19:魔法少女参上(姉)
空を飛び回るストリートファッションのようなコスチュームの男性ヒーローが一人。身の丈はあるサーフボードを駆り、白い骨の鳥の群に挑んでいた。
風を波のように乗り越しながらサーフボードでボーンバードを轢き潰していく。
「数が多いっての! 飛べるヒーローは少ないんだから、せめて援護射撃できるやつが来てくれよ」
ぼやいていても数は減らない。数えるのも面倒になる量の魔物が彼に襲い掛かる。
戦いから逃げてはならない。逃げればこいつらは他のヒーローや市民を襲うだろう。いくら単体では雑魚魔物でも一般人からすれば脅威だし、対空戦力の無いヒーローからすれば厄介極まる。
ここで仕止めなければ。そんな責任感で彼は戦っていた。
「ちぃ!」
舌打ちだけではどうにもならない。背後からボーンバードが彼の頭を啄もうとした。
その瞬間……
「!?」
ボーンバードが爆ぜた。何処からともなく飛んできた黒い液体が直撃、背骨に当たった瞬間に弾けて四散し、内側からボーンバードを破壊した。
「何……だ?」
次々とボーンバードが砕けていく。彼が上を向くと少女が黒い翼を広げていた。
さながら蝙蝠を模した魔女。両手に握られた拳銃を向け、漆黒の魔法少女が魔物の大軍を見下ろしていた。
「魔法少女戦隊オルタナティブ所属…………魔法少女マリリンです。援軍に来ました」
一瞬名乗るを恥ずかしそうに躊躇する。しかし恥ずかしがっている場合じゃない。真理は気合いを入れ直し真剣な顔で挨拶をした。
「ああ、噂の勇者との合同チームか。一人って事は勇者の子はあっちか」
「はい。一応あたしはヒーローに分類されるので。流石にあのロックドラゴンと戦う程力はありません」
「おっし。なら俺達は……こいつらだな」
空を真っ白に変貌させる骨の魔物達。この量をたった二人のヒーローで対処するのは困難だ。
「普通なら勇者か、範囲攻撃が可能なヒーローがやる仕事だ。魔法少女ちゃんは……」
「問題無いな」
ニヤリと真理は笑う。楽しそうに、ワクワクしているかのように銃をボーンバード達に向けた。
彼女の口調は先程の礼儀正しい落ち着いたものとは違う。いつもの周囲を見下したかのような尊大な口調だ。
「バイオメダルとクロスギアの性能、とくと見せてやろう。勇者には劣るがヒーローとしては極上品であると教えてやる」
銃の背を重ねると翼が液状化。銃を飲み込み翼を広げた蝙蝠の形をした弓へと変形した。
「悪いがあたしはまだまだ未熟者だ。チマチマとやってもキリがない。なら性能と火力でゴリ押しさせてもらう!」
ギアの表面を叩く。
『チャージ!』
メダルの力を一時的に増幅する必殺技。勿論クロスギアにも搭載されている。
真理は左手で弓を構え、右手から黒い粘液が溢れ矢の形になる。
「っ! 吹っ飛べぇ!!!」
『必殺デストロイ!!!』
黒い矢を放つ。空気を風を穿ち矢はボーンバードの群の中に吸い込まれていった。
その中の一羽に矢が突き刺さる。骨が砕ける音が小さく響く。
次の瞬間、刺さった矢はボーンバードを包み黒い球体となった瞬間に爆発。無数の刺となり周囲に撒き散らされた。
一本一本がボーンバードを容易く破壊する漆黒の刺。ただの骨でしかない小さな魔物達は次々と砕かれていく。頭蓋骨に穴が空き、翼は捥げ、肋骨が粉砕されていく。
一撃で全滅とはいかなかったものの、半数以上を今の一撃で消滅させた。
ボーンバード達は分が悪いと判断したのだろう。慌てたように逃げていく。
「……すげぇ」
「いや、まだまだだ。勇者なら全滅させた上に地上も巻き込んでいた。それにもう少し頑丈な魔物だと負傷させるのが精一杯だ。一点に集中させても……上級魔物では倒せない」
少しだけ残念そうに弓を撫でると粘液に変換され、元の二丁拳銃に変わる。
「さてと。善つ……メタルスパイダー、南区のボーンバードは蹴散らした。次はどうすれば良い?」
帽子に仕込まれた通信機を操作する。すると直ぐに善継と繋がった。
『確認した。西の飲み屋街でゴブリン、オークと交戦中のヒーローがボーンバードに襲われている。挟み撃ちにされると危険だ、援護に向かってくれ』
「了解」
通信を切り一息。男性ヒーローの方を向く。
「じゃああたしは次のポイントに行くんで。お互い最善を尽くしましょ」
大きな黒い翼を広げる。皮膜からは黒い粘液が滴り、羽ばたきと同時に周囲に撒き散らしていく。
日の光と相反するような巨大な蝙蝠が飛び立っていく。己の使命を、ヒーロー……魔法少女としての責務を果たす為に。




