ちょっと未来のプロローグ
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ちょっと未来のプロローグ
「首を垂れ平服せよ、そして忠義を示し狂信せよ」
「我らが王、その玉座の前であるぞ」
巨大な鋼鉄の扉には国獣が掘られ抜けた先には赤と黒。外からの光が幻想的に照らし出しある一か所を照らしだしていた。巨大な扉から続く真っ赤な絨毯の途切れるその先には金や宝石、匠の技が素人目にも分かるぐらいに彩られ複雑な装飾の施された王座が鎮座しておりその両端にはこれまた芸術的な装飾が施されている槍を持った少女達二人。レオタードのような肌着を隠そうともしない服に加え、軽装と言うにはあまりにも少なすぎる面積の鎧兜。普通ならばそのような鎧身に着けない方がよいと判断できるほどの軽装な鎧には言葉では言い表せない力強い何かを肌身に感じ、皆は普段立つことも無い鳥肌が立つほどの恐怖を感じる。ブロンドの髪を靡かせその目に映るのは王座へと頭を下げ、平服している配下達。熱意もなく感情も無く、ただ冷めた冷酷とまで取れる青い瞳で両者は声を張った。
「そのままにして聞け、勇士達」
「そのままにして聞け、配下達」
その声により何かが始まると思い跪く配下達は自然と息を飲む。勇士たちは玉座の奥よりヒシヒシと肌を刺すような恐ろしいプレッシャーを感じ深く、深く頭を下げ失礼の無いようにと心がける。それぞれに違う理由にて同じような反応を取る両者だが結論的に考えれば同じような事を考えていた。少しでも楚々夫があるようならば自身の命は無いと。王座の置かれるここ、玉座の間にて自身の命など埃。いや、塵一つほどの価値の無い物だと知っているからだ。
そんな重苦しい雰囲気の中でも10名ほど全く違う反応を示す。ある者は緊張のあまり体を力ませ強張り、ある者はようやくかと息を吐き、そしてあるものはその状態で鼾をかいて寝て、その隣に居る者は感動のあまり涙を流す。笑顔を絶やさずに首に下げる首飾りを持つ者もいれば頭を欠き、跪きながらも細々と文字の書かれた書類を読み進め不気味な笑いを溢す者もいる。そんな中でも身動き一つしていない者と鎧姿の騎士もいるので彼らは普通ではないのだろう。
しかしそんな彼らでも自分が行っている事を辞め、最終的に王座へと意識を向ける。
一歩一歩、軽いが何故か重たく聞こえる足音が聞こえそれがどんどんと大きくなる。それに合わせてか周りに控えていた音楽隊がそれぞれの楽器を演奏する為息を整え、呼吸を合わせる。
「──―皆、待たせたな」
その声に合わせ盛大で優雅な音楽が流れ始めるが跪いている者達にとってそれはBGMではなく、雑音とですら認識する事は不可能だろう。だって──―王の御前なのだから。
「跪き首を垂れよ配下達、狂信し敬意を示せ勇士達」
「王の御前である、王のご登場である」
その者は王であった。気取らぬ質素であるが十分に資金がかけられていると分かるほど上質な素材で作られた生地の服装に必要最低限の大きさであるものの匠の技がこれでもかと施された冠、そしてその身に纏うのは国の象徴の書かれた赤いマント。彼の歩み一歩一歩が重く配下の上へと重力が増したかのように伸し掛かり自分達が仕える王の存在を認識させられる。その王は黄色いドレスを身に纏った美しい女性の手に引かれ玉座へと腰掛けた。
王はそのまま我らが全員集まっているのを確認すると安心したような表情をピクリと変えた。しかしその時ある、配下の者の1人が口を開いた。王へと意見具申するためだ。
「我らが王よ、何故我らを王座の間へと集めならせられたのかのご説明を願いたく存じます」
このような空気の中、王よりも先に意見具申するとは何事か。とその場の配下達の心境は一致していただろう。勇士達の内にも同じ考えの者はいたようで顔を赤くし、身の丈よりも長い刀の柄を手にする者が現れる。同時に王の横に控えていた美しきも冷たき女性が槍を向け、罵声を浴びせようとしたが王は手をやりそれを辞めさせる。王の命令に逆らう訳にもいかず出した矛を引っ込めると勇士の中にいた刀へと手を伸ばした武人は何事もなかったかのように再度跪く。それを確認した王はその重々しい雰囲気の中、語り出した。
「お前たち、時間と言うのは有限なのは知っているよな」
何を話すのかとビクビクしながら配下達は耳を澄ませていたが、内容は何てことない普通の事。配下達にとってはそれが当たり前であり中には短命の種族もいる事からその事が文字道理骨身に染みるほど実感している者もいるほどだ。だが何故今のその様な問が王の口から出るのか、私達には計りかねる。
「実を言うと私は無駄な時間があまり好きではない」
それも知っている。我らが王は無駄を嫌うお方だ。作業の合間合間にも他の作業を行い効率化。本来の期間よりも短期間で事を成すお方だ。王城を空ける時でさえも王が最も信頼している騎士へと国を任せ仕事の処理が止まらぬ用に念入りに準備をした後に出ていくほどに彼は無駄を嫌う。周知の事実であったが王の口から発せられるという事は何か意味のある事なのかと配下達は頭を回し、勇士の1人である豚鼻の知識人も限られた情報の中で王が何を言いたいかを探る。しかし情報が限られ過ぎている為にまるで答えが出てこない。王は何が言いたいのだ。
「──先日、近辺の島国から接触があった」
その一言で王の間は凍り付いた。王国が建国し空へと舞い上がって8000年余り。差別の対象を取り込み吸収していく我が国の特性上敵対と言う形でしか他国とは関係が無かった。しかし、その歴史にも終止符がついに打たれ、歴史的な瞬間だと皆が理解し喜びの感情を露わにする者も現れる。しかしその中でも冷静に物事を見る事が出来る者はそれ故に考えたはずだ。どうやって他国と敵対せずに有効的に付き合っていこうかと。それは疑問から始まりやがて動揺へと変わる。
「動揺するのも無理はない」
その雰囲気を感じてか王は右手を上げ、動揺から不安へと変わりつつあった配下や勇士達の注目を集める。
「我が国は知っての通り、前の世界ではやむを得ない理由があった為に敵対的な行動しか他国とは渡り歩かなかった」
深く頷く我らに"だがどうだろう"と王は話を続ける。
「ここは新世界だ。我らにとってもあちらにとっても手探り状態である未知なる相手、どちらも始めたの接触だ。だとしたら心機一転我らも方法を模索しようではないか」
そう言って立ち上がる我らが王。太陽に照らされ眩しく光る王冠と国の象徴が描かれたマントが風に靡くその姿は新たなる時代の幕開けを告げているかのような光景だった。
「────さて諸君、有意義な時間としよう」
そう言い放つ王の表情は我らが見た事の無くそして彼を昔から知ってる者にとっては懐かしく感じるほど活き活きとしていたのだった。しかしその王はこう考えてた。
「やっぺ、日本と交易なんて低能の俺で出来るはずないじゃん‥‥‥‥どうしよう」
これはゲームを程よく本気で嗜む男がそのゲームで作り上げた国家と共に辿った歴史の違う地球へと降り立つ話。