第二劇『異界』
水鏡「さあ、着いたぞ。ここが、エルフの世界であり、我々同盟軍『エデン』の里である『マドラド』なのだよ。」
真雪「ここが…エルフの世界『オルテナ』なの?」
琴花「きれ〜い!見たこともない花や生物がいっぱいいるじゃん!アハ、あの生き物はナニナニ?」
水鏡「あれは、君達の世界でいうと馬のような生物だな。ここでは狩りの対象だがね。」
真雪「食べちゃうんですか?」
水鏡「こっちでは主に狩猟をして生活しているのだよ。」
剣斗「どうした?天満?」
天満「いや…ここは確か…。」
水鏡「ほう、覚えているのかな?」
天満「ハッキリとは思い出せないけど、どこか懐かしい気分だ。」
水鏡「ふふ…そうそう、ここでは、私のことは『シャウト』と呼んでもらおうか。」
真雪「どういうことですか?」
天満「ここでは、『エルフネーム』を使う。俺もエルフとしての名前がしっかりある。」
剣斗・琴花「エルフッ!?」
天満「え?真雪に聞いたんだろ?」
剣斗「いや、話は聞いてたけど、天満の口から聞くと、やっぱり驚くよなぁ。」
天満「ごめんな…今まで黙ってて…。話そうとは思ってはいたんだけど……怖かったんだ…。剣斗は親友なのに…。」
剣斗「気にすんなって!それにお前がお前であることには変わりはないんだからな!」
琴花「そうだよ!私達が知ってる扇くんは、天然だけど、剣道部のエースで、学校の成績超〜悪いけど、優しい人だって!」
天満「褒めてんだか、けなしてんだか…。」
真雪「アハハハハ!」
天満「笑いすぎだっつうの!」
剣斗「でも、シャウトみたいに耳が長くないよな?エルフはみんなこんなんじゃないのか?」
シャウト「彼は少々『特別』だからね。」
剣斗「『特別』?」
シャウト「その内分かる。」
剣斗「ふ〜ん。」
天満「そういや…何で俺の耳はエルフっぽくないんだろう…?(ボソ)」
シャウト「さあ、里の入り口に着いたぞ!」
真雪「へぇ〜綺麗な里ですね。」
天満「…『結界』をかけてるな。」
水鏡「気がついたのかね。さすが『ディーノ』だな。」
天満「な、何故知ってるんだっ!俺のエルフネームは親しか…?」
シャウト「君達が人間世界に行ったことが大問題になったからな。ほとんどのエルフは知っている。君にはその理由が分かるはずだが?」
天満「…っ!」
シャウト「天と地のエルフ達が君の親、特に母上に激怒した。」
天満「止めろ…。」
シャウト「なにせ君の母上は地のエルフの…。」
天満「やめろぉぉぉぉぉっっ!」
皆「…っ!」
シャウト「失言だったね。だが、この世界に来た以上、覚悟はしておきなさい。君自身が決めたことだ。」
天満「あんたに言われなくても、分かってるさ!」
真雪「天くん…。」
剣斗「こっちの世界もいろいろあるんだな。」
琴花「ちょっと剣斗、何他人事のフリしてるのさ!」
剣斗「スマンスマン。」
シャウト「この先が作戦会議室だ。そして、あの方が我々同盟軍隊長『ソリッド』様だ。」
ソリッド「シャウト!帰ってきたのか?ん?この子達は…?」
シャウト「はい。」
天満「…天満です。」
真雪「神谷真雪です。」
剣斗「俺は剣斗だ。」
琴花「相田琴花で〜す。」
ソリッド「やはりそうか!なるほど…どことなく面影があるな。」
天満「えっ!まさか、俺の親のこと…!」
ソリッド「ああ、よく知ってるよ!君の親父さんには随分鍛えられたからね。」
天満「そうでしたか…。」
ソリッド「…親父さんは?」
天満「………。」
ソリッド「そうか…もう一度稽古してもらいたかったんだがね。」
天満「すみません…。」
ソリッド「君が謝る必要なんてないさ。…よしっ!君達には早速だが、ある人の所に行ってもらいたい。」
真雪「どこにですか?」
ソリッド「我が『エデン』の『戦術師ララァ』の所にだ。そこで、今の現状と力を授かりなさい。」
天満「力?俺は親からある程度聞いてるし、エルフだからいいけど、真雪達は人間ですよ?」
ソリッド「行けば分かる。このエルフの世界では想いの強さが力に変わる。それだけは覚えておきなさい。」
シャウト「では、私についてきなさい。」
(混乱しながらもついていく)
ソリッド「天満!」
天満「…っ!」
ソリッド「君達は強くなる!君達がここに来ることを決めた時のことを思い出せ!どんな想いでここに来たのか!」
皆「…!」
ソリッド「『オルフェリア』の導きが共にあらんことを。」
天満「ありがとうございました!」
真雪と剣斗と琴花「ありがとうございました!」
(『ララァ』の元に向かう)
真雪「天くん、さっきの『オルフェリア』って何?」
天満「ん?ああ…昔……今のように争いが起こってしまって、最初は小さな争いだったけど、とうとう大戦が勃発して、多くのエルフが死んだ。」
琴花「分かったぁ!その大戦で勝利した国のエルフの名前だ!つまり、英雄!」
天満「ハズレ。」
琴花「えっ!」
剣斗「くくく…馬鹿丸出し…。」
琴花「鼻折るよっ!」
剣斗「んんっ!」
真雪「それで?」
天満「大戦がますます激しくなった時、空から眩い光を放ち、舞い降りてきた生物がいた。そして大地からも、激しい揺れとともに、漆黒の光を放ち踊り出てきた生物がいた。」
真雪「何なの?その生物…?」
シャウト「その二匹の生物が次第に融合していった。それはかつて言い伝えられてきた、伝説の『双頭の霊鳥』、エルフネームで『オルフェリア』だった。」
天満「『オルフェリア』は全てを見ている。そして、大戦を止めた。昔から、平和のシンボルとして扱われてきたわけなんだ。まあ、いい伝えだから、本当かどうか分からないけどな。」
シャウト「………。」
真雪「へぇ〜。」
剣斗「見てみてえな〜。」
琴花「アンタは食べられたりして…。」
剣斗「そん時は琴花を盾にして逃げてやるよ!あ、琴花なんか食べたら腹壊すか?アハハ!」
琴花「な、何だとーーーっ!」
真雪「まあまあ。」
シャウト「着いたぞ。あそこの小屋に『ララァ』がいる。ここに紹介状がある。これを渡しなさい。」
天満「シャウトは来ないのか?」
シャウト「い、いや……今はちょっとな…。黙って出て来ちゃったからなぁ。(ボソ)」
天満「…よく分からないけど、会いに行けばいいんだな?」
シャウト「ゴホン!そのとおり!」
真雪「案内ありがとうございました。また会えますよね?」
シャウト「ああ、きっと。『オルフェリア』の導きがあれば必ず。」
天満「ああ。」
シャウト「天満…お前達なら…。」
(小屋に入る)
天満「…すみません。お邪魔しま…す…。」
?「テヤァァァッ!」
剣斗「いってぇぇぇぇ!」
天満「このっ!」
(取り押さえようとする)
?「う…『ファイアボール』!」
天満「なっ!『錬術』!?」
(天満避ける)
剣斗「ええっ!ま、また俺かよ!ア、アッチィィィ!」
?「『ミラァ』、いい加減にしなさい!よく見なさいっ!人違いよ!」
ミラァ「えっ!あ!」
天満「人違い?」
?「ごめんなさい。そそっかしい子で。ある人と間違えてしまって。」
剣斗「…人違いで死ぬかと思ったぞ…!」
ミラァ「ごめんなさいっ!シャウトと間違えたの!」
天満「シャウトの奴…だから来なかったのか。」
?「あの人ったら、この子に『錬術』を教える約束をすっぽかしたものですから。」
琴花「私達はここに行けと言われて来たんですけど…。」
(紹介状を渡す)
?「なるほど…あなた達が…。わかりました。」
天満「それで、『ララァ』さんは?」
?「私が『ララァ』です。」
天満「そうだったんですか!俺は天満です。こっちから、真雪、琴花、剣斗です。」
ララァ「そう、あなたが天満くん。なるほど、本当に魂が二つある。まるで『オルフェリア』みたいに。」
天満「そんなことより!」
ララァ「ああ、そうでしたね。では早速説明します。今、天と地のエルフが争っているのは知っていますね。天のエルフの国である『エーテル』と地のエルフの国である『ラフォール』が争っています。そして、それを止めるために結成されたのが、天と地の同盟軍『エデン』なのです。」
真雪「それじゃあ、この里には、天と地のエルフがいるんですか?」
ララァ「そうです。天と地が和平するために、各国から同志を募りました。」
真雪「そうだったんですか。」
ララァ「今分かってることは、二つの国は一触即発。領土問題もありますが、今はどちらの方がより優れているのか、というくだらない理由を戦機として、いつ大戦になってもおかしくない状況なのです。そこで、あなた達にして頂きたいのは、まず力を得ること。そして、私達と一緒に争いを止めて欲しいのです。」
剣斗「力って何?」
ララァ「これから人間のあなた達には、『水鏡の試練』を受けてもらいます。そこで、『錬術』(『法錬術』ともいいます)を体得してもらいます。」
天満「俺は?」
ララァ「あなたは生粋のエルフなので、『錬術』を使えなくても今はいいです。それよりも、あなたには『錬刀術』と呼ばれる剣術を身につけてもらいます。」
天満「知ってます。少しなら使えるし。そうじゃなくて、俺は試練を受けなくていいんですか?」
ララァ「先程も言いいましたが今はいいです。それにこの『水鏡の試練』は人間がエルフと同じ力を得るための洗礼儀式です。このミラァのように。」
天満「じ、じゃあ…。」
ララァ「そう、この子は人間です。」
天満「な、なんで?」
ララァ「この子は以前、この『オルテナ』に迷い込んだ夫婦が、ここで暮らして産んだ子なんです。」
天満「そうか…どこかでこっちに通じる穴が生じた時に…。」
ララァ「そうです。そして、この子の両親は病気で他界しました。」
ミラァ「でも私はちっとも寂しくなんて無いけどね。ララァには名前を貰ったし、もう一人のお母さんなんだもん。」
琴花「ミラァちゃん…。」
剣斗「さっきは殺されかけたけど、許してやるよ…。」
琴花「あんた泣いてんの?」
剣斗「これは、涙なんかじゃないさ。心の汗さ…!」
琴花「言ってて恥ずかしくない?」
剣斗「………。」
ララァ「さて、それでは皆さん、この鏡の中にお入り下さい。」
天満「みんな…気を付けてな。」
剣斗「任せろって!強くなってくっからよ!」
琴花「腹筋とか割れたりしないよね…?」
剣斗「そんときゃ、ボディビルダーにでもなったら?お似合いだよ!アハハハハ!」
琴花「あの世へ行けっ!」
剣斗「んあっ!」
天満「真雪…。」
真雪「天くんも、頑張ってね。」
天満「ああ…分かったよ!俺も強くなるよ!みんなも強くなれよ!」
皆「おう!」
ララァ「いいチームね。」
ミラァ「いいなぁ…。」
(三人は鏡の中へ)
天満「それじゃ俺も!」
ララァ「私が稽古してさしあげます。さあ、この剣を。」
天満「ララァさんが?」
ララァ「あら、ご不満ですか?」
天満「い、いや……でも………。」
ララァ「……『飛燕斬』っ!」
天満「うわっ!き、木が…真っ二つに!?」
ミラァ「こう見えても、ララァは同盟軍の『戦術指南役』であり、元隊長だったんだよ!」
ララァ「見た目で判断することは、戦いでは死を意味することだと認識しておきなさい。」
天満「す、すいませんでした…!」
ララァ「ふふ、分かって頂ければよいのです。それでは行きますよっ!」
天満「はいっ!お願いしますっ!」
ミラァ「天満…なかなかカッコイイじゃん!」
天満「みんな、頑張ろうな!俺も頑張るから!」
次回へ続く