アリの引っ越し
博士アリ:「我々の巣に脆弱性が見つかった!」
ここはアリの巣。公園のタンポポの下の大きな巣。
平和なひと時に、博士が水を差す。
指揮官:「静粛に。博士くん、その脆弱性とやらを詳しく聞かせてもらおう」
博士アリ:「我々は2年間、このタンポポの下で暮して来ました。しかし、先日とあるニンゲン共の会話が聞こえてきまして。」
指揮官:「ふむ、で、その内容とは?」
博士アリ:「はい。解読の結果、明日は、年に一度の草刈りです!」
指揮官:「草刈り?」
「「「「「はっはっはっはっは」」」」」
兵隊長:「草刈りってアレだろ、カマで草の上だけ切る奴」
兵隊長:「去年は何もなかったじゃないか」
博士アリ:「最近、近隣でも根本から抜かれる被害が多発しています!」
食糧長:「だが食糧はどうする? バッタや飴玉が腐ってしまう」
保育士:「赤ちゃんも大勢いるんだぞ! 見殺しにするつもりか!!」
指揮官:「しーずーまーれー!」
しーん……
指揮官:「我らがタンポポの根は太くて頑丈、そして茎は脆く葉は大地に伏している。そうそう抜かれる事はない。」
博士アリ:「指揮官!」
指揮官:「博士くんの言うことは一理ある。しかし引っ越しはそう簡単に出来る事ではないのだ。分かってくれ」
博士アリ:「何かあったらどうするんです! 今からでも間に合います、木の根本に──」
指揮官:「会議は終わりだ。博士くん、後でじっくり話を聞こうじゃないか」
博士の奮闘虚しく、引っ越しの案は聞き入れられなかった。
特に備える事もなく、平和なひと時を過ごす。
そして次の日
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少年:「よーし頑張るぞー!」
今日は草刈りの日
少年たちは、三叉クワを持って草を掘り返す!
サクッ ボコッ♪
サクッ ボコッ♪
サクッ ボコッ♪
少年:「あ、アリだー」
タンポポを掘り返すと、まだ白い赤ちゃんを抱えたアリがたくさん湧き出てきましたとさ。