弱虫黒猫と猫嫌いの魔女
声劇台本処女作になります。初めはツイッター上での猫の鳴き真似の話からでした。
そこからまさか台本を書くことになるとは思いもよりませんでした。
どうか、楽しんでいただければ幸いです。
声劇台本:弱虫黒猫と猫嫌いの魔女
作者:霧夜シオン
所要時間:約40分
必要演者数:2~5人
●はじめに
ぶっちゃけ不問でも演者間で自由に割り振っても男女逆転でも構いません。ですが
セリフ配分は非常に悪く、異端審問官は中盤から終盤にかけてのみ、旅人1・2は
終盤のみの出番になる事をご理解下されば幸いです。
魔女も性別逆転しても何ら問題ありません。男魔女(ウォーロック。決してウホッ
なものではありません。)というのがスコットランドやイギリスの北部に存在する
ので。性別逆転して上演する場合は一人称や語尾などを適当に変えて下さい。なお
、黒猫役とウェイター役は必ず被りになります。
※上演の際は、作者とつながりがある方は一報入れて頂ければ時間が空いてれば聴
きに参ります。
無理な場合は録画を残して一報いただけると後で聴きに参りますので、ひとつよ
ろしくお願いします。
登場人物
魔女・♂♀:数百年を生きているが不死ではなく、不老なだけ。猫が嫌い。見た目
20後半~30代。
黒猫・♂♀:魔女の森に瀕死の重傷を負って迷い込んだ猫。魔力の素質を持ってい
る。人間時の姿は10代後半。
異端審問官・♂♀:数多くの魔女、または疑わしき者達をろくに調べもせず容赦な
く処刑してきた。快楽殺人の癖を伺わせる。
旅人1・♂♀:旅人2と一緒に旅をしている。ちょっと慎重な性格だが流されやす
い。
旅人2・♂♀:旅人1と組んでその日暮らしであちこち旅している。お金の話に目
が無い。
ウェイター・♂♀:魔女の森の傍にある町の酒場で働いている。
○○Nは各キャラナレです。
●キャスト2人(例)
魔女(審問官&旅人2):
黒猫(旅人1&ウェイター):
●キャスト3人(例)
魔女(旅人1):
黒猫 (ウェイター):
審問官(旅人2):
●キャスト4人(例)
魔女:
黒猫 (ウェイター):
審問官(旅人1):
旅人2:
●キャスト5人
魔女:
黒猫 (ウェイター):
審問官:
旅人1:
旅人2:
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒猫N:中世において魔女は異端視され、迫害や差別、あるいは処罰処断の対象と
さえなっていた。火あぶり、鉄の処女・・・あらゆる責め苦の前に罪の無
い魔女たちは命を落としていった。
そんな血なまぐさい風の吹き荒れる大陸の片隅で、あったかもしれない、
小さなおはなし。
――クリック?
(黒猫役の人以外全員で元気よく):クラック!
黒猫N:【弱虫黒猫と猫嫌いの魔女】。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
魔女N:自分の家の庭のようになっている森で、魔法薬の材料を集める。いつもと
変わらない日常のはずだった。
しかし、平坦な日常に長く浸かり過ぎていて、いつだって些細な変化は唐
突に訪れるものだという事を忘れていた・・・長く生きてると、そんな事
もあるもんさね。
魔女:お、ツキヨダケ。ん~・・・カエンタケも見っけ。・・・さてと、魔法薬に
必要な素材は集め終わったし、帰るか・・・・・ん? 物音? 誰だい!?
黒猫:・・・にゃぁ・・・
魔女:なんだい、猫か。それも怪我して死にかけてるじゃないか。
黒猫:にゃ・・・あ・・・(にんげん? でもなんかちがう・・・こう・・・ふつ
うのにんげんじゃないような。)
魔女:助けてほしいって? あーダメダメ!あたしは昔引っ掻かれたり悪さされた
りして以来、猫が大ッ嫌いなんだ。
悪いけど、諦めて後生を願うんだね。
黒猫:にゃぁ・・・(そんな・・・ボク、ひっかかないよ・・・かみついたりしな
いよ・・・。)
魔女:ぐ・・・そんな目で見るんじゃないよ・・・って、よく見たらお前、魔力の
素質を持ってるじゃないか。
うーん・・・猫は嫌い、嫌いだが・・・そろそろ使い魔も欲しかったし・・
・というか魔女集会で使い魔持ってないのあたしだけって冷やかされてるし
・・・・・。
黒猫:ぅ・・・にゃぁ・・・(はやく、はやく、たす・・けて・・・。)
魔女:うぅぅううぅん・・・ああもう! しょうがない、使い魔に仕込んでみるか
。おいお前、動くんじゃないよ。今、手当てしてやる。その代わりにあたし
の使い魔になるんだ。引っ掻いたり噛みついたりしたら即、あたしの手で冥
府に送ってやるからね!
黒猫:にゃ・・・ぅ・・・(たす・・かっ、た・・・)
魔女:はぁ・・・まったく、とんだ拾い物しちまったねぇ・・・。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒猫N:目が覚めると、そこはどこかの建物の中だった。やけに暖かいと思ったら
、身体は包帯でぐるぐる巻きな上にタオルがかけられている。
黒猫:ん・・・にゃ・・・あれ、ここは・・・?
魔女:おや、目が覚めたかい?
黒猫:あ・・・さっきのにんげん・・・っづぅっ!
魔女:まだ動くんじゃないよ。傷はふさがってないんだからね。
黒猫:う・・・ぐ・・・
魔女:そ れ と! あたしは人間じゃない、魔女だからね!そこんとこ間違える
んじゃないよ!
黒猫:まじょ・・・? って、あれ、なんでボクのしゃべったことが・・・え、な
んで?
魔女:なんだい、今気づいたのかい。自分の首を見てみな。
黒猫:え・・・これ、って・・・くびわ?
魔女:そうだよ、そいつは友達の魔女から買った、意思疎通の魔法が付与されてる
首輪さ。お前みたいなのと会話するにはもってこいの道具だよ。話の一つも
できないと、色々不便だろう?
黒猫:あの・・・まじょ、さん・・・? どうして、ボクをたすけたんですか?
魔女:あ?どうして――って、聞いてなかったのかい!? お前を! あたしの使
い魔にする!って言ったじゃないか!
黒猫:ええぇ!? だ、だだだって、しにかけてたし―――
魔女:(↑の語尾に被せて)お黙り このクソ猫! 二度言わすんじゃないよ、ま
ったく!
黒猫:に”ゃっ!? うぅ・・・。
魔女:(~~っまったく・・・こっちが切なくなるような眼をするんじゃないよ・
・・)(呟く)・・・まぁいい。とにかく! 今日からお前はあたしの使い
魔だからね! たっぷり家事に魔法仕込んで、さんっざんにこきつかってや
るから覚悟しときな! ――返事は!?
黒猫:え、え、ふえぇっ!?
魔女:へ ん じ は !?
黒猫:は、はひっ!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒猫N:ボクを助けてくれたのは、魔女様だった。使い魔にする為だとは言え、猫
が嫌いな割にはあれこれ世話を焼いてくれたし、あったかいご飯も食べさ
せてくれた。
魔女:そうかい、人間にいじめられたのかい。
黒猫:うん・・・、棒で殴られたり、蹴飛ばされたり、水をぶっかけられたり・・
・色々。
魔女:やれやれ、ホントにろくでもないね、人間は! どうせ、黒猫だからって下
らない理由なんだろうさ。
黒猫:・・・そんな事、言ってた気がする。
魔女:はんっ、そんなもんさね。
黒猫:魔女様は、違うの?
魔女:あたしゃ弱い者いじめはしないよ。猫は、嫌いだけどね!
黒猫:ふぇっ!?そんなぁ・・・。
魔女:う・・・ま、まぁ、お前は噛みついたり引っ掻いたりしないし、その首輪
のおかげで話は通じるからね・・・ってああほら、さっさと寝ちまいな!
明日も早いんだ!
黒猫:お、お休みなさい、魔女様!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒猫(N):魔女様は、ボクに色んな事を教えてくれた。魔法薬の作り方、魔法の
使い方・・・。人間の姿に変身できるようになってからは、家事全般
まで教え込まれた。「家事ができるようになれば、あたしの負担が減
るだろ!」とかなんとか。魔女様のお役にたてるのは嬉しいから全然
辛くはないし、家事に関して言えば感心されるくらい上達したけど、
肝心な魔法の方はお世辞にも褒められたものじゃなかった。
魔女:・・・で、そこまでやったら次は――ってそうじゃない! うわっ!!!
黒猫:わっ、嘘ッ!? に”ゃぁあああああ!!!
魔女:げほっ、げほっ!! ああああもう、何回言えば分かるんだい!? この
クソ猫!!
黒猫:うに”ゃぁっ!! い、痛いぃ・・・うー・・・また間違えた・・・。
魔女:はぁ・・・どうしてこう、お前は魔法の上達がからっきしなんだか・・・
。家事に関してはあれだけ物覚えがいいっていうのに・・・。(魔力の素
質があるとはいえ、こりゃ見誤ったかね・・・。)
黒猫:うぅ・・・ごめんなさいぃ、魔女様。
魔女:あぁぁもぅ、だーかーら! そんな目であたしを見るんじゃない! 燃や
すよ!!
黒猫:そ、そんなぁ! 理不尽ですよぅ!
魔女:それに、あたしは治癒魔法を先に覚えて欲しかったんだけどねぇ!まった
く・・・。
まぁ・・・家事とかは、その、なんだ、良くやってくれてるし助かってる
というかなんというか(ごにょごにょ
黒猫:? 魔女様、何か言いました?
魔女:うっうるさいね! ほら! もう一回やる!!
黒猫:い、イエス・マスター!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
魔女(N):クソ猫がうちに来てから二年が経った。魔法はともかくとして、家の
事を何でもやってくれるから正直、楽している。
虫達が外でコーラスを謳っている中、クソ猫は所定の場所で丸くなっ
て寝ている。
黒猫:・・・むにゃ・・・。
魔女:こうして見ると、可愛いもんだね・・・手当てして以来、触った事は無かっ
たけど・・・な、撫でて、みようか・・・(唾を飲む)。
黒猫:むにゃ・・・まじょさま・・・やくそうおおすぎるよぅ・・・。
魔女:まったく、何の夢見てるんだか・・・柔らかい・・・。
黒猫:んぅ・・・? まじょ、さま・・・?
魔女:! なっ、なななななんでもないよ! ゴミ! そう、ゴミがついてたから
取ってやったんだよ!
黒猫:ふぇ?・・・ありがとう、まじょさま・・・むにゃ・・・。
魔女:ふぅ・・・。ああ、いい手触りだね・・・ビロードみたいさね。
黒猫:まじょさまぁ・・・もう、たべられないよぅ・・・むにゃむにゃ。
魔女:ふふ・・・この、クソ猫。――そうだ、いい加減に名前の一つでも考えてや
らないとね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒猫(N):歳月は、あっという間に過ぎていった。魔女様に拾ってもらったの
がまるで昨日の事みたいだと思うほどに。
魔女様との生活はすごく、すごく幸せだった。かつて人間にされた
事が記憶から薄らぐ程に。
でもそれは、不幸の味という、忘れてはいけない事まで忘れさせて
しまっていた。
災いは幸福の影に隠れて出番を待っているという事を、ボクは思い
知る事になる。
それは、ボクがいつものように魔法薬の素材集めの為に森へ出た時
のことだった。
審問官:ここか、魔女が住んでいるという森は・・・。神よ、異端の輩に正義の
審判を下す使徒たる子羊の私に大いなる加護を、エイメン・・・むっ、
気配が。
黒猫:えーと、ジギタリスに、シャグマアミガサタケ・・・うう、魔女様は相変
わらず人使い荒いなぁ・・・。
審問官:こんな所で山菜取り・・・いや、違う、あの素材は・・・! 間違いな
い、奴は魔女の眷族か使い魔だな・・・正しき教えを広め、異端を断罪
する特権を与えられた私の使命、果たさねばなるまい! まぁ、よしん
ば間違いであったとしても・・・久しぶりの異端審問だ、楽しませてい
ただかなくてはねェ・・・ククク。
・・・もし、そこの方。
黒猫:にゃっ? 誰!? ぁっ、しまった・・・ここ外側・・・!
審問官:旅の者なのですが、道に迷ってしまいまして・・・。良ければ一夜の宿
をお借りしたいのですが。
黒猫:あ、う・・・。
審問官:お願いします。もう空腹で空腹で・・・何か食べ物をわけて頂けるだけ
でもいいですから。
黒猫:う、うーん・・・そうだなぁ、食べ物だけなら、いいかな・・・。
審問官:おお、ありがとうございます! 助かりました!
黒猫(N):この時、ボクはうかつにも素材集めに夢中になって、魔女様が森の
中に張った結界を越えてしまっていた。結界の中であれば、外から
入って来る者は迷わされて森の入口か別の出口に誘導されてしまい
、案内無しでは魔女様の家がある一番奥までは入ってこれなかった
のだから。
魔女:・・・・・遅い! まったく、どこで油を売ってるんだい、あのクソ猫は
! さっさと帰って来いっていつも言ってるだろうに・・・しょうがない
、探しに行くか・・・。
黒猫:あ、そこ気をつけて。地面がくぼんでるから。
審問官:ありがとうございます。そういえば、ここに住んでどれくらいになりま
す?
黒猫:うーん、2年くらい、かな?
審問官:おや、そんなに長いわけでもないのですね。
黒猫:そ、そうかな?
魔女:ん?こっちから話し声・・・って、あんのクソ猫、なにを人間なんて連れ
て歩いてるんだい!自分がされた事忘れたのかね!
しかも結界を越えるなってあれほど・・・いや待て、ッ、あの聖印(ホー
リーシンボル)は!
なんてことだい、十三局の連中じゃないか!
黒猫:ここを真っ直ぐ行けば、ボクの家だよ。って言っても、ボク一人じゃあな
いんだけどね。
審問官:そぅですかそうですか。その一緒にお住いになられてるのは、あなたの
ご両親ですか?
黒猫:ううん、ボクのお師匠様。ボクを拾って育ててくれたんだ。魔法とか使え
る、すごい人なんだ!
審問官:へぇ・・・・・そうか、ならばもう、お前に用はない。
黒猫:え? 何? ど、どうしたの、急に剣なんか抜いて・・・。
審問官:ククク、これより異端審問を始める! 被告、魔女の眷族! 有罪!!
父と聖霊の名において断罪に処す!・・・死ねッ!!
黒猫:異端審問? まさか教会の!? う、うわあああぁぁぁあああ!?
審問官:ッ!! うぬッ、これは・・・カマイタチ!?――フッ、お出ましのよ
うだなァ!
黒猫:まっ、魔女様!?どうしてここに?
魔女:早くお逃げ! そいつはあたしが相手する! いつもの場所に行ってな!
黒猫:でっ、でもッ、ボクも戦うよ、魔女様!
魔女:こんのクソ猫! あたしの言う事が聞けないってのかい!? いいからと
っとと行きな!!
・・・そこの異端審問官、いや、十三局の狗! あたしが相手してやるよ
、かかっといで!
黒猫:ッ・・・!
審問官:ククク、別れは済んだか? なァに、すぐに会わせてやろう・・・煉獄
でなァ!!
黒猫:はっ、はっ、はぁっ、魔女様・・・どうか、どうか無事で戻ってきて・・
・!!
魔女:・・・さて、威勢良く啖呵は切ったものの・・・、あたしも戦いは不得手
なんだけどね・・・オマケに相手はあの十三局、クソ猫が逃げ切るまで時
間を稼げるかどうか・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒猫N:ボクは走った。肝心な時に魔女様を護るのではなく、護られた自分の無
力を呪いながら。
黒猫:はあっ、はあっ・・・着いた・・・魔女様とボクの修行場・・・。魔女様
・・・大丈夫かな・・・。
魔女:っ、はぁ、はぁ、審問官の奴はどうにか撒いたけど・・・日没になっちま
った・・・あたしの結界術もホント、様にならないね・・・日が暮れると
効力が弱まっちまうなんて・・・はは、笑い話にもなりゃしない。魔女仲
間にバカにされるのも、仕方ないかね・・・。
黒猫:・・・そうだ、こっちから魔女様を見つけやすく、あの異端審問官からは
見つかりづらいように・・・っと、これでよし、元の姿に戻っておいて・
・・。
審問官:さて、どこへ行った、魔女め・・・だがあの傷ではそう遠くまでは逃げ
られまい。 ん?ククッ、これはこれは甘く見られたものだ! 草を踏
みしだいた上に血の跡が残っているぞ・・・!
黒猫N:僅かな時間しか経っていなくても、急いて待つ事は普段の何倍も時間の
経過を遅く感じさせる。焦りに耐えきれなくなりそうになった時、待ち
わびた気配と声がした。
魔女:やっと、着いた・・・クソ猫、どこだい?
黒猫:!! 魔女様! 無事だったんですね! 良かったぁ・・・。
魔女:無事なら、良かったんだけどね・・・。うっ、げほっ、げほっ!
黒猫:魔女様!?しっかりして!
魔女:大きな声を、出すんじゃないよ・・・審問官の奴に聞かれたら、どうするん
だい・・・。
黒猫:で、でも魔女様、血が・・・奴にやられたんだね!?魔法薬を今取りに――
魔女:(語尾に被せて)おやめ、無意味だよ・・・。
黒猫:でも!!
魔女:・・・血を、流しすぎたから・・・、げほっ、あたしの魔法薬じゃ、どうに
もならないね・・・治癒魔法でも使えれば、よかったんだけどね・・・。
黒猫:あ・・・ぁぁ・・・ボクが! ボクがちゃんと治癒魔法を覚えてれば!・・
・結界の外に出なければ・・・ッ!
魔女:気に病むんじゃないよ・・・お前のせいじゃない。それに・・・どの道、こ
の傷じゃ助からないさ・・・。
黒猫:そんな・・・・そんな!!
魔女:あたしは魔女の癖に・・・簡単な初歩魔法か、魔法薬を作る位しかできなく
てね・・・、あぁ、そうだ・・・昨日の夜、お前の名前を、色々・・・考え
てたんだけどね・・・。
黒猫:クソ猫でいいから! 名前なんていいから!! だから魔女様、死なないで
!
魔女:げほっ、げほ、まっ、たく・・・最後まで・・・ワガママ言うクソ猫、だね
・・・ほん、と・・・あたしゃ、不死じゃないん、だよ・・・。
黒猫:うっ、うう、ぐすっ、ひぐっ・・・嫌だ・・・嫌だよぅ・・・。
魔女:・・・Suave。
黒猫:・・・・・え?
魔女:今、決めた・・・お前の、名前だよ・・・。もっと、早く・・・付けてやれ
ば・・・沢山、呼んでやれたら、良かったのに、ね・・・。
黒猫:スァーブ・・・ボクの、名前・・・うぅぅぅうう・・・っ!
魔女:はぁ・・・泣くんじゃないよ、スァーブ・・・あたしの、ぶんまで・・・生
きるんだよ・・・。あぁ・・・いい、手触りだね・・・こんな、ことなら・
・・もっと、撫でとくん・・・だったかね・・・・・っ。
黒猫:・・・魔女様? 魔女様!? あ・・・あ・・・うわあああああぁぁぁああ
あぁぁ!!!
審問官:見つけたぞ!・・・む、この猫もしやさっきの・・・魔女の使い魔か!え
えい薄気味悪い! しかも不吉の黒猫ときてる!
黒猫:・・・・・さい。
審問官:汚らわしくもおぞましい魔女の使い魔よ! 神の御名において汝を滅する
! 覚悟せよ!!
黒猫:・・・煩い。
審問官:何だと? っ、な、なんだこいつ、何か、異様な・・・!
黒猫:うるさいって、言ってるだろ・・・・・!!
審問官:っひ!?
黒猫:あ・・・なんだろう、この燻されて出てくるようなドス黒いキモチ・・・そ
れにつられて、からだの中のナニかがあふれだしそうな・・・!
審問官:ひ、ひいいいいいま、魔力が? こんな小さな体の何処から溢れ出て来る
んだ!?
黒猫:ぐ・・・うぐ・・・グ・・・グ、グゥルゥルルゥオオォォアアァァァアアア
!!!
審問官:う、うわわわあああわあああああ!きゅ、急に身体が大きく!?何だ、何
なんだお前はああ!!
黒猫:グルルル・・・サッキカラ、ウルサイト言ッテルノガ分カラナイノカ、ニン
ゲン!!
審問官:あ、ああああまさか、ば、バンダースナッチ!?か、か、神よ、ご加護を
おおぉぉお!!!
黒猫:!!!ダァマァレエエエエェェェ!!!!!
審問官:いっ、ぎゃあああぁぁあああ!!!う、腕がああああ!!
黒猫:ヨクモ魔女様ヲ・・・思イ知レェッッ!!
審問官:あっ、ぎッ、あっ、足ッがぁぁぁ!!!
黒猫:フン、本当ニヨク喚クナ、人間ハ!
審問官:ひいっ、た、たっ、たす・・けて・・・!
黒猫:ソウカ。――助ケテ欲シイカ?
審問官:はっ、はいッ、お、お願いですッッ!!!
黒猫:・・・ソウ言ッタ奴ニ、オ前ハ今マデドウ答エタ?
審問官:・・・え?
黒猫:ドウセ助ケヲ求メタ奴ヲ、容赦ナク、殺シテキタンダロウガアァァァァァァ
!!!!
審問官:あっあっあっあああああうわああああああ食べないでえええええぐがッッ
!!!
黒猫:(語尾に被せて咀嚼音)フーッ、フーッ、・・・・・マジョサマ・・・ボク
、コレカラドウシタライイ・・・?
黒猫:ニンゲンハ、ニクイ、ケド・・・・。
黒猫:オイシカッタ・・・(舌舐めずり)。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
魔女(N):それからしばらくして。魔女の森の近くにある街の酒場にて。
旅人1:おい、知ってるか? この街のはずれにある森の噂。
旅人2:あん? 自分の寿命を知らないようにそんな噂は知らないね。
旅人1:さっき街の奴から聞いたんだ。何でもその森にはかつて魔女が住んでたら
しいんだが、ある日魔女の使い魔がしくじって、異端審問官を家まで招き
寄せちまったらしいんだ。
旅人2:ははっ、何とも間抜けな使い魔だなオイ。
旅人1:しかもその審問官ってのが、あの悪名高い十三局の所属だったんだと。
旅人2:げ、明らかに魔女確定している奴以外にも、ほんのちょっと疑わしいって
だけで容赦なくひっ捕らえて魔女裁判にかけるか、あるいはその場で処刑
してきた十三局か!?
旅人1:ああ。だが相手も何百年も生きてきた魔女だ。最後はお互い相討ちになっ
たらしいぜ。
旅人2:へぇ、そいつはさぞかし壮絶な闘いだったんだろうなぁ。
ウェイター:お客さん達、旅の人ですか?
旅人2:ん?ああ、そうだが、どうかしたか?
ウェイター:その魔女の森について、耳寄りな良い話があるんですよ。
旅人2:お、なんだなんだ、その良い話って?
ウェイター:なんでも、その森の魔女は結構な財宝を貯め込んでたらしいんです。
旅人2:なっ、マジか!? おい、ちょっとその話詳しく教えろよ!
旅人1:おいおい待て待て!、また悪い癖が出たな!? 見境なく金絡みの話に食
いつくなって!
旅人2:なんだよ、話半分にしても面白いじゃないか。もし本当にお宝があったら
、こんな街から街へ流れてその日暮らしをしなくても済むってことだろ。
昔っからいつか自分の酒場を持つのが夢だったんだよ!
旅人1:いや、だからってこんな美味しい話があるとは思わないぞ・・・今まで何
回酷い目にあったと思ってるんだよ。
旅人2:まぁまぁ、仮に何も見つからなかったとしても大して損はしないだろうさ
。別にいいだろ?年柄年中スカンピンなんだ、もし一儲け出来れば腹いっ
ぱい、食べられるんだぜ!?
ウェイター:あのー・・・お二方? ご相談のところ悪いんですけど、結局どうす
るんです? 行くんですか? 行かないんですか?
旅人2:お、おおすまん。勿論行くぜ! で、その森と魔女の住処まではどう行け
ばいいんだ?
ウェイター:ああ、行くんですね。じゃあ、日暮れに街の北の入口に来てください
。そこから一緒に案内しますから。
旅人2:あん? 何で今からじゃなくて日暮れなんだ?
ウェイター:魔女は自分の住処と庭である森に、目くらましの結界術をかけたそう
なんです。
主が死んだとはいえ、まだ結界自体は生きてるみたいでしてね。日没
を過ぎないと結界に綻びが出ないらしいんですよ。それにボク、まだ
仕事中ですし。
旅人2:なるほど、そういうことね。じゃあ、日暮れに街の北の入口でな!おい、
宿戻って準備するぞ!
旅人1:お、おい、待てって!!
旅人2:待たねえ、ほら早く来いよ! 置いてくぞ!
ウェイター:はぁ、せわしない人達ですね・・・腹いっぱい食べられる、ねぇ・・
・うん、そうだね。
ウェイター:・・・スグニ食ベラレルヨ、ククク・・・(舌なめずり)。
黒猫N:その後、二人の旅人がどうなったか、それは誰も知らない。財宝を手に入
れたのか、それとも・・・?
はつかねずみがやってきた。――はなしは、おしまい。
END
●劇中語句説明
スァーブ:HAL姉につけて頂きました! Suave・・・優しい、柔らかいと
いう意味を持つそうです。
魔女から黒猫への最後の贈り物は、名前でした。
ツキヨダケ:夜闇の中で光るキノコです。毒キノコです。毒キノコランキングに名
を連ねる誤食キノコの一つで日本におけるキノコ中毒の約3分の1を占
める。椎茸に似てるねん。
カエンタケ:毒キノコランキングトップクラスにランクインする化物。というかこ
いつだけは他の毒キノコとは明らかに次元が違い、触れただけでも害
を為す、絶対不可侵の毒キノコ。
色はおもに真紅で火が燃えているような形をしている。その致死量た
るや僅か3g。
表面の汁に触っただけでも皮膚がボロボロになるレベルで爛れ、食べ
てしまうと口の中が口内炎だらけに→呼吸困難・白血球破壊→全身の
皮膚の糜爛・多臓器不全と症状が進行し死に至る。もし万一助かって
も小脳の萎縮等による重大な後遺症が残る。これだけの毒性を持つキ
ノコは、世界広しと言えどもカエンタケのみである。
シャグマアミガサタケ:黄褐色から赤褐色の頭部をしたグロテスクな見た目で、脳
味噌に似ている形のシワがある。確実に無毒化した上で“
正しく”調理すれば食べられる。中毒すると約10時間内
に吐き気・嘔吐・激しい下痢と腹痛、痙攣等をもたらし、
重症の場合には肝障害・発熱・眩暈・血圧降下などが現れ
、意識障害、消化器系の出血を経て、2~4日で死に至る
ことも。
なお、毒抜きの為煮ると毒成分が気化する為、湯気を吸い
込むだけで中毒を起こす。素人が手を出せば大火傷。こい
つもランキング上位に名を連ねる恐怖の毒キノコ。フィン
ランドでは珍味として食べられている。
ジギタリス:別名、キツネノテブクロ。「魔女の指抜き」「血の付いた男の指」と
呼ばれていた地域もある。猛毒があり観賞用に栽培する際には取扱い
に注意を要する。副作用として、不整脈や動悸、嘔気、嘔吐、頭痛・
眩暈、黄視症等がある。古代から切り傷や打ち身に対して薬として使
われていた。後にイギリスのウィリアム・ウィザリングが強心剤とし
ての薬効を発見して以来、鬱血性心不全の特効薬としても使用されて
いる。
バンダースナッチ:原典は「鏡の国のアリス」の中に収録されているルイス・キャ
ロルの【ジャバオックの詩】と【スナーク狩り】に登場する。
素早い動きに長く伸ばせる頚部と、獲物を捕らえる為の燻り狂
った顎を持っている怪物と表現されているが、実際の詳細な姿
形は不明な存在。バイオハザードを始め、いろんなゲームや小
説にそれこそ様々な姿で登場する。
ハイ皆さん、おはこんばんちわ。作者でございますよー。さて、声劇台本【弱虫黒
猫と猫嫌いの魔女】、如何でしたでしょうか?童話っぽく仕立てたつもりでしたが
・・・いやはや、上手くいったかどうか微妙なところですな!
元ネタ・・・というか、これを書こうと思ったのは、ツイッターのTLに流れてた
【魔女集会で逢いましょう】を見てて。
演じて下さった方々は作者に感想をいただけると泣いて喜びます。
全ての演者様に感謝をこめて<m(__)m> H30.4.20
H30.4.29、台本一部加筆修正。HAL姉との劇に成功、かつ、黒猫の名前を頂戴し
ました。感謝致します<m(__)m>
H30.5.09、必要演者数修正。2~4→2~5に変更。




