウェンの爬虫類のような目は善継を見ていた。


「ちぃ。化け物が!」


 すぐさまアッパーを顎に直撃させる。

 一瞬で脳震盪を起こしかねない衝撃。顎を打ち上げ首と頭を揺らす拳。


「ふむ。確かに人間よりかは力があるな。だが……下らん」


 どうにもならなかった。軽く青い鼻血を流すだけでかすり傷にしかならないようだ。


「殺意が感じられん。貴様、私を捕らえるつもりのようだな」


「!」


 悟られていた。


「随分と嘗められたものだ……なっ!」


 風が巻き起こる。スウェンを中心に竜巻が発生したのだ。

 善継が視認した瞬間に全身を衝撃が襲う。いつの間にか彼の身体は打ち上げられ、床へと叩き付けられる。


「うがっ……」


 コスチュームのあちこちに亀裂が走り、髪のような脚も千切れる。

 身体が痛い。飛びかけた意識を繋ぎ止め、急いで立ち上がる。しかしダメージのせいか足元は少しふらついていた。


「くそっ。一人じゃきつかったか……」


 甘く見ていた。噂は所詮噂。実際に対峙してみなければわからない事もある。

 拳は直撃している。しかし人間とは段違いの耐久性だ。それに本気ではないのにこのダメージ。攻撃力も想像以上だった。


「見くびられたものだな。殺す気で来い」


「……そうみたいだな。捕まえるんじゃなくて、半殺しにして引きずるのが正解みたいだな」


 指差からワイヤーを垂らす。両手から蜘蛛の巣型のカッターを編み投げつけた。その数十。指一本一本から作り出した刃がブーメランのようにスウェンを取り囲む。

 首、腕、足、それぞれを狙うも剣の一振で一掃される。


「まだだ」


 続けてナイフを二本作成。その峰はノコギリのようにギザギザになっている。


「来い!」


 振り下ろされる剣。それをナイフの峰に引っ掛け受け止める。

 剣を奪い取ろうと捻るも手放さない。逆に剣から風を発生させ引っ掛けたナイフを破壊する。


「どうした、その程度で私に挑むのか!」


 開いた手を向ける。善継が横に跳ぶのと同時に風の塊が通りすぎた。

 続けて放たれる風の弾丸を蜘蛛の巣型の盾で防ぎつつ後退。距離を離し風の弾丸に盾を投げ相殺し跳躍する。


「この程度かどうか、見せてやらぁ!」


『Finish!』


 レバーを回す。右足にワイヤーを纏い刃を形成。一気に蹴り抜いた。


「うおぉぉぉ!」


 飛び蹴りなんてもんじゃない、善継自身が一本の矢となりスウェンに迫る。

 切っ先が当たる直前、スウェンが手を差し出すと風の壁が発生した。善継の蹴りが風の塊に衝突。お互の力が押し合う。


「ふん!」


 手を突き出し押し返す。片手で軽々とだ。

 突風が善継の身体を吹き飛ばし、炸裂した衝撃波にマスクが砕ける。

 力の無い人形のように投げ捨てられる善継。 割れたマスクから見える左目から戦意は失っていない。しかし身体に残ったダメージに膝をついたままだ。


「…………しくじったか」


 想像以上の力だ。今までの記録に残ってる魔人とは違う。明らかに上位の魔人だ。


「ふむ。糸による武具の生成、その技能は称賛しよう。しかし地力が違うのだ。貴様らチキューの言葉で言うなら…………レベル差、と言えば伝わるか? どれだけ足掻こうと、人間ごときでは勝てん」


「…………」


 善継は懐に手を伸ばす。今よりも強い力、クロスギアならどうにかなるかもしれない。しかし躊躇いが彼の手を止める。

 姉の顔が頭に浮かぶ。彼女の姿でいる事が嫌だった。死者の姿を奪う、それが善継にとっては悪なのだ。

 そんな善継にスウェンは剣を突き付ける。


「だがその技を棄てるのは惜しい。メタルスパイダー、貴様の亡骸はアンデッドに改造しシュラーク様の為に使ってやろう」


「ふざけるな。悪いが俺は人間だ、ヒーローだ。この地球を守るのが……俺の仕事だ!」


 ふらつきながらも善継は立つ。拳を握り構えながら。

 そんな彼を見捨てる者はいなかった。


「そうだ、それでこそ善継だ!」


『チャージ!』


 空から聞こえる若い女性の声。二人が見上げると漆黒の翼を広げた真理がいた。

 彼女の手には銃を組み合わせた武器、蝙蝠の形をした弓が握られている。


「これでもくらいな!」


『必殺デストロイ!』


 弓をブーメランのように投げた。回転しながら弧を描き、スウェンの方へと迫る。


「次は小娘か。愚かな……」


 先程と同じように風の壁を張る。しかし弓は一瞬の抵抗の後、風の壁を切り裂いた。


「なっ!?」


 流石に驚き剣で防ぐ。ガリガリと高速回転する弓が剣を削っていくが、鍔から刀身を包むように突風が巻き起こり、巨大な竜巻の剣と化した。


「調子にのるな、人間が!」


 竜巻の剣は弓を打ち返し真理を飲み込む。

 咄嗟に真理も翼を盾のように構えるも、突風が彼女のコスチュームをズタズタにした。


「真理!」


 黒い粘液を撒き散らしながら墜落する真理。痛みに悶えるように上半身を起こす。


「うう……」


「邪魔が入ったが、ここまでだ。まとめて死ぬがいい」


 風が周囲を走る。空間が緑色の切っ先へと集まっていく。

 この状況では二人とも危険だ。今の善継の力ではどうにもならない。彼は震えながらも手がクロスギアに触れる。

 このままでは真理の命もない。その事が彼の心を揺さぶる。


(大丈夫。躊躇わないで)


「!」


 声が聞こえた。幻聴かもしれない。だがそれが彼の背を押した。

 クロスギアを取り、メダルをスピリットギアから外した。


「まだ……終わっちゃいない!」

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[良い点] この章をありがとう (≧▽≦)(≧▽≦) [一言] 変身!スレイヤーモード!
[良い点] 面白い [気になる点] 姉を殺した勇者が生きてるパターンな気がする状態で変身か…… クソッ胃がムカムカする…
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