第二十四劇『超霊』
ノア「『虎槍土烈破』!」
シェイリア「『デッドサウンド・縛の旋律』!」
ノア「か…体が…?」
シェイリア「紹介しましょう。私の霊神『音のキュアルト』です。」
キュアルト「我が音…様々な旋律を操る。その音を聞いた者は、我の思い通りになる。」
ノア「く、くそっ!」
シェイリア「無駄です。貴方とこれ以上争いたくない。ミアと同じ貴方を…だから…。」
ノア「だから…何ですか?言ったはずです!僕はアナタを止めると!」
シェイリア「……残念です…本当に…。ではもう終わりにしましょう。私は私の道を行きます。たとえそれがミアの意思に反することだとしてもっ!『デッドサウンド・壊の旋律』!」
ノア「あれは!宮殿を破壊した!あんなものをくらったらおしまいだ!ウェルカッ!」
ウェルカ「そうじゃな。あやつの目を覚まさせなければのぅ。『この力』は錬術者自身にもリスクがある。使いとおはなかったが、そうもいかないようじゃ…。」
シェイリア「私の旋律からは逃げられません。最後です!一足先にミアのもとへ…私もすぐ…。」
キュアルト「我が音は不滅。ん?な…何だあれは!」
ウェルカ「ほっほっほ。よく覚えておけ小僧っ子!これが本物の『超霊化』じゃ!」
(舟を修理してた時)
天満「急に皆に話って何だいウェルカ?」
ウェルカ「うむ。実はの…『超霊化』について話さなければならん。」
剣斗「ああ…邪霊が強くなったやつか。」
ウェルカ「その邪霊はどうなった?」
剣斗「え…と…はは……えと…。」
ユズキ「確か体が大きくなり、『錬』の量が増えました。それもかなり…。あと、狂暴になり……そういえば倒した後は急激に体が小さくなっていきました。元の体よりも…。」
剣斗「そんで最後に自爆!迷惑な話だぜ!」
ウェルカ「霊神はの、元は自然にある様々なモノが凝縮して生まれた存在じゃ。故に自然の力を取り込めば究極に強くなっていく。じゃがの、己の器を越える力を取り込めば、自我を失い、最後には消える。というより、元の自然の力に戻る。」
天満「じゃあシンセーテンや剣斗達の霊神も『超霊化』できるのかい?」
ウェルカ「そうじゃ…。」
剣斗「何だよ〜じいさんも人が悪いなぁ。もっと早く教えてくれりゃ良かったのに!これで鬼に金棒だぜ!」
ウェルカ「……。」
アイズ「これだから思慮の浅い奴は困る。少しは考えろ!」
剣斗「な!」
天満「剣斗、効きすぎる薬には必ず副作用があるように、この力も…。」
ウェルカ「そうじゃ。言ってみれば諸刃の剣なんじゃ。」
剣斗「どういうことだよ?」
ウェルカ「邪霊のは『間違った超霊化』なんじゃ。霊神は本来、錬術者と共にあり、装備具となり力を貸す。単身で『超霊化』をしてしまうと、強くはなるが、力を制御できず身を滅ぼす。」
剣斗「じゃあ錬術者がいればいいんじゃないか。」
ウェルカ「確かに、錬術者の力と霊神の力を混合させ、上手くバランスを取ることができれば、強大な力を維持できる。」
剣斗「でもさあ、本当の『超霊化』って具体的にどうなんだ?」
ウェルカ「進化するんじゃよ。」
剣斗「進化?何かカッコイイじゃんか!」
ウェルカ「それにの、名前がつくんじゃよ。新たに進化した名前がの。」
剣斗「へえ。」
ウェルカ「舟が直るまでの時間、各々の霊神と話し合い、互いに信を置くことじゃの。覚えておくとええ。この世界は強き想いが力になるんじゃ。」
(現代へ)
ノア「これが僕達の新しい力です!この力『セントグングニル』でアナタを止める!」
キュアルト「何だ?この凄まじい『錬』は?それにさっきの槍と形も違うだと!」
シェイリア「ノア!『縛の旋律』も効かない!」
ノア「行きますよ。」
シェイリア「マズイッ!キュアルト!」
ノア「無駄です!」
シェイリア「きゃぁぁぁぁ!」
ノア「ぐっ…!」
ウェルカ「早くもきおったか!ノア、大丈夫か!」
ノア「うん…でも体中がこんなに痛むなんて…。ウェルカも…しっかり維持して下さいよ。あと少し…ですから…。」
ウェルカ「分かっとるわい!」
シェイリア「ま、まだ私の意地は通しますっ!『デッドサウンド・滅の旋律』!」
ウェルカ「いかん!あの力、完全に制御できておらん!」
シェイリア「キュアルト…『超霊化』です。」
キュアルト「了解。」
ウェルカ「駄目じゃ!そんな体で!しかも信を置いてない状態でその力は!」
ノア「シェイリアさん、何故ですか!もう分かってるでしょう、アナタなら!なのに何故!」
シェイリア「ふ…貴方は強いですね……私も最後まで信じたかった……エルフを……ミアを……。」
ウェルカ「いかん!力の暴走じゃ!」
ノア「くっ!死なせるかっ!」
ウェルカ「ノア!」
ノア「僕には信じられる人ができた。あの人も…まだ戻ることができる!あの人には心がある!かけがえのない優しい心が!僕は信じたい!あの人はまだ心から笑える!だから……生きなければいけないんだっ!」
ウェルカ「…ノア…分かったわい!全てを懸けるぞノアよ!」
シェイリア「もうすぐ……もうすぐそっちに……ミア…私は…。」
ノア「はあぁぁぁっっっ!『セントグングニル』開放!ぐぅ…!」
ウェルカ「むむぅっ…!」
ノア「イ、イリスさんっっっ!」
シェイリア「…ノ…ア…?」
ノア「プリミアさんの想いと共に、アナタを救うんだっ!大開放『グングニル・リバイバー』ッッ!」
キュアルト「な!我が力が……ぬおぉぉぉっっ!」
シェイリア「!」
ノア「へへ…つかまえた…。」
シェイリア「何故……何故死なせてくれないの…。」
ノア「それが…プリミアさんの意思だから…。」
シェイリア「ミア…の…。」
ノア「プリミアさんだけじゃないですね。サンゼバル様やウェルカ、そして僕のです。」
シェイリア「私は…。」
キュアルト「お…おのれ……殺し…て…やるっ!役立たずのシェイリアと共に…!」
ウェルカ「は!ノア!」
ノア「危ないイリスさん!ぐぅっ!」
シェイリア「ノア!」
キュアルト「ふふ…死ね…!」
ウェルカ「おのれっ!」
キュアルト「ぐわぁぁぁ!」
ノア「ぶ…無事です…か…イリス……さん…。」
シェイリア「何故私を…?」
ノア「家…族を…守…る……の…は…当た…り前……。」
ウェルカ「ノア!こりゃいかん!は、イリス!」
シェイリア「私が何とかします。私の『錬』をノアに…。」
ノア「……。」
シェイリア「ノア…私なんかのために……貴方は馬鹿です!」
ウェルカ「ノアはの、お主と同じじゃよ。『禁忌』に大切なモノをいくつも奪われ、エルフにも中傷されのぅ。じゃが、ノアには信じてくれる者ができた。ノアは簡単に死ぬわけにはいかなくなったんじゃ。ノアはエルフを許していない。じゃがそれでも自分のために寿命を縮めた母親の意思を継ぐため、そしてサンゼバルの想いに答えるため、ノアは生きてるんじゃ。」
シェイリア「それでも!ミアは帰っては…来ない…。」
ウェルカ「じゃが死んでもいないじゃろ?」
シェイリア「え?」
ウェルカ「お主の中にプリミアはおるじゃろ?」
シェイリア「綺麗事です!」
ウェルカ「では今お主がしてることは何じゃ?」
シェイリア「これは…。」
ウェルカ「助けたいんじゃろ?自分を必死に信じてくれたノアを……プリミアと同じように信じてくれたのぅ…。」
シェイリア「何故でしょうか…?何故こんなにも必死なのでしょうか…?」
ウェルカ「死なせたくないんじゃろ。もう誰も…。お主は優しいからのぅ…。」
シェイリア「ごめんなさい…ごめんなさい…私は…。」
ウェルカ「ノアは最後までお主を信じとった。家族を…守る…とのぅ。」
シェイリア「ノア……お願い!目を開けて!貴方に謝りたいの!…くっ……血が止まらない!もう駄目なの…!」
?「駄目じゃないよ!」
シェイリア「え?ミア……ミア!」
ウェルカ「サンゼバルが持たせた『ネックレス』…。」
プリミア「ノアはまだ大丈夫だよ!」
シェイリア「ミア…貴方…!」
プリミア「ミアは…悲しいよ…。」
シェイリア「え?」
プリミア「どうしてそんなに辛い顔してるの?」
シェイリア「貴方がエルフに……それで私は…。」
プリミア「ミアは殺されてもいないし、自殺してもいないよ?」
シェイリア「え?」
プリミア「あの時『ネックレス』を手に持ってて、転んだ時に窓から木に引っ掛かったの。それで、取ろうとして足が滑って…。」
シェイリア「嘘よ!」
ウェルカ「本当じゃよ。……確かに死因は頭を強打したことによるものじゃったが見ていた者がおった。」
シェイリア「だったら何故教えてくれないの!」
ウェルカ「信じたか?」
シェイリア「そ、それは…。」
ウェルカ「あの状況じゃ、お主が誤解するのも仕方ないからのぅ。」
プリミア「お姉ちゃん…。」
シェイリア「ミア…ウェルカ……ノア…ごめんなさい…。勝手に誤解し、ノアにも手をかけて、助けられず…。」
プリミア「大丈夫だよお姉ちゃん。お姉ちゃんのお母さんの形見の『護の希石』が力を貸してくれる。ミアの想いもお姉ちゃんに託すから…。」
シェイリア「ミア…。」
プリミア「ミア達はいつも一緒だよ!さあ、ミア達の大事な弟を助けよう。大切な家族を…。」
シェイリア「うん。ミア…ありがとう。そして…ごめんね。」
プリミア「ミアの想いが護るから。だって…ミアの大好きなお姉ちゃんだもん!ずっと一緒だよ!お姉ちゃん、だ〜い好きっ!」
シェイリア「ありがとう…ミア…。」
ノア「う…うう……イリ……シェイリア…さん…?」
シェイリア「違います。私の名前はイリス……プリミアの姉のイリスです。」
ノア「良かった……やっぱり笑顔が…一番ですね。」
イリス「ありがとう…。」
ウェルカ「体は大丈夫か?」
ノア「当分は駄目…『超霊化』の反動ですね…それよりウェルカは大丈夫ですか?」
ウェルカ「まだまだ若いもんには負けんわい!」
ノア「はは…。」
イリス「ノア…ごめんなさい…。」
ノア「弟が姉を助けるのは当たり前でしょう。…う…少し…眠い…。」
ウェルカ「少し休めノア。あとは天満達に任せての。」
ノア「う…ん。笑えて…良かったね……イ…リス…姉…さん。」
イリス「ノア…ありがとう。」
ウェルカ「『ネックレス』はよいのか?」
イリス「いいんです。ノアに持っていてもらいたいんです。」
ウェルカ「これからどうするんじゃ?」
イリス「この子と一緒に見つけたいと思います。『禁忌』を救える何かを。」
ウェルカ「そうか。天満よ…すまんのぅ…ワシ達はここでリタイアじゃ。」
(剣斗達は)
剣斗「さっきから邪霊ばっか!」
ユズキ「ん?ここは……『蒼鉄の間』?」
剣斗「とりあえず入ってみるか。お前は!」
?「ほう…どっかで見た虫だな。」
ユズキ「あの者は確か…『ツァビデル』。」
ツァビデル「クソ虫が相手か…がっかりだ!」
剣斗「琴花、ユズキさん、先に行ってくれ!コイツは俺が叩く!」
琴花「何言ってんのよ!アンタ一人じゃ!」
剣斗「信じてくれないのか?」
琴花「でも…。」
剣斗「すぐ追いつくよ!だから頼む!」
琴花「剣斗……分かった。死なないで…剣斗。」
剣斗「ああ、約束だ!」
ユズキ「信じてもいいですね?」
剣斗「はい。」
ユズキ「行きましょう琴花さん!」
琴花「う…うん。剣…。」
ツァビデル「さあて、茶番は終わりか?」
剣斗「お前の命もな。」
次回に続く