第二十九劇『笑顔』
シャウト「な…何だって?」
司郎「以前言ってただろ?『法術』を習得する試練があるって。それを受けさせて欲しい。」
シャウト「急に何だ!鈴音が大変な時に何を考えてるんだ!」
司郎「『法術』っていうのは、あらゆるものを強化する術なんだろう?」
シャウト「そうだが…まさかお前!」
司郎「ああ、そのまさかだ。『法術』でこの子の治癒力を高める。」
シャウト「だ、駄目だ!『法術』というのは、あくまでも習得した者を強化する術だ!他人の…しかも治癒力を高めるなんてできない!」
司郎「……シャウト。」
シャウト「お…お前……まさか!」
司郎「頼む!」
シャウト「『反転法術』を使うつもりか…?」
司郎「ああ…。」
ララァ「駄目です!そんなことをしたら貴方は!」
司郎「分かってる…。『反転法術』…自分の生命力を『法術』と混合させ、相手の体に直接送り込む。」
シャウト「言っただろ!それを使った者は…必ず死ぬ。」
司郎「ああ、理解してる。その術は術者の命を与える術だ。」
シャウト「そこまで分かってて何故!」
司郎「約束したんだ。この子の笑顔を未来に繋げると…。」
シャウト「お前は何も分かってない!たとえ助かってもお前がいなければ意味がない!親のいない悲しみを背負わせる気か!そんなので本当に鈴音が笑えると思ってるのか!」
司郎「お前がいる。」
シャウト「う…。」
司郎「それにララァもいる。お前達がいてくれれば、きっと大丈夫だ。」
シャウト「お前が育てろよ!責任持ってお前が!」
司郎「俺だってそうしたいさっ!だけど…。」
ララァ「シャウト…。」
司郎「救いたいんだ!もう…この方法しか無いんだ…。頼むシャウト……鈴音の未来をお前に任せたい。」
シャウト「く……馬鹿…野郎…。」
司郎「ありがとう……友よ…。」
(司郎は試練を受け『法術』を得る)
シャウト「さすがだな。この試練を受けて、しかもこんなに早く習得するとはな。」
司郎「早く……早く鈴音を助けてやりたいからな。ぐずぐずしてられないんだ!」
シャウト「司郎…。」
司郎「何も言うな。」
シャウト「…分かったよ。」
司郎「ありがとう…。」
シャウト「ララァが用意してくれている。」
司郎「ああ…。」
シャウト「ララァ。」
ララァ「用意できました。」
司郎「ありがとうララァ。はぁ……ふぅ……ではこれより『反転法術』を開始する。」
シャウト「私達は『法術』は使えない。私達が手伝えれば、少しは違うんだが…。」
司郎「いいんだ。この子の命を救うのは、父である俺の役目だ。」
鈴音「スゥ…スゥ…。」
司郎「ふふ…よく寝てやがる。鈴音……父ちゃんがお前を守ってやるからなぁ。」
シャウト「司郎…。」
司郎「よしっ!気合い入った!行くぜ!」
ララァ「司郎さん…。」
司郎「全てに漂いし命々よ…我に呼応し…儚き者に…そのありし子を守りし御力で…再び生の光を与えたまへ………その光を持って…我の光を届けよ!『リ・バイバル』!」
シャウト「ぐっ!何て光だ!」
ララァ「司郎さん!鈴音!」
司郎「ぜ…全身の力が抜けていきやがる!くそったれっ!俺の力はこんなもんなのかよ!」
鈴音「スゥ……。」
司郎「鈴…音……待ってろ……父ちゃん……頑張るかんな…!」
シャウト「……!」
司郎「シャウト!ララァ!」
シャウト「お前の体を支えるくらいはできる。」
ララァ「私もです!」
司郎「へへ……俺はいい友を持った!鈴音!父ちゃんは幸せ者だぞ!お前にもこの幸せ……感じてもらいたい!いや、感じる義務があるんだ!だから生きてくれっ!」
シャウト「ぐわっ!」
ララァ「きゃあっ!」
シャウト「う……ララァ…大丈夫か?」
ララァ「ええ……はっ!司郎さんは!」
司郎「はは…。」
シャウト「司郎!」
司郎「見てくれ…我が友よ…。」
シャウト「これは!体の色が元の肌色に!」
ララァ「良かった……鈴音…。」
シャウト「やったぞっ!司郎!……司郎?お前!その体は!」
司郎「ああ……どうやら『反転法術』ってのは、相手の傷や病を自分に移す術だったようだな。」
シャウト「あ…。」
司郎「…でもこれで鈴音は大丈夫だ。美鈴……君との絆…守れたよ………ぐっ…!」
ララァ「司郎さん!」
司郎「はあはあはあ……俺はもう……駄目だな……でも…悔いは…無い…。」
シャウト「司郎!くそっ!『反転法術』を使ったせいでか!病の進行が速い!」
司郎「あとは…頼む…。二人とも……鈴音を……俺達の…未来を……頼む…。」
シャウト「くっ……司郎…。……あ…ああ……安心して……休め…。」
司郎「世話…かけ……るな……。」
ララァ「ゆっくり休んで下さい…。」
司郎「いつまでも……笑顔…を……それ…を…あの子…に………。」
シャウト「司郎……馬鹿野郎…。」
(現代へ)
司郎「懐かしいな。こうやって再びお前と話せるなんてな。その分じゃネオスに感謝だな。」
シャウト「…司郎。」
司郎「ずっと…お前に謝りたかった…。鈴音にも…。」
シャウト「みくびるな!お前の言いたいことくらい分かるさ…。」
司郎「シャウト…!ああ…本当にすまなかった。それと…ありがとな。……鈴音…起きてるだろ?」
シャウト「え?」
ミラァ「ア、アタシ…。」
司郎「ごめんな鈴音。」
ミラァ「何で謝るの?アタシのせいでお父さん死んじゃったのに…!」
司郎「娘を助けるのは、父として当たり前だろ?父ちゃんはお前が生きてくれて嬉しいぜ!」
ミラァ「お父さぁぁぁーーーーん!」
司郎「おうおう……元気だったか、鈴音?」
ミラァ「う…うん……シャウトや……ヒック……ララァが…ヒック…いて…くれた…から…。」
司郎「そうか…良かったな。」
ミラァ「お父さん!お父さん!お父さん!お父さん!」
司郎「お前をもう一度抱きしめることができる日が来るなんてな…。父ちゃん嬉しいぞ!」
ミラァ「いっぱいいっぱい話したいことがあるんだよ!」
司郎「分かってるよ。」
ミラァ「あのね、あのね!いっぱい友達ができたの!それでね!」
司郎「鈴音…。」
ミラァ「え?」
司郎「笑ってくれ。」
ミラァ「え…?はっ!お父さん!」
司郎「く…体が維持できなくなってきたな。もうすぐ俺は消える。」
ミラァ「嫌だ!せっかくお父さんに会えたのに!また……離れちゃうの!」
司郎「鈴音……俺はいつでもお前の側にいる。母さんと一緒にな。」
ミラァ「う…うう…。」
司郎「ミラァ……いい名前だ。ララァが付けてくれたのか?」
ミラァ「う……うん…。」
司郎「そうか……でも……鈴音……この名前も覚えていてほしい。母美鈴から取った…美鈴が気に入った名前だ。」
ミラァ「どっちもアタシだもん!忘れるわけないよ!」
司郎「鈴音…生きていて良かったか?」
ミラァ「うん!楽しいよ…凄く!」
司郎「その笑顔だ。俺はその笑顔を守ったんだな。」
ミラァ「お父さん…。」
司郎「幸せに育ちな。もっともっと幸せにな。…ちきしょう…もう時間だ…。」
ミラァ「お父さん!」
司郎「泣くのか?」
ミラァ「…ううん!エヘヘ、またねお父さん!」
司郎「よろしい。シャウト……ありがとな。お前は俺の親友だよ。永遠にな。」
シャウト「ああ……分かってるよ。この馬鹿野郎…。」
ミラァ「お父さん!元気でね!」
司郎「アハハ!鈴音……愛してるよ……ずっと見守ってるぜ。」
ミラァ「じゃあね…。」
司郎「友達を大切にな。それと……もう泣くなよ……ミラァ…。」
シャウト「司郎……やっぱり馬鹿野郎だよ、お前は。」
ミラァ「これは……お父さんの『針』。お父さん……。」
シャウト「ミラァ…。」
ミラァ「よぉーしっ!」
シャウト「ミ、ミラァ!」
ミラァ「さあ行くよ、シャウト!ネオスのやることを止めなきゃ!」
シャウト「…ああ!」
(ユズキは)
ユズキ「はあはあはあ……皆さん大丈夫でしょうか?」
?「『アイスニードル』…。」
ユズキ「はっ!くっ…!これは!ま…まさか…!」
?「おや?海の国の方なのに、戦闘能力が高いんですねぇ。」
ユズキ「お前は!」
?「ふふ…。」
ユズキ「やっと……やっと見つけた…『氷の悪魔』!」
?「『ゼロ』と申します。」
ユズキ「ゼロ…!」
ゼロ「あなたが僕を探していたのは知っています。」
ユズキ「そうだ!我が同胞の仇、とらせてもらう!」
ゼロ「いやいや、無理なことを口にしない方がいいですよ?」
ユズキ「シズマッ!」
シズマ「あいよ!オレッチの出番かい!」
ゼロ「『レイダー』…。」
レイダー「さっさと片付けてしまえ。ネオスが呼んでるぞ。」
ゼロ「はいはい、分かってますよ。」
ユズキ「『超霊化』です!シズマッ!」
シズマ「任せろぃ!」
ユズキ「うっ……そん…な……悪…魔…。」
ゼロ「どんな力も出させずに倒せば怖くないですよ。ふふ…あなたでは僕は殺れませんよ。ではご機嫌よう。」
ユズキ「くっ……ま…だ……。」
シズマ「ユズキ!くそっ!しっかりしろぃ!」
(シャウトは)
シャウト「もう天満はアイツを…。」
ミラァ「大丈夫だよ!天満は強いもん!」
シャウト「ああ…よし!ここだ!天…満…!」
?「ふ……この程度か?つまらないな。」
シャウト「『アスフォート』!」
天満「はあはあはあ……くっ…!」
ミラァ「天満……嘘…!」
にゅう「ミラァ!天満が…にゅ…。」
ミラァ「にゅう!天満……どうして?一方的に傷受け過ぎだよ!」
アスフォート「ほう…『千針』を倒したのか、シャウトよ。」
天満「シャウト!良かった…無事か。」
シャウト「何を言ってるんだ!お前の方こそボロボロじゃないか!」
アスフォート「そうだシャウト、お前の方からも言ってくれ。コイツ…他の奴らに気を取られ、全力で戦おうとしない。」
ミラァ「そんなっ!」
シャウト「天満!気持ちは分かる!だが、お前は皆を信じたんじゃないのか!」
天満「分かってる!分かってるけど…。」
ミラァ「見損なったよ天満!」
天満「ミラァ?」
ミラァ「今の天満…凄くカッコ悪いよ!」
天満「え?」
ミラァ「みんな天満のこと信じて精一杯戦ってる…!それなのに…今のあなたは何!」
天満「あ…!」
シンセーテン「ちぇ…僕のセリフ取られちゃったな。そうだよ天満!みんな必死に戦ってるんだよ。リーダーの君がそんなのでどうすんのさ!」
天満「シンセーテン…ミラァ……シャウト……みんな…。うおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーっっっ!」
ミラァ「て、天満!」
天満「ふぅ……ごめん…みんな。」
ミラァ「天満!」
シャウト「うむ!」
シンセーテン「それでこそ天満だよ!」
アスフォート「これからが本番というわけか…。ふふ……礼を言うぞ、ミラァとやら。」
ミラァ「アンタなんかに感謝されても嬉しくないよーだ!それに後悔するよ!天満を本気にさせたことをね!」
アスフォート「させてみろ。」
天満「させてやるさ!本気で来い!じゃなければ一瞬で終わるぞ!」
アスフォート「小僧が…図に乗るな!」
ミラァ「いっけぇっ!天満ぁっ!」
シャウト「アイツの目を覚ませてやれ!力だけが全てじゃないということをな。」
アスフォート「弱きは罪だっ!」
天満「罪なのはお前だっ!お前の心の弱さだっ!見せてやる!本当の強さをなっ!行くぞっ!アスフォートッ!」
次回に続く