ロリBBA推参
どうしてもロリババァが活躍する作品を書いてみたかったので練習で作っています。
この作品が面白いと思ってくれた人がいるのならうれしいです。
西暦2116年、その国に初の女性総理大臣が誕生し、一週間が過ぎた頃、後に「女傑の御乱心」と呼ばれる事件が起こった。
「総理、また例の国の戦艦が領土侵犯です。今週だけでもう5回目ですよ」
総理と呼ばれた妙齢の女性は、男が伝えてくる情報に一つの反応も示さない。目を瞑り、呼吸すら止まっているのではないかと錯覚させるほどに静寂を保っていた。
実際、女性は高齢であり、御年80歳という年齢であった。
科学技術が発展し、平均寿命が著しく伸びたこの国では、80歳という年齢はまだまだ現役で仕事をしている年代なのである。
女性もこの政界に入り、すでに半世紀が経過しているが、見た目も80歳とは思えぬ、品のある女性であった。
男がどうしようかと迷っている頃、ゆっくりと目を開いた女性は、先ほどの報告をしてきた男に向かって一言だけ呟く。
「えっ、今なんと」
男が聞き間違いかと思い、再度尋ねるが、結果は変わらなかった。
静かだか、どこまでも通る声で呟く。
「破壊しろ」
と。
女性が総理では、我が国は他国に舐められるのではないかと、多くの政界ジャーナリストや、著名人が語っていた中、その日、国中に衝撃が走る。
街では号外が飛び交い、この日の出来事を知らぬものはいなかった。
『彼の国の戦艦、轟沈』
彼女の推薦で集められた大臣たちは、武闘派で固められた豪傑ばかりが集まっていた。
命令を受けたとき、止めるどころか、嬉々としてこれを受理、破壊に至る。
勿論、通知をした上で、それでも相手方が引かなければという判断の上の作戦であった。
今回もただの脅しだと彼の国は思ったのであろう。さらなる挑発的な態度を示した。いや、示してしまった。
現在のこの小さな島国は、かつての戦争で締結された条約によって他国に守られていた時とは違い、全てが独立した存在であった。
科学技術は他の追随を許さないほどに発展し、二世紀先を歩んでいるとまで言われている。
そんな国に喧嘩を売ったのだ。彼の国の戦艦は、総理の発言から僅か30分ほどで破壊された。どのような技術があったのかは不明だが、船員に死者はいない。
ただし、10隻という彼の国の最新の艦隊は、たった30分で壊滅してしまったのだ。
このニュースは、翌日には世界中に広がる。緊急で世界の首脳陣が集められ、説明が求められた。彼の国のトップも勿論出席しており、開口一番に批難を始め、他のトップ陣にも賛同を求めた。
彼の国のトップが戸惑ったのはそこからである。自分たちはいきなり戦艦を破壊された被害者なのだから、全員が味方をしてくれるだろうと考えていた。しかし、彼が感じた空気はおおよそ 真逆であった。
「では、日本はこの件に対しての説明をお願いします」
司会進行を任されている男性が、女性に対して発言する。
翻訳機が進化した現代、通訳は必要とせず、すべての言語が自分の知っている言語に翻訳され、相手にも伝わる。未知の言語も、翻訳機の学習機能があらゆるパターンを分析し、いずれは完全に使いこなす最新式である。もちろん、女性の国の技術である。
背筋を真っ直ぐと伸ばし、凛とした姿で彼女は座っていた。いつものように静かに目を閉じて。時間にしてたっぷりと30秒ほどだろうか、ゆっくりと目が開かれ、言葉を紡いだ。
「なに、この一週間、漁船が我が国の領海を乗り越えるのでの、少々おいたが過ぎるので警告したまでじゃ。ほれ、別に誰も死んではいないじゃろ」
この言い分である。
この言葉に世界のトップは開いた口が塞がらず、彼の国のトップは顔を真っ赤にして激怒した。浴びせられる罵声に、明後日の方向を向きながら聞き流す態度は、さらに怒りを加速される。
そして、決して言ってはならない言葉を言ってしまう。「あなた方は我が国家に戦争を仕掛けるのか」と。
言葉を発した瞬間にこの場の空気が凍ったのを全ての人が感じ取る。ただ一人、口元に笑みを浮かべることを除いて。
「ほぅ、戦争」
一言。たったその一言で、今まで顔を赤くし、罵声を浴びせていた国の人が、顔を真っ青にして言葉を濁す。
「 主ら、何か勘違いしておらぬか」
女性は立ち上がり、首脳陣を見据える。
「我が国は、その気になれば3日で世界を牛耳ることが出来る」
そこで言葉を区切り辺りを見渡す。普通に考えれば、世界に対する宣戦布告だが、誰の反論もない。全員がそれを認めているからだ。
「では、なぜそれをせんのか」
ゴクリと、誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。
「勝っても意味がないからじゃ。それに好敵手となり得る相手がいない争いなど、つまらないしの」
あくまで上からの言葉に、さすがの各国も怒りが出てきた頃、最後に女性はさらに続けた。
「これまでの阿呆どもは世間などと言うくだらないことを気にしておったが、儂は気にも止めんでの、遠慮せずに攻めてくるが良い。今日はそれを伝えに来ただけじゃよ」
そう残し、女性はスタスタと重厚な扉を開け、部屋を退出して行く。その後ろ姿に、誰も何も言えなかった。
読んでいただきありがとうございます。