第8話 『キュリオ』
説明回、ついにあらすじのところまでたどり着きました。
「お前は……」
扉のところに立っていた少女は紛れもなく、今日俺にリサイクルショップの場所を尋ねてきた少女だった。
「はじめまして、私は天野美来です。よろしくね、九十九君。」
驚きのあまりに言葉が出ない、菜月さんが言うには、彼女が通り魔に襲われた俺を助けてくれたらしいが……それこそ、いったいどうやったんだ?
俺の疑問は菜月さんには筒抜けだったようで、彼女はこんな事を言ってきた
「話せば長くなるし、この話を聞きたいのなら君には少し、私達に協力してもらうことになるのだが……それでもいいというのなら話そう。」
正直、あまり深く考えていたわけではなかった。ただ、俺の命を救ってくれた人がいるなら、その行動は責任を持って知って、お礼をしなければいけないな。という思いで俺は、
「分かりました、教えてください。」
そう、答えていた。
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「君は、物には魂が宿っている……という話を聞いた事があるかい?
」
いきなり何を言い出すんだ、この人は? と思いながらも、話してくれと頼んだのはこちらなので口を挟むのも悪いと思い、質問にだけ答える。
「信じてはいませんが……昔、職人をやっていた祖父にそのような話を聞いた事があります」
「そうか、君のおじいさんはさぞかしすごい人だったのだろう。結論から言うが、物には確かに魂がやどっている!」
自信満々に話す彼女、何なんだこれは、新手の宗教の勧誘なのか? 俺の不安をよそに彼女は話を続ける。
「この世の物には……いや、それだと誤解を生むな、正しく言うなら、目的を持って作られた道具には大なり小なり魂とい物が存在するのだ。普段は眠っているその魂が偶然にも、願い年月や所持者の強い意思を持って目覚める事がある。そうなれば、その道具は一層強い効果を発揮するのだ、それこそ人知を超えた力を。それらの、目覚めた魂が宿る道具を、私達は『キュリオ』と呼んでいる。」
何の話をしているのか分からなくなってきたが、面白そうな話ではあったので素直に聞いていた。
「私は商売の傍ら、その『キュリオ』を集めているのだが……今回の通り魔事件、犯人が使っている凶器は、恐らく『キュリオ』だ。ここまでは分かったかな?」
黙って頷く。昔、祖父が言っていた話とよく似ていたから、すんなりと頭に入ってきた。流石にキュなんとかという横文字は初耳だったが……それに、この部屋におかれているたくさんの古びた物品も恐らくは『キュリオ』という物なのだろう。
「君が聞きたがっていたのはこの先だな。まずは、美来についてだが……彼女は私の助手、とでも言うべきかな。名目上はこのリサイクルショップのアルバイトとして働いているが、お互いの目的のために協力して『キュリオ』を集めている。」
そういう事か、ようやく彼女の話がどこに落ち着こうとしているのかを理解する。
「もちろん彼女も私も、『キュリオ』を探しているわけだ、不思議な道具を相手にするなら、こちらも同じ土俵に立つしかない。」
理解を示すために、俺はただ頷きつづける。
「例の通り魔が使う凶器を追いかけていると、君が襲われているところに直面した。彼女は自分の持つ『キュリオ』を用いて通り魔を撃退した。と言うわけだ。長くなって済まなかったな。」
「いえ、ありがとうございました。」
深くおじぎをして礼を言う。そして、もう1人の少女の方に向き直り、
「ありがとう、君のおかげで助かった。」
月並みな言葉だとは思ったが、通り魔と対峙し、自分を守ってくれた恩人への礼のしかたなど俺は知るよしもなかったのである。しかし、その少女は
「ううん、お礼なんていいよ。あなたが無事なら……それで。」
と、言って笑顔をみせた。
ここからが本番だー!!『キュリオ』がゲシュタルト崩壊してる気がするけど……まぁ、数少ない設定上の名詞なので覚えてもらうといったこともかねております。