第十九劇『闘士』
シャウト「そろそろ山の中腹ってところか。」
剣斗「あのさあ、もしかしてまた守人がいたりするのか?」
シャウト「いや、守人はバラードだけだ。」
剣斗「よかったぁ〜。ま〜たあんな訳の分からない奴が出てくるんだったら、さすがにしんどいからな…。」
シャウト「あはは!そんなこと言うとバラードにどやされるぞ。それに、バラードは『八闘士』の生き残りなんだ。強さもズバ抜けてるんだぞ。」
剣斗「『八闘士』って?」
シャウト「ディークの下に集った、八人の闘士達さ。」
天満「生き残りって言うと…。」
シャウト「ああ、ほとんどが『アオス』との戦いで命を落とした。今生きている者は、バラードと同じく守人として、ディークの意思を引き継いでいる。」
シンセーテン「テントゥを覚えているかい?彼も『八闘士』の一人だよ。」
天満「そうだったのか…。」
シャウト「お前の父もそうだったのだぞ。」
天満「父さんが!」
シャウト「『八闘士』の中でも、一番の実力者で、実質リーダー的存在。それが『星の霊神ダイン』だ。『アオス』との戦いの時は、残念ながら一緒に戦えなかったがな。もし、『ダイン』がいたら、ディークは死なずにすんだかもしれない。」
天満「何で父さんは一緒に戦えなかったんだ?」
シャウト「人間界を守ってたからさ。」
天満「え?」
シンセーテン「『アオス』はね、エルフ界と人間界両方を破壊しようとしてたんだよ。それを知ったディークは、『ダイン』やバラード達に人間界を守らせたんだよ。」
天満「………。」
剣斗「でも何でディークは三霊神にじゃなく『ダイン』に天満を預けたんだ?」
シンセーテン「僕達はディークに創られた存在だからね。ディークが死ぬと極端に力が劣る。そのため、力を蓄えるために眠る必要があったんだよ。『ディーノ』…つまりディークの力を受け継いだ天満が、力に目覚めるまではね。だから、力もあり信頼に厚い『ダイン』に天満を任せたんだよ。幸い『ダイン』には恋人がいたからね。母親の役目にも欠かさなかった。」
天満「それが母さんか…。何か俺……何も知らなかったんだな。父さんや母さん、地門や自分のことまで…。」
アイズ「知らなかったのなら、これから知っていけばいいだろ。お前の時間はこれからなんだからな。」
天満「アイズ……ああ…ありがとう。」
シャウト「さあて、喋ってる間に『第二景』の終着だ。」
?「君達は誰だにゅ〜?」
皆「!」
琴花「え?何?うわ!可愛い〜!」
?「こんなトコで何してるにゅ〜?」
剣斗「何だ〜?このちっちゃいクマみたいな奴は?」
?「にゅ〜っ!ちっちゃい言うなにゅ〜っ!」
天満「ごめんな。え〜と、俺は天満、俺達はこの山に探し物に来たんだ。君はどうしてここに?」
?「ココに住んでるにゅ〜。家族で住んでるにゅ〜。」
シャウト「まさかお前は『妖精ポンコロ』じゃないか?」
?「にゅ〜!そうにゅ〜!にゅうは『ポンコロ』の『にゅう』だにゅ〜!」
天満「何?『妖精ポンコロ』?」
シンセーテン「へぇ〜僕も初めて見たよ!神聖な場所にしか住まない種族『妖精』。その中でも極めて数が少なく、人の言葉を理解する『幻の妖精ポンコロ』。噂では『ポンコロ』は不思議な力を持ってるらしいけど。」
天満「不思議な力って何?」
シャウト「私の聞いた話じゃ、癒しの力だとか…。」
ミラァ「というか本人に聞いたらいいんじゃないの?」
シャウト「そ、そうだな。」
天満「ねえ、にゅう?」
にゅう「何だにゅ〜?」
天満「にゅう達『ポンコロ』にはどんな力があるんだい?」
にゅう「にゅ〜?力にゅ〜?何のことにゅ〜?」
天満「じゃ、じゃあにゅうの得意なことは何?」
にゅう「直すにゅ〜!」
天満「へ?直す?」
にゅう「そうだにゅ〜!直すにゅ〜!」
剣斗「何を直すんだ?」
にゅう「何でも直すにゅ〜!今も直してるにゅ〜!」
天満「今も?何を直してるんだい?」
にゅう「よく分からないにゅ〜!」
アイズ「イライラしてくるぞ…。」
天満「まあまあ。何で分からないの?」
にゅう「最近見つけた物にゅ〜!家みたいにゅ〜!大きな羽が付いてる家にゅ〜!」
シャウトとシンセーテン「!」
天満「家?こんな山の中にかい?」
シャウト「ちょっといいか天満。」
天満「どうしたんだ?」
シャウト「にゅうに聞きたいことがあるんだ。にゅう、その家について聞いてもいいか?」
にゅう「いいにゅ〜!何でも答えるにゅ〜!」
シャウト「その家に羽が付いてると言ったな?その羽は何枚付いてた?」
にゅう「にゅ……十二枚だにゅ〜!」
シャウト「…その家…形が変わったりしないか?」
にゅう「よく知ってるにゅ〜!変わるにゅ〜!変わるにゅ〜!おっきいお舟になるにゅ〜!」
シャウト「やはり…。」
シンセーテン「間違い無いみたいだね。」
天満「二人とも?一体何だ?」
シャウト「『ディークの箱舟』だ。」
皆「ええっ!」
シンセーテン「どうやら『泉帝山』に来て正解だったみたいだね。」
天満「じゃあにゅうが直してる家が!」
シャウト「ああ、私達が探している舟だ。」
天満「やったーーーーーーっっ!これで真雪を助けられる!」
剣斗「ああ、やったな天満!」
琴花「にゅうにそこへ案内してもらおうよ!」
天満「ああ!にゅう、その家があるところに案内してくれるかい?その家が俺達が探している物らしいんだよ!」
にゅう「分かったにゅ〜!ついてくるにゅ〜!」
シャウト「舟は見つかった。あとは…。」
シンセーテン「うん…。」
(にゅうについていく)
にゅう「ここだにゅ〜!にゅっ!」
天満「これは!」
ノア「ひどい…。」
にゅう「にゅ〜!みんなどうしたにゅ〜!」
天満「ダメだ、にゅうっ!」
にゅう「どうして止めるにゅ〜?」
天満「誰か…いる。」
?「ほう……やはり知っている感じがしたのは、勘違いでは無かったみたいだな。」
天満「お前は!」
?「久しぶりだな。少しは強くなったみたいだが。」
天満「アスフォートッッ!」
シンセーテン「え?アスフォート?」
アスフォート「ほう、懐かしい顔もあるな。」
シャウト「久しぶりだなアスフォート。真雪をお前が拐った時は、自分の目を疑ったぞ。」
シンセーテン「嘘だろ…?シャウト、君は知ってたのかい?」
シャウト「ああ…。」
シンセーテン「どうして教えてくれなかったのさ!」
シャウト「すまない。本当に、あのアスフォートなのか確たる証拠を掴むまで、お前には言わなかった。だが…残念なことに、あのアスフォートのようだ。」
剣斗「一体何なんだよ!二人とも、アイツを知ってんのか?」
シンセーテン「アイツは…。」
アスフォート「言いにくいかシンセーテン。だったら私が自分の口で答えてやろう。私はかつて、そこの二人と共に世界の危機を救った者の一人だ。」
剣斗「え?どういうことだ?」
アイズ「少しは頭を使ったらどうだ?」
剣斗「何だよ!」
ノア「『八闘士』……じゃないですか?」
剣斗「んなバカなっ!だったら何で俺達の敵なんだよ!」
天満「そんなこと、どうでもいい。」
剣斗「天満…?」
天満「にゅう、危険だから隠れてな。」
にゅう「にゅ〜?」
天満「大丈夫だよ。だから…ね。」
にゅう「にゅ〜!」
天満「『ポンコロ』達を傷付けたのはお前か?」
アスフォート「邪魔だったのでな。」
天満「真雪を悲しませ、次は『ポンコロ』達か?」
アスフォート「この者達は舟を直そうとしていた。この舟を直されると、少々やっかいなのでな。我が主の命により、舟を破壊する。」
天満「何の罪もない『ポンコロ』を……にゅうの大切な家族を……よくも……。」
アスフォート「弱き者はそれだけで罪だ。」
天満「人の大切なモノを奪う権利が、お前にあるのかっっっ!」
アスフォート「弱き者の大切なモノなど、ゴミクズに等しい。」
天満「貴様ぁぁぁぁっっっ!」
アスフォート「ふ……少々退屈してたところだ。遊んでやろう、かかってこい。」
天満「シンセーテン、行くぞ!力を貸してくれっ!」
シンセーテン「待って天満!」
天満「え?どうして?」
アスフォート「………。」
シンセーテン「何故なのアスフォート?」
アスフォート「シンセーテン…。」
シンセーテン「ディークに一番慕っていた君が何故なの!」
アスフォート「私も若かった。ただそれだけだ。」
シンセーテン「何だよそれ…。」
アスフォート「ディークは弱かったから死んだ。そして『アオス』は強かったから生存している。私は弱き者に興味は無い。ただただ強き道を歩むだけだ。」
シンセーテン「まさか……お前の主っていうのは……?」
アスフォート「そうだ……『アオス』の後継者だよ。」
皆「!」
アイズ「バカなっ!」
ノア「また繰り返すのか?」
ユズキ「闇の時代を…!」
ミラァ「嘘でしょう!」
シャウト「やはりそうだったのか。」
アスフォート「さすがはシャウトだな。まあ、知ったところで何もすることはできないぞ。お前達弱き者がいくらあがこうが、所詮は闇の強さには勝てない。どんな色も黒に勝てないようにな。」
シンセーテン「この世界を滅ぼす気なのかっ!」
アスフォート「滅びではない。新たな世界を創るためだ。強き者だけが住む新世界をな。」
天満「ふざけるなっ!じゃあ真雪を拐ったのは何故だ!」
アスフォート「知らなかったのか…。あの女性は鍵なのだよ。」
天満「鍵?」
シャウト「まさか!真雪が……『アーミア』の後継者なのか?」
アスフォート「そういうことだ。」
ノア「『アーミア』って確か……国王達に殺された…?」
シャウト「そうか…真雪を使い復活させるつもりか!」
アスフォート「そのとおりだ。悪夢だろ?」
シャウト「お前は本当にそんなことを許すつもりかっ!またあの悲劇を繰り返すつもりかっ!」
天満「ちょっと待てよ!真雪を使うって何だよ…?」
アスフォート「生け贄だ。」
天満「イケニエ…だと…?」
アスフォート「あの女性の命を犠牲にし、神を復活させるのだよ。」
天満「何だって……そ…そんなこと絶対させるかよっっ!真雪を返せっっ!」
アスフォート「ふ…もう遅い…。計画は着々と進んでいる。」
天満「許さないぞっ!アスフォートッッッ!」
アスフォート「許さない…か。ではどうする?ディークのように犬死にでもするか?」
天満「ディークは大切なモノを守るために死んだ。それが犬死にだって言うのかっ!」
アスフォート「言ったであろう。弱き者の想いはゴミクズだと。」
天満「な!」
アスフォート「ディークはゴミクズを守るために死んだ。意味の無い犬死にだ。」
?「許さねえ…!」
天満「え?」
?「アイツを悪く言う奴は許さねえっ!」
天満「こ、これは!うっ……!」
アスフォート「弱き者は消えろっ!『シャドウシックル』!」
剣斗「天満!」
アスフォート「所詮はこの程度か。ディークの足元にも及ばない。期待した私が馬鹿だったな。」
?「よう……久しぶりだなアスフォート。」
アスフォート「お、お前はっ!」
シャウト「アスフォートは怒らせてはいけない奴を怒らせたな。ジアス…。」
ジアス「一つ…教えてやる。ディークの悪口を言ってもいいのは俺だけだ!それ以外は認めねえっ!死ぬかっ!アスフォートッッ!」
次回に続く