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僕らは夜と朝の間に  作者: 小泉阿難
7/12

Meet the team 3

感想いただけましたら、大変嬉しいです。よろしくお願い致します。

「・・・俺たち・・・“みんな”?」

 他に誰かいるのだろうか、と葵はきょろきょろあたりを見回した。


「キャオキャオ・ジャンピング・アターック!」


 がさっ!と草むらがざわついたと思うと、小さな影が飛び出してきた。

 小1くらいの青い髪の女の子が、本当にジャンプしながらアタックしてきた。


「わああっ!!」

「あっ!!アイちゃんだっ!!!戻ってきたんだ――っ!!!」

 大きな目をキラキラと潤ませて、女の子は葵に飛びついてきた


「うわぁぁーん!!アイちゃんが戻ってきたぁぁー!」


「キャオ!キャオ!ちょっとまって」

 スズが女の子をひょいと抱えると自分の膝に座らせた


「アイちゃんだよー!スズー!キャオリンうれしいー!」

 涙目ではしゃぐキャオと呼ばれた少女に、スズがまたあの辛抱強い笑顔で、何事かとくとくと言い聞かせる。


「ええ!?じゃーこの人、葵ちゃんなのに、アイちゃんじゃないの?どうしてどうして?アイちゃんは、葵ちゃんなんでしょ?!キャオリンわかんない!」


 葵にも、彼女の言ってることが全くわからない。


「え、と・・・この子も、僕のこと、知ってるの・・?」

 おっかなびっくり訪ねる葵に、スズがおかしそうに笑いをこらえる。


「もちろんだよ!」

 膝の上の子どもの頭に手をやりながら


「この子はキャオリン。現実では、君の親友・・・ていうか幼なじみ?」


「え・・・まさか・・・」


 頭が、新たなショックに耐える準備に入った。


「・・・薫・・?」


「はいっ!渚高校1年4組、新田薫ですっ!でも、その正体は、ミラクル☆カオリンなのですっ!よいこのおともだちは、キャオリンって呼んでいいよっ♪」


 ・・やっぱり・・このキャラは・・

 身長180cmのガタイを誇る犬顔と、少女戦士のペロリと舌を出したロリ顔が重なると、葵の頭の中がぐらりと揺れた。



***


 たしかに、彼らは必ずしも「隠れた」一面ではないようだ。薫は己の2次元少女好きを、葵に隠してくれたことはない。それでも葵がそれをネタに薫をいじったりせず秘匿してるのは、そもそもの葵の性格に加え、薫の小4になる妹の利香が、兄の魔法少女ミラクルプリンセス好きを異常の範疇と気付き始め、必死に隠匿しようとしているのを知っているからだ。


 もしカオが、今のこの自分の姿を見たら、悶絶するんだろうな・・・

 と葵はツインテールにしたブルーの髪に、ピカピカ衣装とキラキラブーツで、スズのお膝にちんまり座って、一生懸命お話を聞いている魔法少女を見て思った。


 ていうか、あいつはロリが好きな変態ではなく、自分がロリになりたい変態だったのか・・・まあ、思いきりどっちでもいいんだけど・・


「じゃあーアイちゃんは消えちゃったけどぉー、葵ちゃんがぁー、アイちゃんの顔でぇー帰ってきてくれたってことぉー?」

 カオリンが、薫のウザ口調そっくりに言う。だが、この姿だとウザいどころか不覚にも可愛い。

 パチパチパチー正解ー!手を叩いて褒めそやすスズ。えへんとちょっと誇らしげなミラクル☆カオリン。

 

「そう、アイちゃんだった時のことは、いろいろ忘れちゃったみたいだけど、まだミツとはピッタリカップルみたいだし、きっと俺たちの快適空間は守られるはずだよ」

「そっかー♪じゃあ、なんにも問題なし!ってこと!?」


 いやいや、あるだろ、問題。激しくあるだろ。

 依然あそこで全然納得してない感じのミツとか、自分のアップグレード版みたいな男子とカップルにされてることに違和感ハンパない僕とか、置いてくな。


 ・・と心の中でいろいろ突っ込んでいると、ふと、ちょっとした疑問が頭をもたげた。


「つか、スズ・・・は、委員長なんですよね・・?あの、小田美鈴・・・」

「そうだよ。あ、だから俺ら同い年ね。タメ口でいいから」


 さわやかに笑う兄貴っぽい青年に、あの可憐で清楚な眼鏡女子がどうしても重ならない。


「じゃあ、薫は・・少女戦士オタクなこと、委員長にはバレちゃってる、ってこと?」


 さすがの葵も、幼なじみのこんな性癖をオープンにするのは、どうかと思って話のタネにするのも自重している。親友の高校生生活も、自分のも、等しく良きものになればいい。たとえその親友が、高身長でイケメンで日常的に女子に告られる、彼女いない暦=年齢の葵にとって、いろいろイラッとする要素を備えた男だとしても、だ。


「あー、それな。ていうか、アラタ君のこれ、一応秘密なのかー。」


 スズは膝の上の少女戦士と顔を見合わせて、フフっと笑う。


「わぁ〜・・アイちゃん・・・じゃなくて、アオイちゃん、ホントに、みんな忘れちゃったんダ~☆ウケる~」

「そうみたいだねー?じゃ、教えてあげよっかー?」


 ミラクルカオリンがスズの膝で、うんうん!と笑う。


「・・・あのね、葵君、薄々分かってきたと思うけど、君はもうずっと前から、「アイちゃん」として俺らとこの夢の中で会ってるんだ。」


 それは、どうやらそうらしい。その「俺ら」が、まだこれで全員じゃない感じに、ちょっと落ち着かない気持ちもするが・・・


「でもさ、君、それを現実で、覚えていた事って、ある?」


 ――――あ――――?


 ない。こんな夢見るの、初めてだ。と思い込んでいた。


「そうでーす!みんな、どうせ、起きたら忘れちゃうんでーす!だからぁー、どんなヒミツもぉーしゃべっちゃったってぇー、へーきなんだよーだ!☆」

 ねー♡と顔を見合わせて笑うスズとカオリン。


「特にミツとアオイくんは、そのあたり心配する必要ないよ」


 スズは相当の子ども好きらしい。話しながらも始終カオリンに笑顔を向け、カオリンの懐きようも半端ない。


「君らは、珍しいパターンで、現実ではまだお互いの事知らないのに、ここでは知り合ってるらしいんだ。だから、なに暴露したって、リアルでは面識のない他人だから、無問題(モーマンタイ)。」


 知性と好奇心を宿したスズの目が葵の方を向く。

 そこには、めずらしい蝶を見つけた少年のような光が宿っていた。

「本当、君らは数奇な2人だよ」


「・・いや、もう、そうでもないぜ」

 それまでずっと、頑に沈黙を保ち続けていたミツが、口を開いた


「やっと、現実でも出会ったみたいだ。俺ら。」


 そしてやっと、葵の顔に、まともに目を向けた。


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