第二十劇『黒幕』
アスフォート「そうか…ジアスか…。その姿で会うのは初めてだな。」
ジアス「ああ、まさかテメエがディークを裏切るとはな。」
シャウト「ジアスッ!」
ジアス「……ふん。言っとくけどな、俺はお前らを許した訳じゃねえ。天満を助けるために出てきた訳でもねぇ。ただ単にコイツにムカついたから出てきただけだからな!」
シンセーテン「そんな分かりやすい言い訳一々しなくても…。」
ジアス「何か言ったかシンセーテン?」
シンセーテン「何でもないよ…。」
アスフォート「ムカついたか……では君が私の相手をしてくれるのか?」
ジアス「ああ、退屈はさせないぜ!」
ノア「あれがジアス…。」
剣斗「また出てきやがった!」
琴花「でも今回は頼もしいかも。あのバカ強いアスフォートが相手なんだもん。」
ミラァ「そうだね。」
ジアス「行くぜ、アスフォート…。テメエらは手ぇ出すなよ。」
アスフォート「私をあの時と同じに考えているなら一瞬で終わるぞ。」
ジアス「ふん、影使いのアスフォート、しっかり記憶に残ってるぜ!」
アスフォート「ふふ…。」
ジアス「ふふ…。」
アスフォート「来い…。」
ジアス「はあっ!」
アスフォート「『シャドウウォール』!」
ジアス「あまいぜアスフォート!こっちだ!」
アスフォート「ぬ!」
ジアス「『地弾沙撃』っ!」
アスフォート「ぐっ!」
剣斗「つ、強ぇ…!」
琴花「あのアスフォートを吹っ飛ばしたぁっ!」
シャウト「さすがジアスだな。だが…。」
ジアス「どうしたぁ?そんなもんかアスフォートさんよ?」
アスフォート「ふふふふふ…。」
ジアス「何がおかしい…?」
アスフォート「これが…あのディークが生み出し、霊神の中の霊神と呼ばれたジアスの力か…。」
ジアス「ふん、今更分かったのか?自分との差を。」
アスフォート「ああ、どうやら天と地程の大差があったようだな。」
ジアス「ふ…。」
アスフォート「どうやら私は強くなりすぎたようだ。」
ジアス「何っ!」
アスフォート「聞こえなかったか?ではもう一度言ってやろう。今の君では私には勝てない。」
ジアス「強がりもそこまでいくと笑えるな。」
アスフォート「なら見せてやろう。本当の私をな。」
ジアス「はあ?」
アスフォート「これに…見覚えはあるか?」
ジアス「ん?」
シャウト「な、あれは!」
アスフォート「ふふ…そうだ。」
シャウト「『血の霊神』…。」
ジアス「バカなっ!それはディークが!」
アスフォート「そう、ディークが封印した霊神『血のサクリファイス』だ。」
ジアス「なぜテメエがそいつを!」
ノア「何てまがまがしい『錬』なんだ…。一体何なんですかあれは?」
シンセーテン「あれはね、ディークが封印した霊神なんだよ。」
ノア「封印?そんなに危険なんですか?」
シンセーテン「普通霊神は霊神の持つ力を持ち主に与え、持ち主はその力を装備化して強さを得る。だけどあれは…。」
剣斗「一体何なんだよ!」
シャウト「あの霊神は持ち主の『生命力』と『血』を犠牲にして持ち主の武器となる。」
ミラァ「血って…?」
シャウト「そうだ…使い続けると……死ぬ。」
剣斗「そうか…だからディークは封印したのか。」
シャウト「ああ…それにあの霊神は…。」
サクリファイス「ヒィーヒッヒッヒッ!久々に血をすすれるぜぇ!ヒャーハッハッハッ!血だ!早く血をよこせぇっ!」
アスフォート「ああ、好きなだけすすれ…。」
ミラァ「うわ…気持ち悪い…!アスフォートに噛みついてる…!」
シャウト「そうまでして力を得たいかアスフォート!」
アスフォート「くく…負ける気がしない。」
ジアス「くっ!」
アスフォート「ではコイツの力、見せてやる。」
ジアス「ちぃ、何て『錬』だ!」
アスフォート「ディークの遺産もろとも消えろ!『旋血じ…』。」
?「はい、ストップ。」
皆「!」
?「それはまだ早いよアスフォート。」
アスフォート「ネ、『ネオス』様…!」
剣斗「ネオス?」
シャウト「アイツがそうか!」
シンセーテン「ようやく黒幕登場だね。」
アスフォート「なぜここに?」
ネオス「サクリファイスの気配を感じてね。アスフォートが使おうとしてるんじゃないかと思ってね。それはまだ使っちゃ駄目だって言ったよね?」
アスフォート「も、申し訳ありません!」
ネオス「君ならここにいる者達程度、『影』だけで倒せるはずだよね?」
アスフォート「すみません…。」
ネオス「まあいいよ。それより計画は最終段階に移行したよ。弱者に構ってる暇はないよ。さあ、戻るよ。」
ジアス「待ちやがれ!テメエが『アオス』の後継者か?」
ネオス「そうだよ、ジアスくん。」
ジアス「なら今ここでテメエを倒せば、全てが終わるよなっ!」
ネオス「う〜ん、まあそうかな。」
ジアス「ならディークに代わってここで倒すっ!『暴雅舞撃』!」
ネオス「ふふ…神の力を見せてあげる。『カオスエンド』…。」
ジアス「何だと!ぐわぁぁぁぁっっ!」
シンセーテン「ジアスッ!」
ネオス「かなり手加減したんだけどね。この程度なら計画に支障は無いか…。」
ジアス「ぐっ……野郎…。」
ネオス「では行こうかアスフォート。」
シャウト「待てっ!お前達は…?」
ネオス「ふふ…全てを知りたければ、来てみなよ。我が『黒皇城』へ。あ、そうそう、君達の友達もいるからね。」
剣斗「真雪か!」
ネオス「ふふ…アイズくん……君の大事な人もね。」
アイズ「何だと!貴様、今何て!」
ネオス「ふふ…ではまた会えたら会おうね。」
アイズ「待てっ!」
シャウト「アイツがネオスか…。確かに『アオス』に似てはいたが…。」
アイズ「姉さん……やっと見つけた。待ってて、姉さん。必ず僕が助ける!」
剣斗「アイズ…。ところでシャウト、これからどうする?舟はアスフォートにボロボロにされたし。」
シンセーテン「まずはそんなことより、しなきゃいけないことがあるよ!」
剣斗「ジアスか…!」
ジアス「ちぃ、アスフォートの野郎……。いつつ……久しぶりだなテメエら。特にシャウトにシンセーテンよう。」
シャウト「ああ、そうだな。」
ジアス「あの時俺を気絶させたのはお前だなシャウト。」
シャウト「天満に頼まれていたからな。」
ジアス「ふん……んで、俺に何か用かよ?」
シャウト「とぼけるな…天満の中で聞いていたはずだ。」
ジアス「ふん…あのボロ舟を動かせってか?嫌だね。」
シンセーテン「そう言うと思った。」
シャウト「どうしてもか?」
ジアス「やる意味が無い。」
シャウト「意味ならある。ディークの意思を知ったお前なら分かるはずだ。」
ジアス「……気に入らねえ。」
シャウト「え?」
ジアス「気に入らねえんだよ!どいつもこいつも!それにお前らの話、完全に信じたわけでもないしな!」
シャウト「だったら力ずくでも協力してもらうぞ!」
ジアス「面白い……やってみやがれ。」
シンセーテン「やめなよ二人とも!二人が争って何になるんだよ!」
ジアス「気絶の借り返してやるぜ!」
シャウト「やってみろ!この分からずやめ!」
シンセーテン「二人ともっ!」
皆「!」
アイズ「舟が光って!」
?「…久しぶりだなお前達。」
三霊神達「ディーク!」
アイズ「何だって!じゃあアイツが…!」
ジアス「テメエ…何で?」
ディーク「何故現れたか分からないか?」
ジアス「だから何でだよ?」
ディーク「本当に分からないのか?」
ジアス「う…。」
ディーク「頭のいいお前なら、もう全て分かっているはずだろ?」
ジアス「うるせぇっ!お前に………先に逝きやがったテメエに俺の気持ちが分かってたまるかっ!」
ディーク「すまない。だが…。」
ジアス「見くびんなっ!」
ディーク「ジアス…。」
ジアス「お前が…お前達が俺を裏切るわけなんてねえっ!そんなこと分かってんだよっ!天満の中に俺を閉じ込めたのだって、自分の側にいてほしいわけじゃない…本当はあの時の戦いで力を使い過ぎた俺を……守るためだっていうこともな。」
シャウト「そうか、天満はディークの生まれ代わりだ。その天満の中にいれば、一番回復できる。」
ディーク「………。」
ジアス「テメエは卑怯だ!自分では何も語りやがらねえ!俺ばっか空回りして………くそっ!」
ディーク「ジアス…ありがとう。今まで天満を…『ディーノ』を守り続けてくれて。」
ジアス「だから卑怯だってんだ!」
ディーク「お前は少しも変わってないな。あの頃の、優しいジアスだ。」
ジアス「くそディーク…。」
ディーク「ふふ…他の二人も久しぶりだな。シャウト、シンセーテン。」
シャウト「ああ…。」
シンセーテン「ディーク…。」
ディーク「ジアス…。」
ジアス「…何だよ?」
ディーク「私の最後のわがまま、聞いてくれるかい?」
ジアス「ちぃ、テメエには何回最後のわがままがあんだよ!」
ディーク「頼む…ジアス。」
ジアス「ちぃ……これが…最後だからな。」
ディーク「ありがとう……皆で幸せに生きてくれ。お前…いや、お前達ならできるはずだ。」
ジアス「本当に勝手だな…!」
シンセーテン「ジアス!ディークは!」
ディーク「いいんだシンセーテン。大丈夫、ジアスは分かってくれてるよ。」
ジアス「ふん…。」
ディーク「ありがとうジアス。」
ジアス「…分かったからさっさといけよ!用はすんだんだろ!」
ディーク「幸せに生きてくれ……私の愛する子供達…。そして…聞いてるね『ディーノ』。君に全てを押し付けてすまない。だが君なら、天満ならできると信じてる。私の愛する子供達をよろしく頼む。」
ジアス「ディーク!」
ディーク「!」
ジアス「あとは……任せろ…。」
ディーク「…ありがとうジアス。この世界を頼む…。」
ジアス「分かったよ……親父…。(ボソ)」
シャウト「ディーク…。」
シンセーテン「ディークの意思は、僕達が引き継ぐよ。」
ジアス「ふぅ…。」
シャウト「ジアス…。」
ジアス「分かってるよ。アイツの本当に最後のわがまま…聞いてやるよ。」
シンセーテン「ジアス!」
ジアス「だけどこの舟はどうすんだ?ボロボロだぞ。」
にゅう「にゅう達に任せるにゅ〜!」
ジアス「はあ?お前みたいなチビに任せられるかよ!」
にゅう「そんなことないにゅ〜。初めて見つけた時の方が酷かったにゅ〜。だから任せるにゅ〜!にゅう達守ってくれたお礼だにゅ〜!」
ジアス「ほう…じゃあやってみろよ!できなかったら焼いて食うからなっ!」
にゅう「にゅ〜っっ!」
シャウト「からかうなジアス!頼めるか、にゅう?」
にゅう「みんなで頑張るにゅ〜!」
ジアス「じゃあ俺は戻るぜ。シャウト、シンセーテン、あとは頼む。」
シャウト「ああ。」
天満「うう…。」
剣斗「天満!」
天満「少し…疲れた…。」
剣斗「ああ、ゆっくり休め。」
にゅう「さあ!頑張るにゅ〜っ!」
ポンコロ達「にゅ〜〜〜〜!」
(三日経った)
にゅう「完成だにゅ〜っ!頑張ったにゅ〜っ!」
剣斗「これが『ディークの箱舟』…。」
天満「う…。」
剣斗「起きたか天満!」
天満「出来たんだな。…待ってろよ真雪。」
(その頃真雪は)
ネオス「さあ、始めよう。」
真雪「………。」
次回に続く