第十六劇『驚倒』
天満「『ムゲン島』?」
シャウト「ああ、そこに真雪がいる。」
天満「どうやったらそこに行けるんだ?」
シャウト「それなんだがな……上陸するのが難しいんだ。」
天満「え?何でだ?シャウトはその島に入って調べてたんじゃないのか?」
シャウト「いや、入ってはいない。ただ…。」
アイズ「見えたんだろ?」
シャウト「!」
天満「どういうことだ?」
アイズ「天満には言っただろ?シャウトは未来を見ることができるって。」
天満「あっ!」
シャウト「…まあ、見えると言っても、遠い未来ではなく、近い未来を刹那的に知ることができるだけだがな。」
天満「じゃあ、その力で真雪の未来を見たわけか?」
シャウト「まあ、そんなとこだ。」
剣斗「でも、一体どうやって行けばいいんだ?」
シャウト「たった一つだけ方法がある………舟だ。」
アイズ「何を言ってる。あの島の周囲は多数の渦潮があり、とてもじゃないが海上を進むことなんて出来ないぞ!」
シャウト「確かに海上からは無理だ。だが空からならどうだ?」
アイズ「は?意味が分からん。」
シンセーテン「…もしかして、『ディークの箱舟』のこと言ってる?」
シャウト「…ああ。」
天満「『ディーク』って確か…。」
シンセーテン「そう、『天駆ける者』だよ。その昔、『アオス』が起こした大洪水から、霊神達を守った舟だよ。その時の舟が『ディーク』が造ったと言われる空を自由に飛び回る舟『ディークの箱舟』なんだよ。」
シャウト「そのとおりだ。」
シンセーテン「シャウト…分かってるのかい?その舟は…。」
シャウト「もちろんだ。」
シンセーテン「『アイツ』が力を貸してくれるとは思えないよ?」
シャウト「………。」
琴花「な〜んか、話が飛躍し過ぎてついていけない…。」
天満「そんな舟があるなら、さっそく!」
シンセーテン「…無理だね。」
天満「え?」
剣斗「何でだよ!」
シンセーテン「理由は二つ。まず一つ、『ディークの箱舟』がどこにあるか分からない。二つ目は、例え見つけたとしても動かせない。」
天満「動かせない?どういうことだ?」
シャウト「実はな天満…それを動かせるのは『三霊神』だけなんだ。」
天満「だ、だったら大丈夫じゃないか!ここには『三霊神』が二人もいるんだから!」
シャウト「いや、二人だけじゃ駄目なんだ。確かに動かすのは一人でもできる。だがエネルギーを送って起動させなければならない。」
シンセーテン「おそらく今の状態は、エネルギーが空の眠っている状態だからね。再び動かすには僕達『三霊神』の『天地鏡』のエネルギーが必要なんだよね。」
天満「じゃあ早く三人目を見つけて!」
シンセーテン「今ヒント言ったよね。『天地鏡』って…。」
天満「え?」
シャウト「『天』はシンセーテン、『鏡』はこのシャウト、そして…。」
天満「『地』だろ?」
シンセーテン「まだ、分からない?」
天満「ん?……は!ま…まさか…?」
シンセーテン「そう…君の最も知ってる者であり、最も嫌いな者でもある彼だよ。」
天満「地…門…なの……か?」
皆「!」
シャウト「ああそうだ。かつて『ディーク』と共に戦い、『アオス』を封印した、『オルテナ』を守護する『三霊神』の一人、『地のジアス』だ。」
剣斗「嘘だろ…?」
琴花「何で…?」
ユズキとノア「?」
アイズ「………。」
天満「じ、じゃあアイツが力を貸してくれないと、舟は動かせない……のか?」
シンセーテン「だから無理だって言ったろ。アイツが力を貸してくれるわけがない。それ以前に、こっちに襲いかかる可能性の方が、極めて高いよね。」
シャウト「だがもうこれしか…。」
天満「く……真雪ぃ…。」
剣斗「天満…。」
天満「少し…考えさせてくれ…。」
(天満が皆から離れる)
シンセーテン「ふ〜む…。」
シャウト「なあ、シンセーテン。『ジアス』の力だけを抽出することは出来ないのか?」
シンセーテン「難しいだろうね。今の会話だって、聞いてるだろうし、アイツ。」
シャウト「だが『ジアス』があんなことになったのは私達にも責任がある。」
シンセーテン「まあ、言い換えれば『愛情』の裏返しだからね。」
シャウト「そう…だな。言ってみれば、私達は兄弟なんだからな。」
シンセーテン「全然似てないけどね。」
シャウト「そう…だな。」
(その頃天満は)
天満「く…!」
アイズ「情けない奴だな。」
天満「アイズ!」
アイズ「何を怖がっている。」
天満「べ、別に怖がってなんか!」
アイズ「嘘をつけ。短い付き合いだが、顔を見ればそれくらい分かる。」
(その頃剣斗は)
剣斗「あ、天満!お〜いて…。」
琴花「しっ!」
剣斗「こ、琴花!」
琴花「いいから!皆もいい!」
剣斗「え?ユ、ユズキさんに…ノアまで!」
ミラァ「アタシもいるんだけど。」
剣斗「うわ!いたんかい!」
琴花「静かにしなよ!」
剣斗とミラァ「ごめんなさい…。」
(再び天満)
アイズ「弱虫だなお前は。」
天満「な!アイズに何が分かるんだよ!アイツのこと、何も知らないくせに!」
アイズ「ああ知らない。だから何だ?」
天満「く…!もう一人にしてくれっ!」
アイズ「天満、僕に言ったこと、もう忘れたのか?」
天満「え?」
アイズ「大切な人を守りたい。その人を救う力が欲しい。確かそんなことを言ってたな。」
天満「だ、だから何だ?」
アイズ「ふ…お前の信念は所詮その程度だったんだな。守る守ると口にしてはいるものの、いざ行動を起こそうとして壁にあたると、くじける。大した信念だな!」
天満「あ……う…。」
アイズ「…僕にも…。」
天満「ん……。」
アイズ「僕にも救いたい人がいる。守ってあげたい人がいる。」
天満「アイズ…。」
アイズ「僕には、姉さんがいるんだ。あの時、落城の時に姉さんは僕を助けてくれた。」
天満「じゃあ…その人はもう…。」
アイズ「大丈夫。姉さんは生きてる。僕には分かるんだ。だから必死になって探してるんだ。」
天満「どんな人なんだ?」
アイズ「……地の国の…お姫様さ。名前はフィアン…。」
天満「と、ということは、アイズは王子なのか?騎士団長なのに?」
アイズ「………まあ…な。僕は王子って柄じゃないからな、皆の反対を押し切って騎士団長の任に就いたんだ。」
天満「ん?フィアン?……確か…?」
アイズ「どうした?」
天満「こ、これ…。」
アイズ「ん?なっ!これはっ!何でお前が姉さんの指輪を?」
天満「やっぱりアイズのお姉さんのだったのか。これさ、『ラフォール城跡』で拾ったんだ。」
アイズ「そ、そうか……だから…天満と会ったんだな。」
天満「どういうこと?」
アイズ「僕も指輪を持ってるんだ。ほら…この指輪は三つで一つなんだ。だからお互いが引き合うんだ。あの時、『究の回廊』で会った時も、この指輪に導かれたからなんだ。」
天満「三つ…?」
アイズ「ふぅ……どうやら元気が出たようだな。」
天満「え?」
アイズ「ふ…お前が何を怖がっているのかは分からないが、少しは頼れ。」
天満「アイズ…。」
アイズ「指輪を拾ってもらった礼だ。とことん付き合ってやるよ。」
天満「で、でも…。」
アイズ「僕は姉さんを必ず探し出す!それが僕の信念だ!それに、怖い時は…大切な人のことを思い浮かべてみればいい。そして、今自分の立っている場所を見据えるんだ。そうすれば色々見えてくる。」
(アイズ去る)
天満「自分の立っている場所…。」
(剣斗達は)
剣斗「アイズの奴、なかなかやるな。」
ノア「エルフか…。」
琴花「とりあえず戻ろうか?」
ユズキ「そうですね。」
ミラァ「天満…ガンバ!」
(シャウトの元に戻る)
シャウト「どうだった?」
剣斗「天満次第…だな。」
シャウト「そうか…。」
アイズ「ふん。こそこそせずに出てくれば良かったろうが。」
剣斗「き、気付いてたのか?」
アイズ「当たり前だ。」
剣斗「アイズには敵わねえなぁ〜。」
アイズ「ところで、舟の捜索はどうする?」
シャウト「そうだな…。」
アイズ「何か手がかりは無いのか?」
シャウト「無いことも無いんだがな。」
アイズ「趣味の悪い答え方をするな。早く言え。」
シャウト「『泉帝山』だ。」
アイズ「あんなとこにか?」
剣斗「どういうとこなんだ?」
シンセーテン「『泉帝山』はね、この『オルテナ』で一番高い山であり、一番神聖な場所だよ。」
剣斗「神聖?」
シンセーテン「うん。なんたって『ディーク』が降り立った所だからね。」
アイズ「なるほどな。主が造ったモノは、主の元に戻る…か。行ってみる価値はあるか。」
シャウト「ああ。早速行ってみるか。」
剣斗「天満は?」
シャウト「まだ舟があると決まったわけじゃない。それに…天満にも時間が必要だろ?」
剣斗「………。」
天満「行くよ。」
剣斗「天満!」
天満「俺も行く。」
アイズ「足手まといはごめんだぞ。」
天満「俺は……今自分の意思でここに立ってる!」
アイズ「ふ…。」
シャウト「……いいんだな?」
天満「ああ!行こう!」
シャウト「よし!」
(『泉帝山』に向かう準備をする)
ソリッド「ああ、分かった。気を付けてな。それと、先程渡した情報、あの子達に役立ててやってくれ。」
シャウト「はい。」
ミラァ「シャウトーーーーっ!」
シャウト「では、行って参ります。」
ソリッド「ああ、『オルフェリア』の導きが共にあらんことを…。」
ミラァ「それで、その山はどこにあるの?」
シャウト「『アレスナル地方』だ。」
ユズキ「ですが…。」
シャウト「ああ、君達に聞いたとおり、橋は壊されていた。他にも各地の主要施設が次々と壊されている。一体誰が何のために、そんなことをしているのかは分からないが、邪霊の『超霊化』や、邪霊達が神と呼ぶ者。おそらく今までの出来事は全て関係しているだろう。そんな感じがする。」
天満「それでどうする?橋が無ければ渡れないんだろう?」
シャウト「それは大丈夫だ。行ってみれば分かる。」
皆「?」
(橋があった所に到着)
天満「か、かなり遠いぞ…。本当に大丈夫なのか?」
シャウト「まあ、見てれば分かる。」
琴花「見てれば分かるって………あっ!」
ノア「す、凄い!」
天満「これは?霊…神?」
シャウト「そのとおり!」
アイズ「そうか。大気に漂っている形を成してない霊神を集めて、密度を高めて具現化しているのか。」
シャウト「これでも一応『三霊神』と呼ばれてるからな。これくらいは出来る。」
ユズキ「で、でもまさか橋を造ってしまうなんて…!」
天満「シ、シンセーテンも出来るのか?」
シンセーテン「まあね。僕も一応『三霊神』だからね。」
シャウト「さあ、行くぞ。」
琴花「ほえぇ……いよいよもって、スケールが違うよねぇ…!」
ミラァ「ホ、ホントだよね…。シ、シャウトって、こんなに凄かったんだね…。」
(『泉帝山』に到着)
ミラァ「ほわぁ〜!たっか〜いっ!雲がかかってるよ!」
シャウト「最も高い山だからな。だが気を付けろよ。古来から、神聖な場所には守り神がいるというからな。それに、この感じ……邪霊もいるみたいだな。」
天満「よし!じゃあ行こう!」
(『泉帝山』の何処か)
?「ん?誰か入って来たな…。まあいい。………私は貴方に届きましたか?『ディーク』よ…。」
次回に続く