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考古学者は夢を見る  作者: 藤沢正文
第一章 魔女の末裔
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私からの提案



 突然の出来事に執務室は静まり返っていた。


 私は長椅子から立ち上がった状態のまま、驚きに目を白黒させていた。


 マグリットはというと、依然として頭を抱えたまま、ドアの側に突っ立ている。



「村長さん、私には無理です」



 我に返った私は、真っ先にそう述べた。


 マグリットが私に紹介してくれた愛娘のサラは、見た目こそ何処ぞのお姫様の様な美しい可憐な少女だが、中身は別物だった。


 まず、誰に教えて貰ったのか、口がものすごく悪い。



 初対面の私に向かって『ちんちくりん』って……



 確かに身長が少し小さいのは自覚してるが、そんな言い方をしなくてもいいんじゃないかな。



 私、泣いちゃうよ?



 それに、出て行く間際はドアを思い切り蹴ってたよね?女の子はドアなんて蹴らないし、それにあれは普通の女の子の力じゃないよ……



 第一印象から言って、絶対に私とは相容れない事は明白であった。


 私は決意に満ちた表情でマグリットに視線を送った。



「そ、そんな……ユティーナ、君だけが頼りなんだ」



 マグリットは悲壮感に満ちた表情で私に懇願する。


 私も正直に言って、文字を習う事と『資料』を読むのを諦めるのは凄く惜しい。



 ん〜どうしよかな……



 私は顎に手を当てながら、暫く考えてみた。



「提案があるんですけどいいですか?」



 私は折衷案としてマグリットにある提案を持ちかけた。



 私はマグリットから色々と話を聞きたいし、文字も覚えたい、『資料』も読みたい。


 マグリットはサラに勉強して欲しい。



 それならば私が率先して勉強するのはどうだろうか?という案だ。


 私が率先して勉強すれば、サラも勉強に興味を持つかも知れない。もし持たなかったとしても、私がここに通う事でサラと少しづつでも仲良くなれるかも知れないという事をマグリットに説明した。


 本音を言うと、サラに振り回されるのが目に見えてわかる。なので、向こうから接触して来るのを待ち、その間私は好きなだけ勉強させて貰おうと言う魂胆である。



 その提案にマグリットは少し考えた後



「何もしないよりはましか……」



 そう言って、マグリットは提案を受け入れてくれ、私はマグリットの執務室で文字や計算の練習をする事になった。



「じゃあ今日はどうする?そろそろ『4の刻』になるけど、もう帰るかい?」


「え? 『4の刻』って何ですか?」



 マグリットの口から全く知らない言葉が出てきた。


 私は農家の娘だから、日が昇ってから起きて、日が沈んだら夕食を食べて寝るという生活をしていた。


 なので、私は『時刻』という物は無いのかと思っていた。


 しかし『時刻』はあったみたいだ。


 マグリット曰く、日時計の様なものがあって、日の出を0として1の刻、2の刻、3の刻、4の刻、5の刻、日没と言った具合に時刻があるらしい。


 それぞれの『時刻』には村の鐘が鳴るらしいが、私の家は遠いので、その鐘が聞こえなかった様だ。



 通りで、私が知らない訳だ。



 夜は、水時計の様なものを使って同じ様に日没から日の出まで5つの刻を数えるらしいが鐘は鳴らないらしい。



「ユティーナは今日3の刻頃に館に来たんだが、君の話から1の刻頃に家を出て、2刻分歩いていた事になるね」


「大人の人だと、どれくらい掛かるんですか?」


「トゥレイユだと半刻くらいだ」



 え、4倍近く掛かってるんだ。通りで遠く感じる訳だ……


 ………。


 ちょっと待って、その計算で行くと、私3から4の刻の間しか館に居れない事になる。



 それはまずい。



 私の貴重な勉強の時間がたった1刻分しかないのはまずい。今日の調子から考えれば、3の刻に着いたとしても、すぐには勉強できそうにない。


 最悪、勉強せずに4の刻になって帰る羽目になる。それだけは避けなければ…


 私はどうしようかと思考を凝らした。



 結果。



 うん、お父さんに送り迎えしてもらおう!



 それ以外考えられなかった。



 来て帰るだけなんてありえないもんね。



「村長さん、今日はもう疲れたので帰ります。明日からはお父さんに送り迎えしてもらう事にします」



 私がそう述べると、マグリットもそうした方がいいと賛成してくれた。


 そして、私はマグリットに挨拶をして館を後にした。



 来た道を帰る事を思うと凄く気が引けるが、今日だけの辛抱だと自分に言い聞かせて『よし』と気合を入れて帰路に就いた。



 ん?



 どこからか視線を感じたので、私は振り返って辺りを見渡した。が、特に変わった様子はなく、私は再び歩みを進めた。



今回は可也短かったです。申し訳ありません。

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