第三十劇『月影』
アスフォート「まずは先程からしていた攻撃だ。『シャドウシックル』!」
天満「はあっ!」
アスフォート「何!『錬』だけで弾いただと!」
天満「本気で来い!」
アスフォート「集中するとこうも違うのか…。面白い!『ブラックデストレイ』!」
天満「『爆燕斬』!」
アスフォート「くっ……なるほど…。さすがはディークの後継者といったところか…。」
ミラァ「スゴイスゴイ!アスフォートを圧してるよ!」
シャウト「今はな…。」
ミラァ「え?」
シャウト「奴の力はこんなものではない。」
ミラァ「どういうこと?」
シャウト「今アスフォートはどういう戦い方をしている?」
ミラァ「どういうって…。『錬術』で遠距離から攻撃して、天満に全て避けられてる…。さすがは天満だね!」
にゅう「さすがにゅ〜!天満強いにゅ〜!」
シャウト「アスフォートはな……ミラァと同じ遠距離タイプじゃないんだ。」
ミラァ「でもアタシと同じように『錬術』使って戦ってるよ?」
シャウト「あんなのは奴の力の、ほんの一部だ。」
にゅう「どういうことにゅ〜?」
シャウト「奴は……『剣術士』…天満と同じタイプだ。」
ミラァ「え!じゃあ今は…!」
シャウト「そう…手加減している。」
ミラァ「そんなっ!」
シャウト「アスフォートが剣を握ったら……本当の戦いが始まる。」
にゅう「天満……にゅ…。」
アスフォート「では次の段階に行くか…。」
天満「何!」
アスフォート「ふふ…。」
天満「本が剣に!そうか!その本は霊神だったな!」
アスフォート「行くぞ…。『月影の舞い・三日月の太刀』!」
天満「な!くっ!コイツ!」
ミラァ「あれが『剣術』なの?何か踊りながら…!」
シャウト「奴はな…『剣術』を極め、剣に飽きてた。だがディークに出会い……ディークと共に『月影の舞い』と呼ばれる新しい『剣術』を編み出したんだ。」
ミラァ「それじゃあ!」
シャウト「そうだ。『月影の舞い』は、ディークの『剣術』でもある。ディークの力は『月』だ。そしてアスフォートは『影』。『月影の舞い』とは、二人だけの『剣術』なんだ。」
アスフォート「さあ…お前は最後の『月』を味わえるかな?」
天満「動きが変則過ぎて…!」
アスフォート「『月影の舞い・更待月の太刀』!」
天満「くそっ!迎え討つ!『瞬天斬』!」
アスフォート「ほう…かなりの速さだ。ではこちらも速さの『月』で…『月影の舞い・十六夜月の太刀』!」
天満「何!ぐわぁぁぁっっっ!」
シャウト「強い……あの頃よりも。」
アスフォート「終わりか?」
天満「ふざけるな!シンセーテン!」
シンセーテン「分かったよ。だけど無理は駄目だよ?」
天満「ああ!」
アスフォート「『超霊化』か…。ならばこちらも…。」
天満「俺の新しい力『スカイジオブレード』だ!」
アスフォート「私はこれだ…『アビスレイピア』…。」
天満「行くぞっ!」
アスフォート「来い!」
天満「はあっ!」
アスフォート「ぐっ!やはり霊神の差は出るか!」
天満「はあはあはあ……。」
シンセーテン「大丈夫天満?」
天満「ああ!絶対負けない!アイツに本当の力が何なのか教えてやらなきゃ!…来る!」
アスフォート「消えろ…『月影の舞い・満月の太刀』!」
天満「消えるか!『白皇天竜刃』っっっ!」
二人「うおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっっっ!」
天満「絶対勝つんだっっっ!うおらぁぁっっ!」
アスフォート「何ぃ!ぐっ…ぐわぁぁぁっっっ!」
天満「はあはあはあ……どうだ……アスフォート……。」
ミラァ「やったぁ!」
にゅう「やったにゅ〜!やったにゅ〜!にゅ〜!にゅ〜!」
シャウト「何だ…?何か嫌な感じが…!」
アスフォート「くくく……。」
天満「!」
シャウト「このおぞましい『錬』は!」
アスフォート「くははは……あーははははっっ!」
天満「何!」
アスフォート「素晴らしい!これだ……これを待ってた……お前を待ってたぞ!」
ミラァ「あれって!」
シャウト「『血のサクリファイス』!」
アスフォート「さあ!トコトンやろう!命を懸けて!そうすれば近づけるんだっ!高みになっ!」
天満「ぐっ!体が…!」
シンセーテン「天満!」
アスフォート「最終戦開始だっ!」
天満「体が…!」
アスフォート「くらえ……ぐわっ!」
ミラァ「天満!」
シャウト「違う!あれは!」
?「よくやった天満…。あとは俺がやる!コイツとは決着つけなきゃいけねえからな!」
アスフォート「『ジアス』だと!」
ジアス「おうおう、随分人相が変わったなぁ、アスフォートさんよぉ。」
サクリファイス「何してるぅぅぅっっ!早く…早く血を吸わせろぉぉぉっっ!」
アスフォート「ああ…吸え…。」
シャウト「アスフォート……まだ気付かないのか……お前のしていることがどれだけ間違ってるかを…。」
ジアス「へっ、そんなことしなきゃ強くなれねえのかよ!」
アスフォート「黙れ…。」
ジアス「悲しい野郎だな…。ディークが見たら泣くぜ。」
アスフォート「貴様に何が分かる!ふ…あの時くらわせそこなった技だ!『旋血刃』!」
ジアス「お前は分かってねえ!」
アスフォート「消えた?くそっ!どこだ!」
ジアス「ここだ…『地倒暴撃』!」
アスフォート「ぐわぁぁぁっっっ!くそっ!ついていけん!何故だ!ぐ……『鋭刺刀血斬』っっっ!」
ジアス「あたるかっ!…天満との戦いで傷ついたその体で、しかもサクリファイスに血を与えてる。そんな戦い方で俺に勝てると思ってんのか?」
アスフォート「どういう意味だ?」
ジアス「まだ分かってねえんだな。今のお前は自分で動いてねえんだよ!霊神に体を操られてるにすぎねえんだよ!」
アスフォート「私は私の意思で戦っている!」
ジアス「それがそもそも間違ってるって言ってんだよ!」
アスフォート「何だと…?」
ジアス「いいぜ…ディークの代わりに教えてやるぜアスフォート!全力で来やがれ!」
アスフォート「サクリファイス!」
ジアス「二度続けて『超霊化』……本当に分かってねえな…。そんなのはディークの教えじゃねえ!」
アスフォート「全て消えろっ!」
サクリファイス「ヒャーッハッハッハ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!」
アスフォート「終の舞いだ!『月影の舞い・新月の太刀』っっっ!」
ジアス「曇ったな…そんな月も映せない剣じゃ、俺は殺れねえよ。『地竜閃撃破』っっっ!」
アスフォート「うおぉぉぉぉぉっっっ!」
ジアス「おらぁぁぁぁっっっ!」
アスフォート「ぐぐっ……もっとだ!もっと力を出せサクリファイス!」
サクリファイス「血が……血が…!」
ジアス「分かってねえんだよっっっ!」
アスフォート「ぐわぁっ!」
サクリファイス「血が足り……ぎゃぁぁぁぁぁっっっっっっ!」
アスフォート「馬鹿な……ぐわぁぁぁっっっ!」
ジアス「ふぅ…。」
アスフォート「ぐ…ま……まだ…私……は…強…く……。」
シャウト「もうよせ。」
アスフォート「シャウト…。」
シャウト「これ以上は…。」
アスフォート「黙れ!お前らに……何が分かる!」
ジアス「分かってねえのはテメエなんだよ!」
アスフォート「何だと!」
ジアス「本当の強さってのがな。」
アスフォート「馬鹿にするなっ!強さっていうのは他者を寄せつけず、何事においても決して負けない勝つための力だ!」
シャウト「そんなところに……傷つける先に本当の強さなんて無い。」
アスフォート「だったら力とは何だ!何のためにある!」
天満「大切なモノを守るためだ。」
シャウト「天満!」
アスフォート「ふ…くだらない…。守るための力だ?力とは攻めるためのモノだ!」
天満「だったら今のお前は何だ!何に負けてるんだ!」
アスフォート「く…。」
天満「ディークもそうだった。大切なモノを守るために戦った。」
アスフォート「ああそうだ!だから死んだ!くだらない弱きモノを守ってたから死んだ!私を置いて死んだんだ!」
シャウト「アスフォート!お前…そうか…お前が強さのみを異常に追いかけるようになったのは…。」
アスフォート「ああそうだ!私に何も告げずに、勝手に死んだ!しかも……お前達を守るために命を落としたって言うではないか!」
シャウト「アスフォート…。」
アスフォート「お前達がもっと強かったら……ディークがもっと強かったら死ななくてもすんだんだ!」
シャウト「ああ…私達は弱かった…。」
アスフォート「強さが全てなんだ……力が無ければ何もできないのだ!」
天満「そうだな……でもお前は間違ってる。」
アスフォート「何を!」
天満「他者を傷つけ……自分を傷つけ…力ってそういうモノなのか?危険な霊神まで使い、自分の命を削りながら戦う。それが本当の強さか?」
アスフォート「う…。」
天満「ディークは何て教えてくれた?自分を傷つけながら戦うことを教えてくれたのか?」
アスフォート「ディーク……ディークは…。」
(アスフォートの過去)
アスフォート「よしっ!『月影の舞い』の完成だ!これでまた一歩強くなったんだな!」
ディーク「アスフォート……この『月影の舞い』は今から『禁術』とする。」
アスフォート「はあ?何でだよ?この力があれば誰にも負けない!使って使って使いまくって俺の強さを見せつけてやるんだ!」
ディーク「そんなことのために編み出した『剣術』ではないぞ。」
アスフォート「さっきから何言ってるんだ?使わなければ意味ないじゃないか!」
ディーク「この『剣術』は強力過ぎる。他者にも…自分にもな。」
アスフォート「それだけ強いってことじゃないか!」
ディーク「いいかいアスフォート。本当の強さというものを履き違っては駄目だ。」
アスフォート「え?」
ディーク「本当の強さというものは他者を守るために使わなければならない。私達の力はね、大切なモノを守りたいと思った時に、本当に強くなるものなんだ。だからむやみに力を誇示するものじゃない。自分の…大切なモノ達を助ける強さとして使うんだ。そのために与えた力だよアスフォート。『月影の舞い』はな。」
アスフォート「うう…。」
ディーク「ふふ…いつか君にも分かる時がくる。自分の力は何なのか……何のために使うのか…。君ならきっと…。」
(現代へ)
アスフォート「そ…うだった…ディークは…。」
天満「アスフォートを信じたんだろ?」
アスフォート「私は…ディークが死んで…ディークの言う力に裏切られたと…。でも……ディークが言ってた力は……私のためを…思って…。」
天満「確かに力は必要だよ。でも力だけじゃ意味がないんだ。それに想いが合わさって、初めて強さになるから。」
アスフォート「私は…全然分かってなかったのだな…。」
天満「それに…ディークは死んでないよ。」
アスフォート「え?」
天満「ディークは生きてる。俺やシャウト、ジアス、シンセーテン…それにアスフォート…君の中で。皆が生きてることが、ディークの生きてる証だよ。ディークが守った証。本当の力の証なんだよ!」
アスフォート「私が生きてることが…ディークの証…。」
天満「大切なモノの証。」
アスフォート「証…そうか…そうだったのだな。」
天満「そして俺の中のディークが言ってるよ。『アスフォートは強い』…って。」
アスフォート「……天満。」
天満「何?」
アスフォート「……私の…負けだ…。」
次回に続く