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魔王の花嫁  作者: 諒夏
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悠里の冒険

お茶の時間に悠里の世界の食べ物の話をはじめると睡蓮やパーピーには馴染みがないらしく、興味津々。

悠里は自分でも教えられる事があるので大喜びした。

「さぁ、お茶にしましょう」

悠里様…

睡蓮の言葉にパーピーが持ってきたジュースとお菓子を悠里の近くのテーブルに降ろす。

「ご飯…じゃないの?」

「ご飯の方がよろしければそうしますけど?」

お菓子は早すぎたかもしれない…

睡蓮が苦笑いを浮かべると悠里は笑う。

その笑顔はとても輝いていて…

「では、悠里様…ご飯にしましょうか?」

何がよろしいですか?

「……なに食べるの?」

幼心にここの食べ物は何かと言う興味があるらしい。

「悠里様はどういうモノを食べるのですか?」

睡蓮がそういうとぱんとかみるくという単語が出てきた。

だが、睡蓮達からすれば食事などあまり取らないし、どういうのを人達が好んで食べるのか分からなかったから。

「…んと、えっと…」

こんな感じの…

そういって一生懸命説明する悠里に睡蓮とパーピーは興味津々。

「ではそういう丸い形をした粉を練って焼く物なのね」

ふむふむ…

聞き入る二人に悠里はなんだか楽しそうだ。

「…そうね、とりあえず昼食までには間に合わせるわ」

朝はお菓子でがまんしてくれるかしら?

睡蓮の苦笑いに悠里は頷いた。

どうやら勉強するべき事が増えたらしい。

「お菓子を食べたあとはこの城の中を見て回りませんか?」

悠里様。

睡蓮の言葉にお茶を飲みながら頷く。

「ここは大きいですからね…」

興味があるものが見つかると言いのですけど…

「…おしろ?」

「はぃ、お城です。前にも説明しましたようにここは魔王である紅様の家なんです。

 で、私たち使女というお手伝いさんがいると思ってください」

ここまでは分かりますか?

睡蓮の言葉に悠里はコクッと小さく頷いた。

「ここは悠里様のお部屋以外にも色々とあります、この部屋ばかりでは退屈でしょうから、

 少し散歩がてら歩きに行きませんか?」

お城の散策ですね、いわゆる。

睡蓮の言葉に首をかしげながらもなんとなく散歩という言葉で頷いた。

悠里にはまだ分からない単語が多く、そのつど、睡蓮なり、パーピーなりに聞く。

二人は面倒がらずに答えてくれるので悠里はとても楽だった。



お茶を片付けるのはパーピーの役目らしく、パーピーが部屋の外へ行くと睡蓮が紙に何かを書いていた。

じっとそれを横から見ていた悠里。

「これ、なぁに?」

「ここが今居る場所です。つまり、地図ですね」

こんな感じですよ、このお城の中は…

そういってスラスラっと書き、睡蓮は説明をはじめた。

「こういう風なのがあると便利ですよね、今説明しましたとおり、ここが今居る場所、

現在地って言います。」

「げんざいち…」

「そうです。×のマークを付けときますね。ここが今居る場所です。」

そういって×のマークを右下の四角に書き込んだ。

睡蓮が書いたのはこの城の地図。

そして、悠里があることに気づく。

斜線が引いてある場所があることに…

「ねぇ、ここは?」

なぁに?

「ここは紅様のお部屋です。」

立ち入ることはある程度のモノにしか許されていない場所です。

「たとえ悠里様でも入ってはいけませんよ」

だからこうして駄目だって書いてるんです。

そういう睡蓮に悠里は頷いた。



「…すいれんどこいったの?」

「睡蓮様はお仕事ですよ」

パーピーが戻ると同時に睡蓮を別の使女が呼びに来た。

どうやら仕事関係らしい。

悠里にはよく分からないが、忙しいのだそうだ。

「おしごと?」

「はぃ。ですので私が案内いたしますよ」

「……どこいくの?」

パーピーと手を繋ぎ、悠里は歩いていた。

部屋から出たことのない悠里はキョロキョロと辺りを見回してパーピーはそれに終始苦笑いを浮かべていた。



「ここ、どこかな?」

さっき睡蓮が書いていた紙を持ち、片手に鉛筆を持ちながら悠里が尋ねた。

「…こちらをまっすぐ来たのでこちらです」

「…ここは?」

正面に見える部屋はなんだろう?

と首をかしげる悠里。

「…こちらは紅様の側室の方のお部屋になります」

でも空き部屋ですが…

「そくしつ?」

なんでいないの?誰も…

悠里がその部屋のドアをあければ誰も居ないし、何もない。

「悠里様以外を迎えるつもりが紅様にはないとの事ですから」

それで空き室になっております。

「…?よくわかんない」

そくしつってなに?

「側室とは、悠里様以外にここに住む女性の事をいいます」

「…すいれんとか?」

パーピーもなの?

「私は睡蓮様に仕えていますので違います。睡蓮様も違います。」

「…じゃぁどういうこと?」

「つまり、正室、この場合、悠里様のことですが、それ以外の妾という事になります」

「…めかけ?」

「あまり覚えない方が良いかと思われます」

パーピーは話を逸らしたいらしい。

「…よくわかんない」

「まぁ、お気になさらず…」

次に参りましょう。

手をひかれて次の場所へと歩き出した悠里達。



数分歩くと交差する場所に出てきた。

「ここはどこ?」

「こちらになります。ちょうど悠里様のお部屋と別の棟への別れ道になります」

紙を覗き込む悠里の上から指で順路をさし、今の場所を指差した。

「こっちはなぁに?」

「こちらは城で働くモノ達の仕事場があります」

右は仕事場、左は後宮、北は謁見の間、南は城下町への扉。

「どちらにいかれますか?」

まだ外は駄目だけど、城の中は自由に行っていいといわれているとパーピーは言った。

「…よくわかんない。」

「…では、後宮の書室に参りませんか?」

「しょしつ?」

悠里が首をかしげるとちょうどパーピーの後ろから男の声が聞こえた。

『書物が置いてある場所だ…』

「紅様!?」

パーピーはかしこまり、そのまま平伏した。

「…悠里、息災か…」

紅の言葉に悠里は首をかしげた。

「そくさい?」

「悠里様…お健やかに…、なんの不都合もなく…も難しいですか?」

「…わかんない」

悠里の言葉に紅はただ淡々と言葉を続けた。

『パーピー、姉上はしばらく戻らん。悠里の事はお前に任せる』

「…かしこまりました」

「…ねぇ、パーピー?」

平伏しているパーピーの羽を引っ張り、悠里が首をかしげる。

『何かわからないのか?悠里』

紅がため息を一つ吐き、悠里へと向き直る。

「なんでパーピーがこんなかっこうするの?」

「悠里様…」

『…パーピーは睡蓮に属しているというのは判るな?』

「…?」

「悠里様、つまり私は紅様よりも位が下なのです。ですから目上の位の方にお目通りする時は平伏するというのが決まりです」

パーピーの説明に悠里は首をかしげ、不満そうな顔をした。


通常、めったに位が高い者が低いモノと会話をすることはないが、そうなった時は平伏するのがこの魔界の規定であり、そうするのが常である。

「…?よくわかんないけど、なんかやだ」

こういうのなんかやだ。

『……そうか。』

ただ一言そう呟く紅。

『パーピー、平伏はしなくてよい』

「しかし…」

『悠里の居る時だけでかまわん』

悠里は気に入らないらしいからな。

「…はぁ…」

パーピーは渋々と立ち上がる。

『…これでよいか』

「…うん」

だが、悠里の表情は固い。

『…書室に行くならば明日にしろ』

今は入れないだろうからな…

紅の言葉に悠里は「どうして?」と呟いた。

『今、書室を整理させている。』

悠里の成長に合わせて書物を置くスペースを作る為だ。

紅はそう言うと、パーピーの横を通り、謁見の間へと足を運んだ。



「あのひと…なんでいたの?」

怖かったのだろう、ずっとパーピーの羽を掴んでいた。

「きっと悠里様にお逢いにいらしたのではないでしょうか?」

いらっしゃらなかったのでお帰りになる最中だったのかと。

パーピーがそう呟くと悠里は不思議そうに首をかしげた。

なぜ自分の下に来るのかと。

「悠里様は正室…つまりお妃さまですからね。お妃さまの横には王様が必要ですよね?

 王様とは紅様の事をいいますので、こちらにも来られる事があります」

「…むずかしいことわかんない」

「少しずつ覚えていけばいいのですよ」

今は焦らずに…

「さっきあの人がいってたことは?」

そくさいとか…

「息災とは無事ですか?という意味です」

「無事?」

「ここは色々と私のようなモノ、いわゆる化け物がいますから」

「パーピーは化け物じゃないもん」

「悠里様…」

「…睡蓮いないって言ってたね…」

「左様ですね。」

「それもわかんない」

「左様ですとはそうですねという事です」

パーピーはゆっくりとそう告げた。

「…ことばがわかんないとこまるね」

「ですね、ではお部屋に戻りましょうか…」

お勉強しましょうね。

「…うん。」

やだけどがんばる。

「…私たちも少しずつ言葉を簡単にしていきますから」

がんばりましょうね、一緒に。


紅と悠里がようやく会話しましたね。

紅も不器用だからあまり長くはしゃべらないですが、

ちゃんと悠里の事を思っているんですよ。

これから二人がどうなるか…お楽しみに

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