第二十六劇『三人』
サイガ「フィ…フィアン……何で…ここに?」
アイズ「サイガァァァッッッ!」
フィアン「止めて!」
アイズ「姉さん…!」
フィアン「もう……兄弟……争う……の…は…。」
アイズ「姉さん!」
フィアン「はあはあはあ……。」
アイズ「どうして?どうしてアイツをかばうんですか!僕達を裏切り、国を……姉さんを捨てたアイツを!」
サイガ「そうや。何でかばったんや?お前がかばわんかったら、あん時死んどったんはワイの方やった。」
アイズ「気付いてたのか?」
サイガ「ああ…お前がレイゼクスで背後を狙ってたんは分かっとった…。」
フィアン「だからこそです…。」
サイガ「フィアン…。」
アイズ「姉さん。」
フィアン「大丈夫です。大した傷では無いです。かすっただけですから、ありがとうアイズ。少し楽になりました。」
サイガ「どういうことや?」
フィアン「このまま誤解し続けたままでは…悲し過ぎます…。」
サイガ「フィアン!お前…!」
アイズ「誤解?ど、どういうこと?姉さん!」
フィアン「これを…。」
アイズ「これは?……『メモリーキューブ』!」
フィアン「そこに全てが…真実が…あります。」
サイガ「………。」
(『メモリーキューブ』の記録)
ラフォール王「サイガよ、アイズに『エーテル国』に行ってもらう。」
サイガ「え?どういうことですか?」
ラフォール王「聞き返すな。お前は言われたとおりにしておればよい。」
サイガ「納得できません!何故!アイズはどうなるんですか!」
ラフォール王「アイズか……可哀想だが、我が国のための糧となってもらう。」
サイガ「い、意味がわからへんわ!」
ラフォール王「話は終わりだ。」
サイガ「待てや!王!何でや!」
(ラフォール王とエーテル王の密会)
サイガ「確かここや。真実を見つけたるわ!」
ラフォール王「ではエーテル王よ、我が国のアイズを…送る。」
エーテル王「承知した。これでまた、駒が増えましたな。真実を知っている者達を葬り、かつてない平穏を手にいれますな。もうあのような手段を持ちいずとも、済みますまい。」
ラフォール王「う…うむ…。」
エーテル王「あの『アーミア』のように、ボロボロになるまで、生体実験体として使ってやるわ。」
ラフォール王「……エーテル王よ…やはり…。」
エーテル王「我らは共犯者だ。今更引くことは出来ぬぞ。」
ラフォール王「しかし…生体実験は…。」
エーテル王「我々は王なのだよ?全てを握り、全てを知る義務がある。いいですかラフォール王よ、そのアイズという者は『特別』なのであろう?な〜に、死ぬような無理はせんよ。ただ勝手に自殺する分は知らんがな。あーはっはっはっは!」
ラフォール王「頼む!酷いことはもう…。」
エーテル王「『アーミア』の時は率先して、実験をしておったではないか。もう一度言うぞ。我々は共犯者なのだよ。ふふ…楽しみだ。」
サイガ「ヤバイ!アイズを……アイズを…!」
エーテル王「誰だ!」
サイガ「あかん、見つかってもうた!」
エーテル王「追えっ!殺してしまえ!」
ラフォール王「サイガ……!」
サイガ「はあはあはあ………ここもか…何でアイズばっかりこないな目に……折角逃げてきたのに……アイズは……アイズはワイが守るんや!」
(現代へ)
アイズ「どういうことだ!何故僕が…?何を隠してるんだサイガ!」
サイガ「知らん方がええ。」
フィアン「違いますサイガ…。アイズは……アイズはそんな弱くないですわ。……貴方がいなくなってアイズが泣いていたのを知っています。」
アイズ「ね、姉さん!」
フィアン「それでも国のために気丈にふるまって、国を…私を助けてくれました。アイズは強い子です。」
サイガ「フィアン……お前はもう知っとるんやな…。」
フィアン「ええ…父に以前…。」
サイガ「さよか。アイズ……話したる。お前にとっては辛い話やけどな。」
アイズ「………。」
サイガ「お前は……世界で最初の……『クローン』なんや。」
アイズ「え?」
サイガ「ワイ達の親は科学者やった。霊神を研究したりしとったな。ある日、父親がワイを研究所に連れて行きよった。そこでワイは………これ見てみぃ。」
アイズ「な!目が取れ……義眼?」
サイガ「ワイはそこで左眼を繰り抜かれた。父親は世界のためやって言った。ワイにとって親が全てやった。せやから親が喜ぶならと、文句言わんかった。」
アイズ「じ、じゃあまさか!」
サイガ「せや…アイズ……お前は………ワイの『クローン』や。」
アイズ「そ…そんな…。」
サイガ「ワイの眼から様々な情報をくみとり、ワイの血液と皮膚を取って、お前がつくられた。何度も何度も失敗しとった。完全にエルフの形をつくれたのはお前で最初やった。最後の細胞でようやく全てが上手く適合し、お前が生まれたんや。」
アイズ「な……何のために…僕…を…?」
サイガ「王や……エーテル王が命令しとったんや。自分に従順な機械のような駒が欲しかったんや。親はエーテル王から多額の資金をもらい『クローン』をつくってたんや。せやけど何度も失敗して、とうとうエーテル王が痺れをきらし『次失敗すると死んでもらう』と言ったんや。追い込まれた両親は自分の息子を利用することを決心した…。」
アイズ「じゃあ僕は…!」
サイガ「お前が誕生してまもなくや。弟ができたみたいで嬉しかったワイは、お前と一緒によう遊んどった。ある日両親に呼ばれお前と一緒に研究所に行った。……両親がお前の体を解剖して、お前から新しい『クローン』をつくろうとした。ワイは………親を……殺した。見てられへんかった。」
アイズ「サイガ…!それじゃ孤児院での出来事も!」
サイガ「せや、お前が体が弱かったのは、まだ体が完全に慣れてなかったからや。…イジメを受けてたのも、あそこにいた先公どものせいやった。どこからアイズのことを知ったのか知らんけど……許せんかった。」
アイズ「何故そこまで僕を…?」
サイガ「さっきも言ったやろ?嬉しかったんや。それに…ワイは親が全てやと言ったやろ?ワイは地のエルフや。天の国に住んでたワイは友達なんて出来るわけない。せやからずうっと独りやった…。お前が生まれた時、たとえ『クローン』でも嬉しかった……本当に嬉しかった。初めて触れた親以外の温もり……温かったわ…。お前がワイのすることで笑ってくれる。その笑顔が好きやったんや。」
アイズ「サイガ…。」
フィアン「それで、アイズのために自分が天の国に行き、エーテル王を監視していた。アイズを守るために。」
サイガ「せや…。」
アイズ「何故だ!何故今更そんなことを!いつもそうだ!僕はお前の後を追ってばかり……あまりにカッコ悪いじゃないか!勝手に恨んで、ずっと守ってきてくれたサイガを……殺そうと…。」
サイガ「ええんや。お前が生まれたのはワイのせいでもあるんや。親のすることを止めなかったんやからな。」
アイズ「違う!僕は生まれてきて良かったと思ってる!姉さんに出会えた!サイガにも!」
サイガ「アイズ……お前はとうにワイを越えとったんやな。」
アイズ「でも何故ネオスと一緒にいるんだ?」
サイガ「それは…。」
?「ふふ…やはりこういう結果になっちゃったか。」
アイズ「『ネオス』!何しに来た!」
ネオス「ゼロ…勝手なことを。」
サイガ「ネオス?」
ネオス「君達には用は無い!はっ!」
二人「うわぁぁぁっ!」
ネオス「やはり君が持ってたんだね。」
アイズ「姉さんに何をする!」
ネオス「君が素直に渡してくれれば良かったのに…。力ずくは本意じゃ無いって言ったのにね。仕方無いね…じゃあもらうよ。」
フィアン「くぅぅ……っっ!ああぁぁぁぁっっっ!」
サイガ「フィアンッ!」
アイズ「姉さんっ!」
ネオス「まさか体の中に隠してたなんてね。『神器・真惺輝』。へぇ、こんな小さなモノなんだね。」
アイズ「貴様ぁぁぁっっっ!」
ネオス「今は君に構ってる暇は無いんだ。それじゃ。」
サイガ「ネオス!」
ネオス「ん?何?」
サイガ「二人を傷つけないって言ったやろ?それに、あの『約束』も!」
ネオス「ああ、そういえばしたねぇ。」
サイガ「破る気なんか!」
ネオス「違うよ。破る気もなにも最初から守る気は…無い。」
サイガ「なんやて!」
ネオス「まあ君は役に立った方だよ。ありがとうね。それじゃ。」
サイガ「嘘や……はは……ワイは……アホや……意味わからへん…。」
フィアン「サ…イガ…。」
アイズ「姉さん!サイガ、姉さんが!」
サイガ「は!フィアン!」
フィアン「こ…れを…。」
サイガ「これは……指輪……『誓い石』か!あの時捨てたはずや。まだ持っててくれてたんか…?」
フィアン「貴方のために作ったのです…。でも私は最初貴方を…信じることができませんでした。ごめんなさい…。」
サイガ「謝ることあらへん!ワイが勝手にしたことや!お前を悲しませることやと知ってたのに、やったんや!だから…。」
フィアン「私は貴方のことが好きでした。強く逞しく、でも時折寂しいお顔をする貴方を……私は支えてあげたいと…側にいたいと思っていました。」
アイズ「姉さん!」
フィアン「アイズ…貴方にも迷惑かけて…ごめんなさい…。いつも私のことを思ってくれていたのは…気付いていました……ありがとう。アイズのこと……本当に弟が出来たみたいで嬉しかった…。三人でいることが幸せでした。楽しかった…私の全て……貴方達と一緒に……。」
サイガ「フィアン!あかん!逝ったらあかん!」
フィアン「私は……役に立てまし…たか?二人が幸せに……二人の全てを…。」
アイズ「お願い姉さん!死なないで!死んじゃ嫌だよ!」
フィアン「あら…あら、男の…子が泣くなんて…駄目よ…。サイ…ガ……貴方の想いを…聞けて…良かった…。」
サイガ「ワイはまだお前を幸せにしてへん!これ以上約束を破んのは嫌や!」
フィアン「幸せ…ですよ。こうやって…また三人で仲良く……あの…尊い日々をまた……感じることが…出来ました。ありが…とう……とても幸せ……。」
アイズ「嫌だ!嫌だよ姉さん!せっかく三人揃ったのに!僕は……僕は!」
フィアン「アイズ……サイガ……私は願い続けますか…ら……どこにいても……どう…なっても……私の魂は…いつも二人の幸せを……。」
サイガ「くっ……うう…ワイは…アホや……。」
フィアン「ただ願うは……二人の幸せを………アイズ……サイガ……ありがとう……愛して…ま…す…。」
アイズ「姉さ…ん?嘘でしょ……姉…さん……うわぁぁぁぁっっっ!」
サイガ「くっそぉぉぉぉっっっ!」
アイズ「うう……うわぁ……。」
サイガ「許さへん!ネオス!」
アイズ「ネオス!僕も許さない!」
サイガ「フィアン……お前の願い……ワイは守る……約束や。」
アイズ「サイガ…。」
サイガ「ああ、アイズ……二人でフィアンの仇を討つんや!ワイがフィアンに出来ることはこれしか思いつかへん。一緒に行ってもええか?」
アイズ「…サイガ。僕は…やっぱりまだ完全には許せない。姉さんを悲しませたアンタを。」
サイガ「それでええ。ワイはワイの出来ることをする。」
アイズ「ああ、行こう!」
サイガ「ああ!」
(琴花は)
琴花「さっきの爆発音……剣斗…。」
ユズキ「次の部屋に着きました。…琴花さん?」
琴花「え?あ、ははは!え〜と……『黄爆の間』か…。うぅ……何か寒気がする…。」
ユズキ「では開けますよ。」
?「ヒトは言う、美しき僕様のことを『美の魔術師ラーハイド』とさ〜。そう!これは罪!ああ〜エクスタシ〜。」
琴花「さて…帰るか…。」
次回に続く