第三十一劇『治癒』
天満「ふぅ…でもさすがアスフォートだよ……疲れたぁ…。」
アスフォート「ふ…君がこんなに強くなってるとはな。正直驚いたな。」
シャウト「ところでアスフォート。お前がネオスについたのはやはり…。」
アスフォート「ああ…ネオス様…いや、ネオスは『血の霊神』を与えてくれた。それに、ついてくればもっと強くなれると言ったんだ。」
シャウト「だが実際はそうではなかったのだろう?」
アスフォート「そうだな…私が間違ってた。ぐっ…!」
天満「アスフォート!」
シャウト「いかん!サクリファイスに『血』と『生命力』を吸いとられてる上に、連続しての『超霊化』!アスフォートの体の限界を越えてしまったんだ!」
アスフォート「やっ…と……見つけた……の…に……死ぬ……のか……。」
天満「どうすればいいんだ!」
シャウト「くそっ!ただ単に『錬』が減っているだけなら何とかなるんだが、『血』や『生命力』なんてどうすれば…!」
アスフォート「ディーク……すま……ない…。」
天満「諦めるなっ!」
アスフォート「天…満…。」
天満「ディークを裏切るのはもう許さないぞ!お前は生きてやることがあるだろ!」
アスフォート「…うう……そ…うだ……私は…生きたい…。」
シンセーテン「シャウト!何か手は無いの!」
シャウト「く…どうすれば…!」
にゅう「にゅうに任せるにゅ〜!」
天満「え?に…にゅう?」
シャウト「…そうか!『聖錬金』か!」
にゅう「そうにゅ〜!治すにゅ〜!」
ミラァ「にゅうってばすっごぉいっ!」
天満「え?でもにゅうの力って物だけを直すんじゃないのか?」
にゅう「何でも治すにゅ〜!人でもエルフでもにゅ〜!治すにゅ〜!」
シャウト「頼んでもいいか?」
にゅう「頑張るにゅ〜!にゅぅぅぅぅ……!」
シンセーテン「にゅうの体から光が!」
天満「頑張ってくれ、にゅう!」
ミラァ「にゅうからすごい『錬』を感じるよ!」
にゅう「にゅうチャージ終わったにゅ〜!まずは『生命力』を戻すにゅ〜!にゅっ!」
シャウト「なるほど…『レストピア』とは創り出す能力なんだな。」
天満「創り出す能力?」
ミラァ「新しく創るってこと?」
シャウト「ああ、自分の『錬』を対象物に注入し、『生命力』なら『生命力』に自分の『錬』を変換させて治すんだ。つまりにゅう達『ポンコロ』は自由に『錬』を変化させることができる種族なんだ。」
天満「ちょっと待って!自分の『錬』て……それって…!」
シャウト「ああ…にゅうにとっても危険が伴う力なんだ。言ってみれば『錬』は『生命力』みたいなものだ。使い過ぎると危険だ。我々が『超霊化』すると、後遺症として体に痛みが走り、急激に『気力』『体力』が衰える。それは体内の『錬』が激減するからだ。言ってみれば『錬』は『精神の力』なんだ。」
天満「じゃあにゅう達はそんな辛い想いをしてまで、俺達のために舟を直してくれてたのか…。」
シャウト「そうだ…そして今…私達の仲間を助けるために頑張ってくれているんだ。」
にゅう「にゅぅぅぅぅ……!」
天満「くそっ!」
にゅう「にゅ!天満!」
天満「残り少ないけど、俺の力も使ってくれ!」
にゅう「天満……ありがとうにゅ…。」
シンセーテン「僕の力もね。」
シャウト「私もだ。」
ミラァ「アタシだって!」
にゅう「シンセーテン…シャウト…ミラァ……頑張るにゅ〜っ!」
アスフォート「…ありがとう…。」
(剣斗は)
剣斗「う……うう…。」
?「目が覚めましたか?」
剣斗「はっ!お前は誰…ぐっ!」
?「まだ動かない方がいいですよ。」
剣斗「お前…いや、アンタが助けてくれたのか?」
?「助けない方が良かったですか?」
剣斗「え、いや……ありがとう。」
?「ふふ…素直な方ですね。ああそうそう、これを渡しておきましょう。」
剣斗「何だコレ?」
?「それはあなたに飲ませた薬です。また使う時もくるでしょう。」
剣斗「薬?…俺を助けてくれたっていうことは、味方なのか?」
?「味方……まあ、今あなた達に敵意は無いですよ。」
剣斗「一体アンタ何者なんだ?」
?「いずれ分かりますよ。この戦いの果てに何があるのか……その先で…またお会いしましょう。新垣剣斗くん…。」
剣斗「な!消えた!……一体何なんだよ…。ん?あれ?体の痛みがとれてる!アイツの薬のお陰…なのか?まあいいや、琴花達を追わなきゃな!」
(琴花は)
フーディン「どうしよう…?どうすればいい…?琴花ぁ……。」
剣斗「あれは!琴花!」
フーディン「剣斗!琴花が!」
剣斗「おい琴花!しっかりしろっ!」
フーディン「『超霊化』の反動だよ〜!」
剣斗「俺と同じか…はっ!さっきもらった薬!本当に効くのか……く…悩んでても仕方ねえ!琴花、これを飲め!」
琴花「う…うう……。」
フーディン「琴花ぁ…。」
剣斗「頼む!効いてくれ!」
琴花「あ…け…剣斗…?」
剣斗「琴花!大丈夫か!」
琴花「アンタ…どうして…?」
剣斗「お前を追いかけてきたんだよ!」
琴花「勝ったん…だね…。」
剣斗「お前もな!」
琴花「はは……ちょっと無理しちゃったかも…。」
剣斗「あはは…俺も死にそうだったよ…。」
琴花「やっぱり……お互いバカだね…。」
フーディン「琴花ぁ…。」
琴花「フーちゃん…心配かけてごめんね。」
フーディン「良かったよ〜。」
剣斗「顔色が良くなってきた…。あの薬……良かった…。」
琴花「剣斗?」
剣斗「え…ああ。立てるか?」
琴花「うん。何か体の痛みも引いたみたい。ありがとう剣斗。」
剣斗「ああ。ユズキさんは先に?」
琴花「うん。大丈夫かな?」
剣斗「よし!行こう!」
琴花「うん!行くよフーちゃん!」
フーディン「うん!」
(ユズキは)
シズマ「くそぅ……ゼロって言いやがったなアイツゥ!オレッチのユズキをよくもぅ!」
ユズキ「シ…ズマ…。」
シズマ「ユズキィ!」
ユズキ「うっ…。」
シズマ「無理すんなよユズキィ!」
ユズキ「大丈夫です。さしたるケガもありません。どうやらただ気絶させられただけのようですね。はあ…。」
シズマ「ユズキ…。」
ユズキ「私は…全然敵わなかった……何もできなかった…。」
シズマ「つ、次はイケるさぁ!オレッチだってまだ全力出してないぜぇ!だから次は!」
ユズキ「……。」
シズマ「……。」
剣斗「ユズキさぁぁーーん!」
ユズキ「剣斗さん?琴花さんも!」
琴花「大丈夫?」
ユズキ「え、ええ…。」
シズマ「ユズキ…。」
剣斗「ケガは無いようだけど……何かあったんですか?元気無いみたいだけど…。それにこんなとこで何を?」
ユズキ「それは…。」
シズマ「ユズキ……二人とも、オレッチが説明するぜ。」
(シズマは説明をする)
剣斗「そうか…『氷の悪魔』が見つかったのか…。」
琴花「でもユズキさんが一撃でやられるなんて…。人間だよね…そんなに強いの…?」
シズマ「本当に『悪魔』だぜ!何をされたかも分からなかった…。くそっ!オレッチがもっとしっかりしてればユズキを…!」
ユズキ「ありがとうシズマ。貴方には本当に感謝しています。」
シズマ「へへ…オレッチはユズキが大好きだからな!次は必ず守るぜ!」
剣斗「でもどんな奴なんだ?やっぱり冷たくて怖い奴なのか?」
ユズキ「いいえ。」
シズマ「ユズキ!」
ユズキ「もう大丈夫です。くじけてても仕方ありません。…ここからは私が説明します。」
シズマ「ユズキ…。」
ユズキ「外見は怖くありません。それどころかずっと微笑んでいました。長い杖を持っていて、『氷』の霊神を……確か名前は…レイダーと言ってました。」
剣斗と琴花「えっ!」
ユズキ「ど、どうされたんですか?」
剣斗「ユ、ユズキさんに一つ聞くね…。」
ユズキ「はい…。」
剣斗「ゼ…ゼロっていいませんでしたか?そいつの名前…。」
ユズキ「ご存知だったのですか?」
琴花「私達の仲間よ…。」
ユズキ「どういうことですか?」
(ゼロのことを説明)
ユズキ「そうだったのですか…。」
剣斗「アイツ…俺達のことを騙してたのか…。くそったれ!」
琴花「ゼロ…何で…?」
ユズキ「さっき微笑んでいたと言いましたが、ゾッとするような笑顔でした。冷たく…ただ冷たい笑顔でした。」
剣斗「急ごう!」
琴花「剣斗?」
剣斗「今は考えてもしょうがない!俺達のすることは一つ!前に進むだけだっ!」
琴花「剣斗!」
ユズキ「そうですね。後悔している暇があれば、とにかく動く。それが一番ですね!」
剣斗「行きましょう!」
琴花「うん!」
ユズキ「はい!シズマ!」
シズマ「おう!」
ユズキ「次は負けない!絶対!」
剣斗「今は前に!そうだろ、天満!」
(天満は)
天満「はあはあはあ……にゅう…。」
にゅう「もう大丈夫にゅ〜!天満達のお陰だにゅ〜!」
天満「違うよ。全部にゅうのお陰だよ。本当にありがとう。君がいてくれて本当に良かったよ。」
にゅう「嬉しいにゅ〜!嬉しいにゅ〜!天満のためならにゅ〜にゅ〜にゅ〜!」
シャウト「本当に感謝するよ。」
ミラァ「疲れたぁ…もう空っぽだよぉ…。」
天満「アスフォート?」
アスフォート「にゅう……すまなかった…。」
にゅう「にゅ?」
アスフォート「君の家族を傷つけ、ゴミだとも言った…。それなのに私を…。」
にゅう「分かってくれたらいいにゅ〜!間違いは誰でもやるにゅ〜!次にしなければいいにゅ〜!にゅ〜!」
アスフォート「ありがとう……本当にすまなかった……ありがとう…。」
にゅう「にゅ〜!」
天満「アスフォート、これからどうするんだ?」
アスフォート「私は…旅に出る…。」
シャウト「探しものか?」
アスフォート「ああ…。」
シャウト「そうか…。」
アスフォート「この先にネオスがいる。行け。」
天満「ああ。アスフォート…また会えるかな?」
アスフォート「分からない……だが…そう願う。」
天満「俺もだ。」
アスフォート「ふ…天満。」
天満「何?」
アスフォート「気を付けろよ。」
天満「…。」
アスフォート「ネオスの持つ闇は、私とは比較にならない。奴は本当に恐ろしい。そして本当に…強い。闇に飲まれるな。」
天満「ああ、ありがとう。」
シャウト「では行こうか!」
天満「ああ!じゃあまたな、アスフォート!」
アスフォート「気を付けろ天満……信じてるぞ…。」
天満「はあはあはあ……はあ…はあ…。」
ミラァ「はあはあはあ……はあ…はあ…。」
シャウト「二人とも!」
天満「くそっ……体が…。」
ミラァ「アタシも…。」
シャウト「天満達は私達霊神と違って、自然の力を取り込めない……このままでは…。」
剣斗「天満!」
天満「剣斗…!」
剣斗「良かった、無事か!…大丈夫か?」
シャウト「お前達は随分元気だな?」
剣斗「説明は後だ。これを飲め!」
天満「え?」
剣斗「いいから!ほら、ミラァも!」
ミラァ「う…うん。」
シャウト「…あれは!」
天満「ふぅ…何か随分楽になったぞ。」
ミラァ「アタシも…スゴイ!」
シャウト「剣斗、それは?」
(剣斗説明)
シャウト「やはり…。」
剣斗「シャウト?」
シャウト「『湧錬丸』だ。」
次回に続く