第五劇『虚説』
ソリッド「君達ーーー!」
天満「ソ、ソリッドさん…。」
ソリッド「今のは君達がやったのか?助かったよ!」
天満「いや、倒したのは彼です。」
ソリッド「彼は?」
ゼロ「お初にお目にかかります。僕は神官ゼロといいます。」
(天満はこれまでの経緯を話した)
ソリッド「なるほど。まさか『ラグミア』までが…。実は各地で邪霊が現れ、町や村などを襲ってるという情報が入ったんだ。」
天満「本当ですかっ?一体何が…?」
ソリッド「それに、もう一つ重大な事実が分かった。実は……。」
天満「どうしたんですか?」
ソリッド「もう戦争は………起きない。」
天満「ど、どういうことですか?戦争が起きないって!天と地のエルフが和解したんですか?」
ゼロ「天と地の双方の国が潰された。つまり、天の『エーテル国』と地の『ラフォール国』が死んだ…ということですか?」
皆「!」
ソリッド「そのとおりだ。両国が何者かによって滅ぼされた。」
ミラァ「誰が…何のために…?」
ソリッド「それぞれの国王の遺体には刀傷で、こう書かれていたそうだ。『天神地祇』と。天と地の神という意味だ。」
真雪「神?え?」
ゼロ「どうやら動き出したようですね。(ボソ)」
レイダー「どうするんだ?このまま同行する気か?」
ゼロ「言ったでしょう。しばらくは様子見だと。それに、両国を落としたのは僕も知らなかったですからね。もしかしたら『あの方』が直接なさったのかも。」
ソリッド「とにかく、この世界に何が起こってるのかを調べる必要がある。」
天満「俺達はどうすれば?」
ソリッド「そうだな…ゼロと言ったね。君の入軍を認める。むしろこっちからお願いしたいくらいだよ。君ほどの力があれば、きっとみんなの役に立てるよ。」
ゼロ「ありがとうございます。」
ソリッド「そして君達六人には、滅ぼされた『エーテル国』に行ってもらいたい。そこで現状を把握した後、『ラフォール国』にも行ってもらいたい。それぞれを詳しく調査してきてくれ。」
天満「わかりました。それじゃ早速。」
ソリッド「くれぐれも気をつけて。『オルフェリア』の導きが共にあらんことを。」
(『マドラド』から出る)
天満「ゼロさん。」
ゼロ「ゼロでいいですよ。これからは仲間なんですから。気軽にタメグチでいきましょう。まあ、僕は性格上こんなですから、皆さんにタメグチはきかないですが。」
天満「じゃあゼロ…君は何者なんだ?その力、霊神だけのモノじゃない。」
ゼロ「それは、この『タリスマン』のお蔭です。これは力を増幅してくれるんですよ。しかしさすがは『ディーノ』さんですね。それに気づくなんて!」
レイダー「『タリスマン』ねぇ…。」
天満「悪いけど、その名前で呼ばないでくれ。今の俺は天満だ。」
ゼロ「分かりました。」
ミラァ「それにしても、戦争が起こらないって聞いた時は安心したなぁ〜。伝説みたいに『オルフェリア』が止めてくれたのかと思っちゃったよ。」
ゼロ「少し違いますね。」
ミラァ「え?何が?」
ゼロ「『オルフェリア』が止めたというところです。」
琴花「戦争を止めたんじゃないの?」
ゼロ「おや?知らなかったのですね。正しくは、止めたのではなく止まったんです。」
剣斗「どういうことだ?」
ゼロ「確かに『オルフェリア』が現れたのは本当です。ただし、真実は『オルフェリア』と『ある霊獣』が戦ったせいで、空が裂け、大地が割れ、海が渇れ、エルフ達は戦争どころではなくなったのです。この二体の争いを止めなければ、『オルテナ』が崩壊する。そのため、戦争は一時凍結され、天と地のエルフが共闘し、『霊獣』の方を封印することに成功した。まあ後にも先にも全てのエルフが、共に手を合わせたのはこの時だけでしょうね。」
琴花「ある『霊獣』って?」
ゼロ「『オルフェリア』が現れる前に、空から一体、大地から一体生物が現れ、次第に融合していった。それは『双頭の霊獣』でした。そしてエルフネームで『ドリューマ』と言います。『オルフェリア』は『ドリューマ』を止めるために現れたと言われています。」
天満「ホントかゼロ?だったらなんで今まで真実がねじ曲がって伝えられてたんだ?」
ゼロ「簡単ですよ。誰かが隠蔽したんですよ。」
天満「何のために?」
ゼロ「封印する時、ある一人の少女を『人身御供(ヒトミゴクウ』)として利用しました。その少女の名前は『アーミア』、エルフネームで『平和』を意味します。」
天満「そうか……だから隠蔽したのか…。」
琴花「どういうこと?」
剣斗「バカちん…。」
琴花「な、何よーっ!アンタは分かんのっ?」
剣斗「ええ…え…と…と、とにかく続きを聞こうじゃないか!琴花くん!あははは…!」
琴花「指折るよ!」
剣斗「いいっ!」
ゼロ「お二人のために説明しましょうか。隠蔽した理由…それは、今の天地の国王達(殺されましたが)、後世に悪い印象を残したくなかったからです。国王ともあろう者が、『人身御供』をしてまで、自分の国を守りたい、そんな事実を残したくなかったのです。だから、国王達は真実を知ってる者を………殺した。戦争を口実にしてね。エルフは長生きですからね。真実を伝えられる者を生かしたくなかったのです。」
真雪「ひどい!ひどすぎるよ!じゃあ今までの戦争は何なの!」
天満「ただのガス抜きか…。新鮮な空気だけを残すために、戦争を起こし、真実を闇の中に葬ったのか。」
剣斗「じゃあゼロ、アンタが戦争を起こさせたくないっていうのは!」
ゼロ「そうです。最初の戦争はともかく、それ以降の戦争は、間違いなく隠蔽工作です。今度の戦争も両国が仕掛けた、『知る者』を一掃するための茶番です。こんな愚かな行為を許してはいけない、そう思ったからです。」
天満「それにしても、ゼロは何故そんなに詳しく知ってるんだ?」
ゼロ「…僕には母がいました。母は………『アーミア』と友達でした。」
皆「!」
ゼロ「母は亡くなるまで、『アーミア』の名前を呼んでいました。そして、言葉にはしませんでしたが、国王達を憎んでたはずです。」
天満「そうだったのか…。ゴメン、辛いことを思い出させて。」
ゼロ「いいですよ。」
真雪「あ、それじゃあ国王達を……国を滅ぼしたのは!」
ゼロ「ええ、間違いなく真実を知ってる者の仕業でしょうね。」
レイダー「おい、いいのか?そこまで教える必要がどこにある!」
ゼロ「これで彼等がどう動くのかが見たいのですよ。」
レイダー「観察の次は演出かよ…。」
天満「ありがとうゼロ。真実が分かって良かったよ。その話を聞いて、もう一つ確かめなきゃいけないこともできたし。」
真雪「何を?」
天満「俺の母さんも真実を知ってるから、命を狙われてるのかもしれない。母さんは父さんとの絆が原因だって言ってたけど、もしかしたら…。」
ゼロ「ま、それだけが原因じゃないですけどね。(ボソ)」
天満「とりあえず、『エーテル国』に急ごう。」
(『エーテル国』に到着)
真雪「城があったはずなのに、跡形もない…。」
天満「ん?そこにいるのは誰だっ!」
?「兵供が夢の跡。まさにだな。」
天満「まさか、お前がやったのかっ!」
?「お前達こそ何者だ?人間もいるようだが。」
天満「質問してるのはこっちだ!お前がやったのかっ!」
?「だとしたらどうする?」
天満「ここで捕える!『疾空刃』っ!」
?「ふ…。」
剣斗「効いてないぞ!」
?「お返しだ。『烈千華』っ!」
天満「な、はやいっ!うわぁぁぁ!」
剣斗「天満っ!」
?「弱いな…落城とは無関係か…?」
天満「ま…待て……お前は…?」
?「………『アイズ』。」
天満「ぐ…。」
真雪「天くん!」
アイズ「…そいつの名は?」
真雪「え?て、天満…くん。」
アイズ「覚えておく。」
剣斗「あ、待てーーっ!くそっ!行っちまった!」
ゼロ「さーて、何者でしょうね彼は…。」
真雪「きゃ!」
琴花「どうしたの真雪?」
真雪「天くんが…。」
剣斗「天満がどうしたって?」
天満「う……うう…。」
ミラァ「天満?どうしたの?」
真雪「ダメっ!ミラァ!」
天満「うおぉぉーーーっっっ!」
ミラァ「きゃぁぁぁっ!」
ゼロ「もしかして……出てくるのか?」
剣斗「お、おい。大丈夫か天満?」
?「触るな!」
(剣斗を吹っ飛ばす)
剣斗「うわぁ!」
琴花「剣斗!ちょっと扇くん、何やってんのさ?」
ミラァ「天満…?一体全体何がどうしたっていうの?」
?「天満だと?俺をあんな弱虫と間違えんな!」
ミラァ「え?は?」
?「ふう〜〜〜やっと出られたな。ん?おお、真雪じゃねえか!久しぶりだな。」
真雪「『地門』くん…。」
剣斗「何だって!じゃああれが、もう一人の天満か?」
地門「おい、言葉に気をつけな。何がお前の最後の言葉になるか分からないぜ。」
剣斗「…っ!これが本当にあの天満なのか?べ、別人じゃねぇか…。」
地門「言葉に気をつけろって言ってんだろがっ!『地雷撃』っ!」
剣斗「うわぁぁぁっ!」
琴花「きやぁぁぁっ!」
ゼロ「くっ!」
地門「へぇ〜俺の攻撃を受け止めるとはな。なかなかやるじゃねぇか。」
ゼロ「まさか、霊神も持たずにこの威力だとは…!どうやら、身体能力は『ジアス』さんの方が上みたいですね。」
地門「!」
琴花「じあす?」
地門「てめえ…天満はともかく、俺のエルフネームを知ってるとは、何者だ?」
ゼロ「お気になさらないで下さい。ただの神官ですから。」
地門「嘘つくな!ただの神官なわけねえだろうが!……ふ…まあいいか、吐く気がないなら、痛めつけて吐かせてやるよ!」
ゼロ「しょうがないですね。皆さん、援護を願います。」
皆「はいっ!」
地門「『双蹴連撃』っ!ツォラァァ!」
真雪「『ブルーシールド』!」
琴花「『エアショット』ッ!」
ミラァ「アタシも!ファイアボ……。」
地門「うっとうしいっっ!」
ゼロと剣斗以外「きゃぁぁぁ!」
剣斗「頼むギルティ!アイツを止める力をくれ!頼む!アイツを止めたいんだ。………あ、頭ん中に言葉が…。」
ゼロ「これはマズイですね。術詠唱の時間は邪魔されるでしょうし、かといって、この方達を守りながらというと…。」
地門「そろそろあの世に送ってやるよ!『葬送舞撃』っ!」
ゼロ「仕方ないですね!ここで皆さんを殺させるわけには!」
剣斗「どけっ!」
ゼロ「!」
剣斗「目を覚ませ!天満ぁぁっっ!『雷襲牙』っ!」
地門「へっ!こんなもの!くっ…ぐわぁぁぁ!」
ゼロ「お、お見事!それにしても、恐るべき成長速度ですね。」
剣斗「はあはあはあ……や…やったのか…?」
琴花「剣斗…。」
剣斗「大丈夫か琴花?」
琴花「何とかね…。ところで、扇くん大丈夫かな?死んじゃってないよね?」
剣斗「バカ!殺すかっ!だけど、直撃したからな。早く手当てしてやんねえと…。」
真雪「う…うう…天くん?」
ミラァ「大丈夫真雪?」
真雪「ミラァちゃんこそ…。」
地門「ぐうあぁぁぁぁっ!てめぇぇぇらぁぁぁっっ!」
皆「!」
ミラァ「ま、まだ?」
地門「真雪ぃっ!テメエも覚悟しろよっ!」
剣斗「くそっ!」
ゼロ「ん?」
?「はあっ!」
地門「痛っ!な…何…?お、お前……くっ!」
剣斗「シャウト!」
シャウト「地門が現れたら、気絶させる。そういう約束だったな天満よ。」
次回に続く