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転生ヒロインは方言がなおらない  作者: 玲於奈
CHAPTER (1):
8/14

*閑話* ある少年の出会い




よく晴れた日の昼間。


俺は、週に一度の孤児院訪問のために、教会に向かう馬車に揺られながら、小窓から流れてゆく街の風景を眺めていた。


俺の家は、大きな商家が成り上がって爵位を買った、新興の準男爵家である。


成り上がりなのに、貴族という身分に舞い上がった両親は、すっかり平民を見下してしまっている。

自分たちをひけらかす、よく肥えた両親が恥ずかしく、せめて自分自身は、という思いで、こっそりと身体を鍛えて、経営学も学んでいた。



今回の孤児院訪問もそうだ。


その孤児院は、うちが出資している孤児院で、週に一度の現地視察に、


『お前も来て、孤児たちを見ることで、自分の身がいかに尊く、遥か上の身分なのか、知るといい。』


と、腹の肉を揺らしながら言う父親に、俺も毎週連れられている。



何が尊い身分だ、俺達もついこないだまで平民だっただろう、という反発心のもと、初めは行きたくなかったが、自分の将来のために必要なことか、とついて行くようになった。



今となっては、ただ単純に同年代の孤児たちと遊ぶのが楽しく、親の目を盗んで、子供達と仲良くしているので、週に一度のこの外出は、俺にとっても楽しみなものだった。




この日、父親の機嫌が、いつもに増してやたらと良かった。

理由を聞いても『お前にはまだ早い』、と詳しくは教えてくれないが、何やら『希少なもの』が手に入ったらしい。





そうこうしている内に、教会に着いた。

いつも通り、教会の神父が父親に媚びへつらいながら、中へと俺達を案内した。


教会のメインホールを抜けた後は、父親は神父と話をするためにさらに奥の部屋へ行くが、俺は父親をまつ間、子供達と遊ぶために、2人と別れる。


いつも別れるはずのところで、神父は足をとめた。



急にとまったことに俺は訝しげな顔をするが、父親は訳知り顔で、「どれだ」と神父に問いかけた。


神父は孤児たちが集まっている方向を手で示し、「あちらです」と言った。



神父が指し示す方向を見て、

俺は目を見開き、息を呑んだ。




そこには、筆舌に尽くし難い、美しい少女がいた。


透き通るような、白い肌。

薄い桃色がかった輝くような、でも優しいふんわりとした金髪(ストロベリーブロンド)

長い金色の睫毛に縁取られた瞳は、蜂蜜を溶かしこんだような、金色で。

その少し目尻の下がった大きな垂れ目は、彫刻のように整った顔つきを、柔らかいものへとしていた。




「ほう、これはこれは……」


「人目につかぬよう、あまり外へは出さぬようにしております。」


感嘆の言葉を漏らす父親に、神父が何やらヒソヒソと囁く声で、漸く俺は我に返った。



満足気に神父と話しながら奥へと向かう父親を見送り、再び少女に視線を戻そうとすると、よく俺に懐いている、小さな3歳の男の子のサムが、大人がいなくなったのを確認して、俺に飛びついてきた。


「兄ちゃん!!久しぶり~!!」


サムの小さな頭を撫でながら、まだ呆然としていた俺は、サムに聞いてみた。


「サム、あの女の子は誰なんだ??新しい子か?」


「 あの子はねぇ、リベラっていうんだよ!!僕らの新しい家族!天使さまみたいでしょ~?」


そう得意気に話すサムの頭を再び撫でて、リベラ、という名前を頭の中で反芻させる。



早く行こう、とみんなのいる所に向かうサムの小さな手に引かれて、かの少女と距離を縮める。


歩きながらも少女を見ていると、少女を囲む子供達に何かを話しかけられた拍子に、少女は楽しそうに笑う。

そのキラキラと弾ける笑顔に釘付けになった。



あの笑顔を俺にも向けてほしい。



友達になりたい。



醜い両親ばかりを見てきて、冷え切っていた俺に、強い渇望が広がる。


そんな俺の視線に漸く気づいた少女は俺を見たあと、驚いたように僅かに目を見開いた。



それがどういうことなのかは、よく分からないけれど。



やっと彼女の元に辿り着いた俺の頭は、彼女に話しかけることでいっぱいになっていた。








「—————ねぇ、君は___」


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