第八劇『覚醒』
真雪「え?だ、誰?子供?」
ネオス「失礼だなぁ。これでも君の何十倍も生きてるのに。ま、それはそうと君達に少し聞きたいことがあるんだよ。」
真雪「聞きたいこと?そ、その前にあなたは誰なの?」
ネオス「この言葉を言うと分かるかな?『天神地祇』と…。」
真雪「まさかっ!」
ネオス「ふふ…そっちの女の子は僕とは初めてじゃないよね?」
フィアン「あの時は顔を隠されておられたので、気がつきませんでしたけれど、そのお声は…。」
ネオス「そう、君の父親を殺したのは僕だよ。」
真雪「えっ!?な、何故そんなことを?」
ネオス「何故…?君達は許せるのかい?奴らの行ってきた醜い茶番を…。奴らのせいで、どれだけのエルフが死んだと思う?」
フィアン「……。」
真雪「フィアンさん…。で、でも何も殺すことないじゃない!確かに絶対許せることじゃないけど、城ごと破壊したりなんて……。」
ネオス「そうか…君は知らないんだね。あの両国の城に住んでる奴らは連帯責任だよ。見て見ぬ振りをしてたんだからね。」
真雪「でも全員が知ってたわけじゃないでしょ?知らない人もいたはずよ!」
ネオス「まあ、あの城に仕えてたのが不運だったね。」
真雪「不運…?あなたは一体何様なのっ?何がしたいのっ?」
ネオス「ふ…僕はこの世界を浄化するものだよ。汚いものは全て排除するんだ。そのために君達にここに来てもらったんだからね。」
二人「!」
(その頃天満は)
天満「とりあえず『極の宝塔』を目指さなきゃな。」
アイズ「『極の宝塔』?お前、死にたいのか?あそこは危険なんてもんじゃないぞ!」
天満「らしいな。でも強くなるためなんだ!」
アイズ「だが、あそこは霊神を持ってない奴が行くところじゃない。」
天満「アイズは持ってるのか?」
アイズ「当たり前だ。でなければ、こんな所に来ない。」
天満「………。」
アイズ「分かったら早く帰れ!」
天満「ありがとうな。」
アイズ「な、何言ってる!」
天満「でも引くわけには行かないんだ。待ってる人がいるから。」
アイズ「お前は…死ぬことが怖くないのか?」
天満「怖いに決まってるだろ?だけど、何もできないのが一番怖いから…。アイツ…地門にも負けない強さが欲しいんだ。体も心も。」
アイズ「地門?誰だ?」
天満「バケモノだよ。俺の中にいるもう一人のな。『ジアス』ともいうんだけど…。」
アイズ「『ジアス』だと!お、お前、まさか…?『ディーノ』か…?」
天満「やっぱシャウトが言ってたとおり、こっちじゃ有名なんだな。(ボソ)」
アイズ「あの『マーティア』さんの?」
天満「母さんを知ってるのか?」
アイズ「そりゃ知ってるさ。僕は……『ラフォール国の騎士団長』だからな。」
天満「え?見た目は俺より年下に見えるのに…強いはずだな。」
アイズ「何言ってる。僕は十四歳だぞ。」
天満「へ?そ、そうなのか?」
アイズ「団長の座だって、前団長に討ち勝って得たものだ。」
天満「じゃあなおさらだ。俺も、負けてられない!」
アイズ「そうか…あの方の息子だったのか…。」
天満「でもなんでアイズは殺されなかったんだ?城に居たんじゃなかったのか?」
アイズ「居たさ………お前は、この戦争の真意を知ってるか?」
天満「……ああ。」
アイズ「僕は…姉さんに助けられたんだ。その時、真実を知った。」
天満「姉さん?」
アイズ「ふぅ…無駄話はここまでだ。着いたぞ…ここが『極の宝塔』の入口だな。」
天満「え?あ、ああ。…よしっ!」
アイズ「ここに、手がかりが…。」
天満「不思議な感覚だな。色々な霊神がいるんだな。だけど、『真霊神』じゃないんだな。」
アイズ「上に登る度に霊神の強さが増しているな。同時に狂暴な邪霊も増えてるな。ん?噂をすれば…。」
邪霊「ギギギギィィィィィ!」
天満「機械の邪霊?」
アイズ「こんな邪霊もいるのか?」
天満「邪魔するなら、蹴散らすっ!!」
アイズ「ほう…あの時よりは動きがよくなってるな。」
天満「ハアッ!『断双飛燕斬』っ!」
邪霊「ギギギギィィィィィ!『ボルトレーザー』!」
天満「な!うわぁぁぁ!」
アイズ「早い!やはり強いな!仕方ない……くらえっ!『羅千華』っ!」
邪霊「ギギ?」
アイズ「効いてない?なるほど、霊神の力しか通じないのか。なら、久々にだすか。……『閃光華』っ!」
天満「は、早い…。」
アイズ「どうだ?何も感じなかっただろ?僕の光は全てを瞬時に裁く!」
天満「す、すげぇ…!」
アイズ「先に行くぞ。」
天満「………。」
アイズ「どうした?」
天満「アイズがいなきゃ、俺はやられていた…。」
アイズ「だから言っただろ。霊神を持ってない奴がくる所じゃないと。属性攻撃しか効かない奴がいるんだ。」
天満「じゃあなんでシャウトがここに来させたんだ?シャウトならそんなこと知ってるはずなのに…。」
アイズ「シャウトって…。お前、シャウトと知り合いなのか?」
天満「あ、ああ。」
アイズ「霊神の中の霊神『鏡のシャウト』と知り合いだったとはな。」
天満「え…?えぇーーーーっ!」
アイズ「知らなかったのか?奴は『三霊神』の一人だぞ!」
天満「『三霊神』?聞いたことないな。」
アイズ「これだから無知は困る。『三霊神』とは、『オルテナ』を守護する『真霊神』のことだ。他の霊神とは違って、人にもエルフにも獣にも変化できるし、力も絶大だ。」
天満「あのシャウトが…?」
アイズ「そんな奴まで現れたとなると、本当に『オルテナ』に危機が訪れてるみたいだな。」
天満「だったらなおさらだ!なんでこんなとこに来させたんだ?」
アイズ「大方、先読みしたんだろう。僕がここに来ること。そしてお前と一緒に『極の宝塔』に行くことをな。奴は未来を垣間見ることができるって聞くからな。」
天満「は、はぁ…。」
アイズ「ちっ、僕はまんまと利用されたってわけだ。だがあのシャウトがコイツを強くするために…。『オルテナ』を救うために天満が必要ということか…?だが僕がここに来たのは、『これ』に導かれてきたんだ。ここに手がかりがあるんじゃないのか…?」
天満「…アイズ…俺に力を貸して欲しい。」
アイズ「え?」
天満「悔しいけど、俺一人じゃ上まで行けない。頼む!」
アイズ「………僕は頂上に用がある。ついてくるのは構わない。」
天満「あ、ありがとう。」
アイズ「れ、礼なんてよせ!ほ、ほら、さっさと行くぞ!」
天満「ああ。もうすぐ頂上だ。」
(しばらく歩く)
アイズ「ここを登れば、頂上か…?」
?「何者だ?」
二人「!」
?「何しに来た?」
天満「誰だ?」
?「私はここの『守人テントゥ』だ。この先に通すわけにはいかない。」
天満「俺はこの上に用があるんだ!邪魔するなっ!」
アイズ「なるほどな。守人までいるとは、『霊神王』の降り立つ場所というのも、あながち嘘じゃないかもな。」
テントゥ「貴様らが何の目的でここに来たのかは知らないが、わが主のため、ここを通すわけにはいかない!」
天満「じゃあお前を倒して、押し通る!」
テントゥ「できるものならやってみるがいい!」
天満「行くぞっ!『飛燕斬』っ!」
テントゥ「あまいっ!『真・飛燕斬』っ!」
天満「ぐわぁぁぁ!」
アイズ「天満!このっ!」
天満「待ってくれ!」
アイズ「な!」
天満「ここは俺に、俺一人でやらせてくれ…。」
アイズ「アイツとお前じゃ実力は段違いだぞ!」
天満「頼む!これくらい乗り越えなきゃダメなんだ。だから、頼む!」
テントゥ「……。」
アイズ「天満…分かった。勝手にしろ。」
天満「サンキュー。行くぞっ、テントゥ!」
テントゥ「……何故だ?何故お前はそこまで力を欲する。」
天満「そんなの、強くなりたいからに決まってるだろ?」
テントゥ「……。」
天満「強くならなきゃダメなんだ。」
テントゥ「!」
天満「大切な人を守るために、何にしたって強さが必要なんだ!早く強くなって助け出してやりたい。こんなとこで、足踏みしてる暇は、俺には無いんだ!」
テントゥ「そうか、お前も誰かを守るために戦うんだな。……ならば、どちらの想いが強いか、勝負だっ!」
天満「望むところだっ!」
テントゥ「こちらから行くぞっ!『真・飛燕斬』っ!」
天満「くっ!あれだ!俺の『飛燕斬』よりも数倍強い!くそっ!うわぁぁぁ!」
テントゥ「どうやら、私の守る想いの方が強いみたいだな!」
天満「はあはあはあ……俺…はここまでなのか……真雪…。」
(その頃真雪は)
真雪「天くん…?」
ネオス「ん?」
フィアン「どうかなされましたか?」
真雪「天くんの声が聞こえる。天くん……。」
フィアン「真雪さんのお体が…?」
ネオス「これは『伝心の光』!はは…見つけたよ!『神代』!」
真雪「天くん…。」
(その頃天満は)
天満「はっ!ま、真雪!感じるよ………そうだよな。お前が待っててくれてんだもんな。こんなとこで…こんなとこで負けてられるかよっ!うおぉぉぉーーーーっっっ!」
テントゥ「何?ま、まさか…あの瞳の色………『翡翠眼』!バ、バカな!」
天満「行くぞ、テントゥ!『真・飛燕斬』っ!」
テントゥ「な!それは私の…?くっ!『真・飛燕斬』っ!」
アイズ「何だ!何が起こったんだ?いきなり天満が奴の技を!」
天満「俺はもう負けない…負けられないんだっ!『爆燕斬』っ!」
テントゥ「う、受けきれ……ぐわぁぁぁぁっっ!」
アイズ「アイツ、『飛燕斬』を進化させたのか?」
天満「はあはあはあ……お…俺の…想いの力…の……勝ちだ。」
テントゥ「ふ…そのようだな。お前の想い…確かに強かった…。さあ…トドメをさせ…。」
天満「え?」
テントゥ「私を殺さなければ、ここは通さない。」
天満「……できない。」
テントゥ「な、何故だ?力が欲しいのではないのか?」
天満「欲しいさ。でも、俺が欲しいのは誰かを殺す力じゃない。大切な人を守る力が欲しいんだ!」
テントゥ「……お前の名は?」
天満「天満だ…。」
テントゥ「天満か…あまい奴だな…。」
?「気に入ったよ!」
天満「え?」
テントゥ「『シンセーテン』様!」
アイズ「『シンセーテン』だと?」
天満「え?知ってるのか?」
アイズ「さっき言った『三霊神』の一角だ。まさかここに…。」
シンセーテン「上までおいでよ。君の話が聞きたい。」
テントゥ「我が主が気に入るとはな。ついてこい天満!」
天満「アイズもいいか?」
テントゥ「……いいだろう。」
アイズ「天満…?」
天満「アイズのお陰でここまで来れたんだ!当然だろ?」
アイズ「………。」
テントゥ「さっさと来るんだ。行くぞ。」
(頂上に到着)
シンセーテン「やあ、さっきの戦いは凄かったねぇ。」
天満「え…と。」
シンセーテン「ああ、紹介が遅れたね。僕は『天のシンセーテン』だよ!ここの主をやってるんだ。」
天満「へ、へぇ…。(随分小さいんだな…)」
シンセーテン「今小さいって思っただろ?」
天満「え?あ、あははは…。」
シンセーテン「まあいいや。やっと会えたね、『天駆ける者』…。」
天満「え?」
次回に続く