第十八劇『疾風』
シンセーテン「な〜にが、アンダスタ〜ンド?だよ!」
バラード「あらん!そのキューティなお声はん!」
シンセーテン「久しぶりだねバラード。」
バラード「やっぱりシンセーテン様ん!」
シャウト「相変わらずのようだな。」
バラード「その渋いお声はん?シャウト様ん!お二人揃ってどうしましたねん?」
シャウト「実はだな…。」
(理由を説明)
バラード「なるほどねん。ディーク様のお舟を……。わかりましたわん。ですがその者達を通す訳にはいきませんわん。」
剣斗「何でだよ!」
バラード「好みじゃないからだわん。特にアナタはねん。」
剣斗「な、関係ないだろ!このクネクネオカマ!」
シンセーテン「ああ!その言葉は駄目…。」
バラード「オ…カマ?」
剣斗「な、何だよ!」
バラード「今、オカマっつたか?お?」
剣斗「へ…?く、口調が…?」
バラード「ふざけんなよコラァ!あ?お?俺のどこがオカマなんだよ?調子に乗ってんなよ?は?お?死なすぞぉ〜?このクサレブタが!あの世に行くか?ああ?」
剣斗「ふ、普通に喋れんだったら、そうしろよ!」
バラード「うるせえな!テメエに何か迷惑かけたかぁ?お?え?殺すぞぉ〜?」
剣斗「す、すいませんした…。」
シンセーテン「はあ…。」
ノア「何ですかアレ?」
シャウト「この山の守人だ。いわゆる門番みたいなものだ。」
ノア「そうなんですか。それにしても…凄い方ですね。」
シンセーテン「バラードはね、オカマ呼ばわりされたら、スイッチが入ってしまうんだよ。普段はただウルサイだけの奴なんだけど、一度スイッチが入るとああなる…。」
天満「バラードさん。」
バラード「ああ?…!ディーク様ん!何故ディーク様が!?」
シンセーテン「違うよバラード。よく見てみなよ。彼は『ディーノ』だよ。」
バラード「え?……似ている…わん。そうですかねん…。お会いしとうございました『ディーノ』様ん。」
天満「バラードさん、どうかここを通して欲しいんだ。」
バラード「バラードとお呼び下さいねん。もちろん『ディーノ』様なら、お止めする理由はありませんわん。ですがこの神聖な場所に、どこの誰とも分からぬ者達を通す訳には参りませんわん。」
天満「どうしても?」
バラード「ディーク様の意思を守るのが、私の役目でございますわん。」
シンセーテン「ディークの意思がここを通せと言ってると言ったら?」
バラード「そうなのですかねん?」
天満「俺の意思がディークの意思なのかは分からない。だけど、俺達はどうしても舟がいるんだ。頼むバラード!通してくれ!」
バラード「了解しましたわん。ただし一つ条件がございますわん。」
天満「条件?」
バラード「あの者達を試させて下さいねん。」
天満「え?」
バラード「あの者達を見極めさせて頂きたいですわん。」
天満「で、でも…。」
剣斗「いいぜ!」
天満「剣斗!」
琴花「何するか分からないけど、いいよ!」
ミラァ「アタシだって!」
アイズ「試されるのは気にくわないが、面白そうだ。」
ノア「そうですね。」
ユズキ「私もです。」
天満「みんな…。」
シンセーテン「それで、どうするのバラード?」
バラード「むふふん、簡単ですわん。それはん……。」
アイズ「戦いか?」
剣斗「それとも、また鏡の試練みたいなのか?」
ミラァ「どちらにしろ、覚悟がいるよね。」
バラード「鬼ゴッコねぇぇぇん!」
皆「へ………。」
剣斗「お、鬼ゴッコぉ?」
アイズ「く、くだらん。」
ミラァ「そんなのでいいの?」
バラード「とにかくアチキを捕まえてみなさいねん。どんな手を使ってもいいわよん。もちろんアチキを殺すつもりでもいいわよん。」
剣斗「な、何か拍子抜けだけど、まあいいや。とにかく、すぐ終わらせてやる。」
アイズ「ん?ちょっと待てよ…。アイツ…。」
バラード「むふふん。では始めるわよん。時間は一時間よん。それでは、始めねんっ!」
剣斗「さっさと終わらせてやる!はっ!」
バラード「へえ〜『法術』ですわねん。少〜しはできるみたいですわねん。」
剣斗「もらったぁ!」
バラード「むふふん。」
ノア「な、バラードが増えた!」
バラード「すぐ終わらせてみなさいねん。できるものならねん。」
天満「す、凄い!一体何だ?」
シンセーテン「ただ単に早く動いてるだけだよ。」
天満「ということは、これって残像なのか?」
剣斗「はあはあはあ…くそ…どれが本体か分からない…。」
琴花「はあはあはあ…速すぎ…。」
ミラァ「はあはあはあ…『法術』使ってもついていけないなんて…。」
ノア「はあはあはあ…何か…手はないか…?」
ユズキ「はあはあはあ…さすがは守人ですね…。」
バラード「ほらほらん、あと〜三十分しかないわよん。」
アイズ「『疾風丸』か…。」
バラード「へえ…懐かしい名前だわねん。よ〜くご存知ねん。」
アイズ「暗殺者が守人だとはな。」
剣斗「どういうことだ?」
アイズ「言葉のとおりだ。昔はバラードと呼ばれてはいなかった。金を出せば、どんな奴も殺す、名も無き暗殺者。その手際があまりにも刹那的で、神速をもって仕事をこなすことから、『疾風丸』と呼ばれたんだ。」
バラード「詳しいのねん。そうよん、アチキは元暗殺者よん。ディーク様に会ってアチキは暗殺者をやめたけどねん。」
アイズ「何故やめたんだ?」
バラード「あの方に名前を頂いたのよん。昔のアチキは名前なんて無かったのよん。知ってる…名前の無い地獄を…。そんな地獄からディーク様は救ってくれたのよん。だからアチキはあの方のために生きるって決めたのよん。ああそうそう、ディーク様はアチキを簡単に捕まえたわよん。」
天満「!」
バラード「さあ〜時間が無いわよん。」
天満「俺もやる!」
バラード「『ディーノ』様?アナタはこんなことをなさらなくてもよろしいんですわよん?」
天満「いや、俺もやる!ディークには出来たんだろ?だったら俺も負けてられないよ!」
バラード「ですが…。」
天満「捕まえてやるよ!君の足は俺が止めてやる!」
バラード「ふ、不可能ですわよん…。」
天満「だったら、可能に変えてやるさ。」
(バラードの過去)
疾風丸「アンタにアチキは止められないわよん。アンタだけじゃない、誰もアチキを…。」
ディーク「何て悲しい目なんだろう。君の闇には光は無いのかい?」
疾風丸「黙りなさい!殺すわよん!」
ディーク「君の名前は何て言うんだい?」
疾風丸「ふん。知っててアチキに会いにきたんじゃないのん?アチキは『疾風丸』よん。」
ディーク「私が聞きたいのは君の名前だ。」
疾風丸「…!アンタに教える義務なんてないわよん!」
ディーク「無いのか。」
疾風丸「か、勝手に決めないでよん!アチキは…アチキは…。」
ディーク「辛いだろうな。名前が無い地獄はとても辛いよな。」
疾風丸「な、何泣いてるのよん?アンタには関係無いじゃない…。」
ディーク「すまない。」
疾風丸「もういいわん!アンタといるとおかしくなるわん!行くわよん!」
ディーク「君の足は私が止める。」
疾風丸「不可能よんっ!」
ディーク「だったら、可能に変えてみるさ。」
(数分後)
疾風丸「そ、そんな…こんな簡単に。」
ディーク「バラード…。」
疾風丸「え?」
ディーク「君の名前だよ。どうかな?」
疾風丸「な、何勝手なこと言ってんのよん!」
ディーク「バラード…意味は……『暖かな光』。」
疾風丸「バラード…。」
ディーク「私についてきてほしい。君は…光に生きるんだ。」
疾風丸「アンタ…。」
(現在へ)
バラード「あの時と同じですわねん。行きますわよん『ディーノ』様ん!」
天満「ああ!」
剣斗「天満!」
バラード「さすがは『ディーノ』様ん!早いわねん!ですが!」
天満「うわぁ!」
アイズ「天満!」
天満「痛っつぅ…大丈夫大丈夫。それより皆、耳を貸してくれ。いいコト思いついちった。」
皆「?」
天満「………。」
アイズ「なるほどな。なかなか面白そうだ。」
ミラァ「さすが天満だね!」
バラード「話しててよろしいんですかねん?あと〜五分ですわよん。」
天満「行くぞみんな!」
皆「おう!」
バラード「バ〜カ正直に来ても駄目ですわよん。」
天満「今だっ!剣斗!」
剣斗「ああ!こっちだ!クネクネオカマーーーーーーーーっ!」
バラード「な、何だとゴルァァァァァッッッ!またテメエかぁぁぁぁぁっっっ!」
剣斗「うわぁ来た来た!今だノア!」
ノア「はい!こっちです!変態オカマさんっ!」
バラード「はあ?ちょっと顔がいいからって調子に乗んなよ!オルァァァァァァッッッ!」
ミラァとユズキ「こっちこっちバカオカマ!」
バラード「お、女だからって許さんからなあっ!ツオルァァァァァァッッッ!」
アイズ「オカマオカマオカマオカマオカマオカマオカマダメオカマ。」
バラード「な、な、何度も言うんじゃねえっ!ガキィィィィィッッッ!」
アイズ「ふ…今だ!光よ!」
バラード「ぐ!眩しい!」
天満「へへ、カッとなると周りが見えなくなる。君の弱点だよ!バラード、チェックメイトだよ!」
バラード「しまっ……!」
皆「やったーーーーーっ!」
シャウト「お見事。バラードを怒らせ、逃げ道の無い場所へ誘導して捕まえる。バラードの負けだな。」
天満「時間ピッタシだよな?バラード?」
バラード「あ……ふふ……あはははは!やられましたわん『ディーノ』様ん!」
天満「あは!それじゃあ!」
バラード「ええ。認めますわん。見事なチームワークでしたわよん。」
天満「よーし!やったーーーーーっ!」
バラード「ま〜さか本当に捕まるとは思わなかったですわん。シャウト様達が連れてくるはずですわねん。」
シャウト「では通ってもいいんだな?」
バラード「はい…『ディーノ』様ん?」
天満「何?」
バラード「アチキの力が必要でしたら、いつでもお声をかけて下さいねん。命をもって、駆けつけますわん。」
天満「ありがとう。でも、一ついいかな?」
バラード「何でしょうかねん?」
天満「『ディーノ』って呼ばないでくれるかな?今の俺は天満だから。そう呼んでほしい。」
バラード「かしこまりました天満様ん。」
シャウト「では行こうか。」
バラード「あの天満様ん!」
天満「ん?」
バラード「どうか気を付けて下さいねん。どうやら侵入者がいるみたいなんですわん。」
天満「侵入者?」
バラード「何者かは分からないですが、アチキに気配を悟られることなく、上に行ったもようなんですわん。私はここから動けませんから、どうか気を付けて下さいねん。」
天満「ありがとうバラード。助けが必要な時は、力を貸してくれ!」
バラード「はい!お待ちしておりますわん!」
(天満達は『第二景』へ)
アイズ「霧?いや、雲か?」
天満「さすが一番高い山だな。まだ半分も行ってないのに…。」
シャウト「………。」
シンセーテン「侵入者のこと、考えてるでしょ?」
シャウト「ああ…。バラードに気付かれない程のてだれ。一体何のためにここへ来たのか…。」
シンセーテン「まあ、いくら考えても分からないよ。会って直接聞けばいいんじゃないかな?」
シャウト「そうだな。敵でなければいいが…。」
(山の何処か)
?「段々近付いて来てるな。かなりの人数だが、何故だ?この感じ……知ってる感じがする。……まさかな。」
次回に続く