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4話『ベゼッセンハイト』

 ――それから数か月が経ち、その間様々な有能な装飾品を見つけ、永遠の命だかなんだかわけのわからない噂を聞いた。

 町や村、国を回って各地の問題を解決したものの、良い女は殆ど見つからなかった。

 ああでも、道中、空から背中に落ちてきたエルフの女が俺の仲間に新しく加わった。


 名前は【テナシテ】。肌の白いエルフで顔立ちし胸も大きく発育がいいが、ずっと俺の背中にしがみ付いている。

 数か月一緒に暮らしてきたアイファズフトとジャルジーは勿論その様子に嫉妬し、ジャルジーはテナシテを引き離すように引っ張るし、アイファズフトはテナシテよりも強い力で俺に抱き着く。


 次の町を目指して歩いているのだが……、ふっ、モテるって罪だな!!!


 次の町に着き、その町で起きているトラブルがないか町民に訊いて回った。すると、一つの問題が議題に上がる。


『魔法使い【ベゼッセンハイト】――』


 その娘は、町近くの林の中にいるヘンテコな家に住んでいるらしい。噂によると、童話のヘンゼルとグレーテルに出てくるようなお菓子の家のような見た目の家で、たまに爆発音が聞こえてくるらしく、町の住民が迷惑しているとか。


 ま、善は急げだな!!!(下心丸出し)


 俺はジャルジーとアイファズフトを軽く抱えて、町から出て、その魔法使いの家があるという林に駆け込んでいった。林の中では木漏れ日が差し込み、蝶が舞い、動物が鳴き、ただの林とは思えないような幻想的な空間を創り出していた。

 少し歩くと【ベゼッセンのおうち】と書かれ、奥を指し示すような矢印が描いてある看板を発見した。

 矢印の方角を見ると、外にかまどを備え付けたカラフルな家が少しひらけた場所に建っていて、その前を小さな小川が流れていた。


 俺は二人を抱え一人を背負ったままその小川を飛び越え、その家の入口を探した。

 家の入口のような場所を見つけ、二人を降ろしテナシテにも一旦背中から降りてもらうことにして体勢を整えた。

 釘が打ちつけられ、そこに黒のペンか何かで【在宅中】と書いてある緑色の看板がぶら下がっている、上方が丸くなっている扉をノックした。


「はいはーい? どなた様すかー?」


 家から出てきたのは、胸元が開けたダボダボの桃色の衣服を着て、白いハーフパンツを履いている丸眼鏡をかけた女だった。起きたばかりなのか、少し紫がかった桃色の髪の毛はボサボサだった。


「……誰?」

「俺はタロウ。こっちは連れのジャルジー、アイファズフト、そしてエルフのテナシテだ」


 三人は会釈をする。その女は、ボサボサの髪の毛を掻きむしり、扉を開けたまま中に入って行ってしまった。


「あ、おい!」

「あー、中入っていいっすよ。どうぞ、何か事情があるみたいっぽいので、中で話しましょ」


 そう言い、俺たちを家の中にいれ席に座らせてコーヒーをカップに注ぎ目の前に出した。

少し落ち着いてからその女は話を始める。


「で、なんすか? こんな気持ちの良い昼間に」


 その女は唐突に口を開く。


「おい、俺らが名乗ったのに名乗り返さないのかよ」


 すると、女は面倒そうに頭を掻き、ピンク色のウサギが描かれたマグカップに入った紅茶をすする。


「あー、それもそうっすね。アタシは【ベゼッセンハイト】。魔法使いやってまーす」


 家の中には巨大な大釜があり、その中から紫色の煙が立ち込めていた。

 どうやら本物らしい。しかし、爆発音は一体どこから聞こえてくるというのだろうか。


「それでだな、質問の答えに戻るが、単刀直入にいうと、町の人が迷惑している」


 ストローを取ってマグカップに入れ、紅茶をストローで飲み始める。


「え……、マジっすか?」

「ああ、らしいぞ」


 その魔女はストローを加えたまま硬直した。


「……、アタシ爆発系魔法を研究してるんすけど、それっすかね……」


 俺はあることを思い出し、その魔法使いに一つの提案をする。


「それなら、俺についてくるってのはどうだ?」

「……へ?」


 話が跳躍して呆気をとられたのか、ベゼッセンハイトは目を点にして俺の顔をじっと見つめてきた。他の三人は顔を見合わせ、不思議そうな面持ちで俺を凝視した。


「俺の左脚には対爆発系魔法用の装飾品が埋め込まれている。それを使えば、俺を実験台にして魔法の威力を確かめる研究ができるし、それに旅をすれば、人気のない場所で音を気にせずにできるようになる。どうだ? いい提案じゃないか?」


 ベゼッセンハイトは深く考え込み、椅子から立ち上がって俺の近くでしゃがみ、左脚の脛に埋められた宝石を眺めた。


「こ、これは……、エクスダイヤじゃないっすか!!! こんな代物どこで……!!」

「ちょっと色々あってな、そこらへんは割愛だ」


 その宝石を見るなり、目を輝かせ鼻息を荒くしたベゼッセンハイトは階段を駆け上がって二階に行った。

 上からドタドタと音がした後、一階に戻ってきたベゼッセンハイトは、唾の広い大きな赤いとんがり帽子を被り、魔法使いらしく古木で作られたような杖を持ってきた。


「さ、いきましょう! 街の人にはアタシから謝るっす! さぁ、さぁ!」


 ベゼッセンハイトは俺を席から立たせ、背中を押して家を出る。鍵をかけ、早速町へと駆けだしていった。それに着いていき、俺たちは町人を集め、ベゼッセンハイトに謝らせた。

 町の人は申し訳なさそうに顔を見合わせ、快く許し、俺たちが町から出て行くときに手を振って送ってくれた。



 ――――それから、一年の月日が流れた。

次話もよろしくお願いいたします!

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